手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

慰安的マッサージは悪いのか? その1《目次が新しくなりました》

2016-02-20 17:00:00 | 治療についてのひとりごと
手技療法に携わっていると、慰安的マッサージについて否定的な話を見聞きすることがあります。

「慰安的なマッサージは依存的になる
「その時はよくても、すぐにもどる」
「やっても意味がない
などなど。

場合によっては、治療よりも技術的に低く見た表現が用いられることもあります。

「あんなものは誰にでもできる」
「プロとしてやることではない」
という感じでしょうか。



私もかつてそうでした。

「慰安」どころか「マッサージ」という言葉も避けるところがありました。

「私のやっていることは、マッサージではなくて治療です」という感じで。

よりグレードの高いことをやっているとアピールしたかったのですね。

≪こちらの記事もご参照ください。「時間が短いから、ただもんでいるだけ」とボヤく前に その1



自分のことはマッサージ師ではなく「治療家です」とも言っていました。

今振り返れば、恥ずかしいことをしていたと思います。

あん摩マッサージ指圧師の資格を持って仕事をしているのに、笑ってしまいますね。

好意的に見るなら、成長しようとして必死だった証なのかもしれませんが、反抗期の中学生みたいなもの。



「マッサージ師」や「治療家」という名称の使い分けは、営業的に特徴を持たせるための手段として必要にはなるでしょう。

でも、ここで問題にしているのは心の内面です。

自信のなさの裏返しが、変に肩肘張らせていたように思います。

そんな状態ですから自分のやりたいこと、「こうあるべき!」という気持ちが先に出て、患者さんにきちんと寄り添うことができていなかったかもしれません。



慰安的なマッサージは、言葉から読み取ればそんな簡単なものではないことがわかります。

慰安は「慰める」「安らぐ」と書きます。

どうすれば慰められ、安らぐのかは人によって異なるもの。



たとえば、緊張して食いしばり、頭の筋肉が硬くなっているのか。

悲しみのあまり、胸が締め付けられているのか。

思い煩って、みぞおちがつかえているのか。

それらの状態に対して、技術的にもひとりひとり個別のアプローチが必要になります。



大きく振り分けるなら、眠りを誘うようにリラックスさせるのか。

あるいは、しっかりした刺激を加えて発散させたほうがよいのか、という分け方もできるでしょう。

東洋医学でいうなら虚実補瀉ですね。

このようにしてみると、慰安という意味からやるべきことを考えたとき、私たちが治療として行っているものに近くなるのではないでしょうか。



「いやいや、治療は治療、慰安は慰安でしょ」という考えの方もいらっしゃるかもしれません。

でも、どれほど私たちが治療という言葉にこだわろうと、慰安的な方法を必要としている方々はいます。



学級崩壊のクラスに悩まされている学校の先生。

大きなプロジェクトに必要以上のプレッシャーを感じているサラリーマン。

育児疲れで消耗したお母さん。

相続のトラブルで体調を崩した方。

ガンで末期の方など。



それらの問題を背景として症状が出ている方たちにも、手技療法を使ったら原因からきれいに解決した。

なんてことは、あまりないのではないでしょうか。



筋骨格系や頭蓋、内臓などへ徒手的にアプローチして華々しい結果を出したケースは聞いたことはあります。

でも少なくとも私には、そうそう起こせるものではありません。



確かに、手技療法を用いたこときっかけとなって、気持ちが切り替わり、具体的な対処法が見つかって状況が好転したこともありました。

また、身体的な異常によって症状が引き起こされている割合が強い場合は、持続的な改善をみることもあるでしょう。

けれども、すべての人に当てはまるわけではありません。

ひとつのエピソードを広く一般化できるかのような、華やかな表現は慎重であるべきだと思います。



対人関係など心理社会的な問題を抱えている人たちは、一時的な改善をみたとしても状況によってすぐに悪化することもあります。

だから良い結果を出しても油断せず、常に観察し続けなければなりません。

そのためには、慰め安らぎを与える行為を継続することで悪化を防ぐという発想が求められる場合もある。

だから慰安的なアプローチも必要だと思います。



では、慰安的マッサージを否定的にみている方たちは何を問題としているのでしょうか。

よくよく話を聞くと「慰安」と言いながらも、「慰安」とは違うところにダメ出しされているように感じます。


次回に続きます。




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寺子屋ブログを開設して8年が過ぎました。
この機会に目次を追加更新し、記事を整理しました。

・手技療法に共通する基本とは何か?
・技術という感覚的なものを、いかに身近な言葉で表現するか?
・治療の考え方を、日常の常識的判断になぞらえてどう示すか?
そのようなことを問いながら続けてきました。

「はじめに」でも述べているのですが、セラピストとして目指すスタイルは人それぞれぞれ。
ただ、今いる場所から歩みを進めようとした時、このブログが足元を照らす「灯」になれることを願っています。

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感覚を磨くということは

2016-02-06 17:00:00 | 治療についてのひとりごと
スポーツや芸術、調理、多くの仕事ではその内容に応じた感覚を磨いていくことが求められます。

手技療法もそれは同じ。



感覚を磨くことによってわずかな変化に気づき、よりきめ細やかで質の高い働きをすることができます。

そしてそれだけに止まりません。



私の経験ですが、わずかな変化に気づくようになると、日常で退屈するということが少なくなります。

身の回りで常に起こっている変化に気づけば、それを面白く感じ、興味を持って観察できるようになるからです。



やがて、毎日の同じような出来事が決して同じではないとわかるようになると、当たり前という感覚がなくなっていきます。

頭で理解するのではなく感覚的にです。



当たり前という感覚はマンネリ化を生み出し、ただボンヤリ過ごしたり、つまらないという感覚を持ちやすくなります。

それがなくなる。



すると何だか落ち着いた気分になり、大げさかもしれませんが満ち足りた気分になります。

これは幸せな感覚です。



ですから『感覚を磨くということは、幸せを感じる心を磨くということ』にも通じる。



昔からいう「足るを知る」や「小欲知足」というのは、ムリに節制をして自分を抑え込むことで禁欲的になるのではなく、感覚が磨かれることから生まれてくる心の豊かさではないか。

そのように思います。



ポイントは、磨いた感覚を自分の専門の範囲に止めないで、日常の世界まで広げるようにするということ。



専門の範囲に止めておいても感覚は磨かれ、どんどん繊細にはなっていくでしょう。

けれども一歩誤れば変にこだわりが強くなり、気持ちがとらわれやすくなるかもしれません。

ひと頃の私がそうでした。



あまりにとらわれが強くなると、穏やかな気持ちで過ごしにくくなります。

それは決して幸せな感覚とはいえませんでした。



そのくせ自分は何かを極めるべく道を進んでいるつもりになっていて、変に気位が高くなります。

外見上はそう見えなかったとしても、鼻持ちならない自分がそこにいたように思います。



こうなると自分の世界からしか物事を見なくなり、始末に負えません。

まさに「井の中の蛙 大海を知らず」でした。



道を進むほど、心が寛容になっていく人と偏屈になっていく人の違いは、もともとの性格もさることながら、磨いた感覚をどの範囲まで広げているかという違いでもあるのかもしれません。



私たち自身が穏やかで幸せな気持ちで過ごせるようになるには、感覚を磨くこと。

そして磨いた感覚を生活に広げていくこと。

この2つの実践が大切なのではないか。

そのように思っています。





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☆ブログの目次(PDF)を作りました 2014.01.03☆)
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そこで、少しでもタイトルを調べやすくできるように、このお休みを使って目次を作ってみました。
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