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手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

「おつかれさま」のケア

2011-12-31 20:00:00 | 治療についてのひとりごと
今日は大みそかですね。


どのようなことを書こうか考えていたのですが、今年のさいごを飾るにあたって、現在の私の治療スタンスについて少しお話ししようと思います。


最近の私は、手技療法によって「疲れ」をとることに、専念していることが多いかもしれません。


「疲れをとる」「疲労回復」などという表現を使うと、「んっ」と違和感を持って誤解をする方もいらっしゃるかもしれません。





この「疲れ」が意味するところついては、年明けにお話しするとして、私の治療院にいらっしゃる方は、とにかく疲れているという方が多いです。


典型的なものは、疲れがたまりすぎて機能障害を回復させるチャンスがなかなかつくれず、悪化させているというパターンです。


それが、頚肩部に起これば胸郭出口症候群や肩関節周囲炎となりますし、腰部に起これば腰痛と名前がつくわけです。





それぞれの施設で利用される患者さんに特徴はあると思いますが、みなさんの職場にも同じようなタイプの方は少なくないのではありませんか。





私は触診するときに「軟部組織の緊張の分布をみる」ということを自分でも行っていますし、みなさんにもオススメしています。


この「緊張の分布をみる」ということは「疲れの分布をみる」ということでもあります。


患者さんの身体に触れ、緊張の分布をみていると、その方が日ごろ、どのような身体の使い方をしているかが想像できます。


緊張の分布とは、その患者さんがどのように仕事や家庭など周囲の環境に接し、適応しようとしているのかという表れ、身体に残った痕跡です。


言い換えると、その方の生きざまが表れているといっていいと思います。


その生きざまに触れて感じとったとき、「おつかれさまです」という気持ちがこみ上げてきてしまいます。





人員が減らされて仕事が増えてしまい、時間内で処理しきれず残業続きでがんばっている人や、自宅に持ち帰って仕事をしている人。


さまざまな人間関係の中で挟みうちにあって身動きが取れなくなり、憔悴しきっている人。


私がケアマネの仕事をしていた頃も気になったのは、くたびれきっている利用者さんの家族や、仕事で心身ともに滅入りながらも頑張っている看護職や介護職の人でした。


みんなそれぞれ悩みを抱え、たいへんな思いもしながら暮らしています。


(斉藤和義さんの曲「おつかれさまの国」のPVをみるとなぜかジーンとしてしまいます。





そうした姿を手を介して感じとったとき、「早くこの疲れを除いてあげたい」という思いになります。


もちろん、感情移入には注意しないといけませんから冷静さも失わないようにしていますが、私の治療はこのような思いが土台になっています。


(私のスタンスについては、「手技療法習得へのステップ3‐ トリートメント その6」 弊院サイト「なぜ『手技』治療院なのか」もよろしければご参照ください。)





身体を診ていると、疲れた部位に直接症状が出ているところもありますし、そこが症状を出していなくても周囲に負担をかけ、発症と持続に関係しているようなところもあります。


また、今は症状を出していなくても、いずれ出すであろうと予想できるところもあちらこちらにあります。


そのような疲れをみつけると、優先順位を決めながら時間の許す範囲で除くようにしています。





余談ですが、私の治療院では、患者さんひとり当たり50分ほど時間をとって診ています。


大ざっぱな内訳として、症状に直接関係している部位に対して5分~10分ほど。


症状に負担をかけている周囲の状況に対して10分~20分ほど。


残りの時間は問診や説明も含め、潜在的な異常がないか調べて取り除いていったり、ストレスなどで心身ともに滅入っているようなら、リラックスできるように誘導することもあります。


主訴が複数の部位にまたがるなら調整しながら進め、さいごにセルフケアの方法をアドバイスします。


姿勢構造的・運動機能的な説明モデルも、目的を達するために都合のよい解釈を、その場その場で勝手に組み立てて使っています。





私がとっている方法は、評価と治療、あるいは治療と予防の境界がはっきりしないなど、問題となるところがあるかもしれません。


意地悪にみると行き当たりばったり的なアプローチともいえますし、決してそうではないのですが、漫然と行っているようにみえるかもしれません。


それに、評価によって症状を引き起こしている部位を特定し、特異的なアプローチを行い、再評価によって治療効果を判定してデータを集積し、ひいてはエビデンスを構築する、ということには不向きです。


もちろん、臨床から研究へとつなげていくことが大切だということもよく理解しているつもりです。





一方で、さまざまな要因が折り重なって複数の部位に愁訴を抱え、苦しい思いをしている患者さんもいらっしゃいます。


その原因が体性機能障害であり、適応と禁忌の鑑別さえできていれば、疲れのボリュームを減らしてとにかく治るチャンスをつくりやすくする、というスタイルも、ひとつの方法としてあっていいのではないかと考えています。


これを「おつかれさま」のケアと勝手に呼んでいて、慢性痛にアプローチするときの考え方のひとつにしています。


その中で、一定の傾向が感じられたら、その特徴を整理してパターン化し、多くの仲間と共有できるように研究していくという流れができればベストだと思います。





また、セラピストの経験が少ないうちは、患者さんの複雑な状態に圧倒され、どのように治療を進めていってよいかわからなくなることもあるかもしれません。


そのようなときも、このような「おつかれさま」のケアというスタイルは使えるのではないかと思います。


疲れのボリュームを減らした後に残っている部位は、より強い機能障害が存在しているところのはずです。


残ったそれらに対して、理論立った姿勢構造的・運動機能的な説明モデルを適用してアプローチしていくという流れなら、経験の浅い方にも比較的まとめやすいのかもしれません。


