手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

「ひとりでできる!!間接法の練習2」その4≪ポジショナルリリース≫

2014-06-28 17:05:11 | 学生さん・研修中の方のために
今回は、ポジショナルリリーステクニック(カウンターストレイン)のような?間接法の練習です。

これは関節運動を伴うもので、ストレッチとは反対に筋を縮めてリラックスさせるようなポジションを取る方法です。



頚部を用いて練習することにしましょう。

以前の「ひとりでできる!!間接法の練習(拮抗筋のストレッチ)」では手首の動きを利用しましたが、もしかしたら今回のほうがわかりやすいかもしれません。



はじめに頭を左右に倒して、頚部の筋の伸び具合、可動範囲と動きの滑らかさを調べます。


緊張の強い側があったら反対の手で、もっとも硬さが強い部分を、触診によって特定します。


その硬い部分が柔らかくなる方向を指標にして、練習することにしましょう。



ちなみに、その硬い部分をややしっかり押さえて(ビックリするくらいの)痛みがあればしめたもの。

強い圧痛点(テンダーポイントもしくはジャンピングポイントと呼ばれています)があれば、なおはっきり効果がわかりやすいです。



ポジショナルリリーステクニック(カウンターストレイン)は圧痛点がなくなる姿勢(位置)を探して、それを一定時間(基本は90秒)保持させ、組織をリリースさせる間接法です。

今回は圧痛点がなくても硬さを頼りにするから、ポジショナルリリースのような?というわけです。



では、硬い部分を触れたまま、頭をゆっくりと反対に倒しましょう。



触れている強さは前回お話しした、「皮膚をつけて骨を浮かす」程度であるのが理想です。

慣れないと、ついつい強めに触れてしまうのですが、実は軽めのほうが柔らかくなっているかどうかわかりやすいです。

でもはじめは、自分でわかる程度の軽さで触れておけばよいでしょう。



倒していくと、硬い部分はどんどん柔らかくなっていきます。

さらに倒すと、反対に硬くなっていきます。

そこまで来たら、行き過ぎ。



ゆっくりと戻して、もっとも軟らかくなる位置で止めます。

続いて、屈曲・伸展方向にゆっくり動かして、もっとも軟らかくなる位置で止めます。



最後にそのまま、左右の回旋をゆっくり加え、同様の位置で止めます。



こうして屈曲伸展・左右側屈・左右回旋の6方向の中で、もっとも軟らかくなる、リラックスする位置がわかりました。
   
このように、慣れないうちは6方向に分けてそれぞれの方向で緩む位置を探すのが、より確実に探すコツでしたね。



まずは教科書どおり、そのまま90秒待ちましょう。

時間が来れば、できるだけゆっくり、動かし始めは特にゆっくり動かして元の位置にもどします。

もどすスピードが速いと、このテクニックは上手くいかないことがあるので注意しましょう。


   
元に戻したなら、反対方向に倒して可動範囲、動きの滑らかさを調べて再評価します。

圧痛点があったなら圧痛の程度の有無を調べましょう。

改善していたなら上手くいった証拠です。



次回、さらにステップアップします。

次回は7月12日(土)更新です。

≪番外編≫現場で求められる力

2014-06-21 19:53:56 | 治療についてのひとりごと
※ FBの投稿より転載

若手セラピストから質問をいただきました。

「あるセミナーで講師の先生が、股関節を曲げて付け根が痛むとき、硬くなった殿筋をゆるめてもダメで、弱くなった腸腰筋を鍛えないといけないと言っていたのですがどう思いますか?」

聞くとご本人にも、股関節を曲げたときの痛みがあるそうです。



しばらく考えて私は答えました。
「試してみれば簡単に確認できることだから、自分で調べてみたらどうかな」



どうしようもないことならともかく、確認できることなら自分の目と手で調べるのがいちばんです。

もしかしたら何かコメントを受けることで安心したいのかもしれませんが、誰かに背中を押してもらったり、お墨付きがないと現場で使えないでは話になりません。



ただ、セミナーでは話の勢いでしょうか、自説のA(この場合なら腸腰筋を鍛える)の有効性を主張するために、B(殿筋をゆるめる)に否定的なことを述べるという、比較広告のような話の進め方をする講師の方も中にはおられます。

その話をしているのが有名な先生や、大御所のようなある種の権威がある方なら、強い説得力を持つかもしれません。

でも体性機能障害の場合はケースバイケースのことがほとんどで、絶対的にそうだといえるのはまれです。

ですから、そのような話を聞いたときコロッといかないために、ひとつだけアドバイスをしました。



「Aは効くけどBは効かない」という話を聞いたとき、

「Bは効くけどAは効かない」

「AもBも効く」

「AもBも効かない」

少なくともこの3つのパターンが起こる可能性を検討すること。

これを意識するだけでも相手の話を冷静に聞けますし、4つのパターンそれぞれを自分で検討できたら本当の力として身につきます。



現場では、特に慢性の機能障害の臨床では、すぐに答えが出ず、ハッキリとわからないことなんてよくあります。

ところが経験が浅いうちは、急いで確かな答えを求め、焦ってしまいがちです。

私もそうでした。

何かやらないと自分自身が不安になってしまうのですが、じっと我慢して見守る、待つということも時に必要です。



臨床で知識や技術が求められるのはもちろんです。

それに加えて不安定で不確かな、先の見通しが立ちにくい状況に居続けることができる、ある種のずうずうしさ。

時機をみて、危険性がないなら手探りで一歩ずつ進めていく粘り強さ。

このような、セラピストの内面の強さというのも求められるでしょう。



それを鍛えるのは現場で経験を重ねるのがいちばんですが、今回のような状況と出あった時、クリアするためにどう対処するのか。

避けずにその課題と向き合うのもよいトレーニングになると思います。


「ひとりでできる!!間接法の練習2」その3≪筋筋膜リリース≫

2014-06-14 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
膝蓋骨周囲組織の間接法によるアプローチ。




前回は「皮膚をつけて骨を浮かせる」という非常にソフトなタッチで触れるというお話でした。

続いてアプローチですが、本シリーズの「その1」では、セラピストが意識して動かす方法をご紹介しました。

今回はこちらから働きかけるのではなく、そのまま手が引かれていくのを待つようにしてみましょう。



手が引かれていくなんて聞いたら、初めての方は???となりますよね。

もしかしたら怪しい響きに聞こえるかもしれません。

でも不思議なことではないですよ。



試しに胸に片手を当てて目を閉じ、お腹の方で何か所かシャツをつまみ、軽く下に引っ張ってみてください。


すると胸の手には、お腹のほうへ引っぱられる感触が伝わって来るはずです。

これが引かれるという感覚です。

ふつうの感覚ですよね。

それが細かくなるだけです。



緊張や短縮があると、周囲の組織をわずかながらも引っ張ろうとするので、感覚が敏感になってくると、その方向を特定することができるのですね。

わからなければ、ムリをする必要はありません。

「その1」で紹介した方法や、前回のシリーズを繰り返し練習することで手の感覚が養われるので、いずれリベンジできる日が来ます。



手に集中しているうちに引かれる方向がわかったなら、その方向についていきます。

ほんのわずかな動きのはずですが、直線のこともあれば、カーブを描くように引かれていくこともあります。



手が引かれる感じがしなくなるところまで来たら、そのまま待ちます。

するといったんリリースが起こり、今度は別の方向に引かれていく感覚になります。

そうしたら同じようについていき、リリースするまで待つ。



これを、引かれる方向がなくなるまで繰り返します。

制限はいくつかの方向に存在していることが多いので、ひとつずつのぞいていくわけです。

最後に再評価して確認してみてください。



いかがでしたか?

膝蓋骨の動きが、より滑らかに動きやすくなっているでしょうか?

この方法は前回より、より微妙できめ細かいアプローチになっています。



ちなみに、この引かれるという感覚が「傾聴」という評価法につながっていきます。

傾聴は手で身体に触れることで、どこに制限があるかを感じ取る評価法です。

引かれている方向だけではなく、手を当てているところからの距離も感じとり、そこを特定するというものです。



はた目で知らない人が見たら、何か魔法のようなことをしているような印象を与えるのですがそうではありません。

手ごたえとして実感できるものです。

オステオパシーでは、頭蓋テクニックや内臓マニュピレーションなどで用いられています。



それでも、この微妙な感覚をつかむには相当のトレーニングが必要ですし、ある程度のセンスも関係すると思います。

私などは鈍いほうでしょう。



だから興味を持てなければ、無理して身につける必要はありません。

私も筋力テスト(いわゆる徒手筋力テスト(MMT)ではなく、Oリングテストのような瞬間的な力の入り方を調べるテスト)は、その有用性は認めつつも、自分にとってしっくり来るものではないので取り入れていません。

≪よろしければ「自然にみることの難しさ」もご参照ください≫



前回も少し触れましたが、相性や好き嫌いもあるので、自分が受け入れられるものから練習すればよいのです。

客観的に評価することが大切なのに、自分の好き嫌いで決めるなんてありえないことかもしれませんが、質的な評価は主観が入らざるを得ません。

ですから、セラピスト自身が馴染みやすい、自分が納得できて自信を持てる方法で評価せざるを得ないという側面があると思っています。



次回はポジショナルリリーステクニック(カウンターストレイン)のような?練習です。

6月28日(土)更新です。

お楽しみに!!