「ウム、一理あるかも」と感じられたら、取り入れていただければと思います。





さて、今年もいよいよ最後になりました。


今年は大きな災害が重なり、その影響を受けてたいへんな一年だったという方も大勢いらっしゃると思います。


またそれらの直接的な影響はなくても、仕事やプライベートで何かと大変だったという方も多いでしょう。


その意味では、私たちも「おつかれさま」な人のひとりです。


でもこうして、このブログを読んでいただけているということは、みなさんがんばってこの一年を乗り切って来られたいうことです。


今年の最後を締めくくるにあたって、お互いの、そして自分自身の労をねぎらってあげましょう。


それでは「みなさん、今年も一年、本当におつかれさまでした。
来年はよい年になるよう、がんばりましょう。」






【おまけの話】
本文中に紹介した斉藤和義さんは、私の好きなアーティストのひとりです。
最近では、ドラマ「家政婦のミタ」のエンディングで斉藤さんの曲が使われていました。

斉藤さんがデビューした年に、私が故郷の大阪から東京へ上京したということが関係あるのかないのか、デビューした時から好きでした。
当時のお気に入りだった曲は、ファーストアルバム『青い空の下』に収録されていた「tokyo blues」という曲です

斉藤和義「tokyo blues」

あの頃は、歌詞でうたわれている「井の頭通り」と「環状八号線」が交差した所の近所にある、杉並区内の新聞販売店に住み込んでいました。
朝夕刊の配達の時には自転車に乗りながら、この曲をよく口ずさんだものでした。
けだるくて退屈な毎日をうたっているところが、のんびりダラダラと新聞を配っている時の自分の姿とピッタリ合っていました。

あれからもうすぐ19年になろうとしています。
みんなと同じように希望と不安が入り交った学生生活を送っていましたが、歌詞にあるような「割れんばかりの夢つめ込んだ 風船はしぼみっぱなし」ではないよと当時の私にそっと伝えたい、そんな気持ちです。



「時間が短いから、ただもんでいるだけ」とボヤく前に その2

2011-12-24 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
≪前回からの続き≫


患者さん一人あたりかけることができる時間は職場によって異なりますから、できることはそれぞれで違っていて当然です。


それでも30%しかできない環境で、35%のことをするにはどうすればよいか。


70%のことができる環境で、72%のことをするにはどうしたらよいかを考える、それがプロです。


前回お話しした「治療の時間が短いから、ただ押したりもんだりして終わりやわ」というかつての私のボヤき。


このようなセリフが出てくるのは、限られた時間内でもできるだけのことをするという、プロとしての心構えがなっていない証拠です。





できるだけのことをするつもりでトレーニングを重ねて技術を磨いていくと、同じ時間でも取り入れる情報量が増え、何をすべきかが早く判断できるようになってきます。


例えば、下の下肢を挙上した写真は、ラセーグ徴候やハムストリングスの緊張などを調べる肢位です。



ここでハムストリングスしかみるつもりがないと、みようとした情報しか入ってきません。





視診による情報の収集は、患者さんと会ったときから、触診による収集は、足をつかんだ瞬間から始まっています。



まず上の写真では、アキレス腱、距腿関節と距踵関節の状態を大まかにつかむことができます。


下肢を持ち上げると、下腿からハムストリングスの緊張がわかります。


さらに股関節屈曲にともなう股関節の後方への回旋の動きと殿筋の緊張と、続いて骨盤の後傾の動きから、腰部の筋群の緊張もおおよそ見当をつけることができます。

「下肢を屈曲してハムストの緊張をみよう」とするだけに比べて、ずいぶん違う情報量ですね。





同様に下の写真は、伏臥位で下肢を伸展させる動き、主に股関節の伸展を調べるものです。



これもそれだけではなく、大腿四頭筋など下肢にコンタクトした時の緊張の度合い。


伸展に伴って股関節屈筋がどのように伸張していくか、同時に股関節の前方への回旋がどのように起こっていくかをモニターできます。


さらには、コンタクトしてする手の位置を変えることで、腸骨の前方回旋に伴う仙腸関節の動きから、腰部筋群の弛緩の程度、腰椎が伸展していく様子も観察できます。

このように、意識をどのように持つかによって、診ることのできる範囲がまるで変わってきます。





もちろん足首をつかんだ時に距骨と踵骨がどうなっているか、あるいは下肢の伸展に伴う仙腸関節の動きがわかるなどというのは、それぞれの関節がどのような動きをするのかということを、感覚的に理解しておかなければなりません。


そのためには、個別の関節の動きをしっかり練習して、身体で覚えておく必要があります。


ひとつずつ練習して積み重ねていくのみです。


その結果として、他人がみると何気なく持ち上げているように見えても、短時間で多くの情報を入手できているという実力がついてくるわけです。





私も途中で心を改め、これまで「ひとりでできる!!触診練習法」で紹介してきたようなことを、自分なり工夫してコツコツやってきただけです。


できることをコツコツと積み重ねる、それだけです。


今の私があるのは、ご指導いただいた方々の導きと、積み重ねしかありません。





現在の私もまだまだです。


これからも自分のペースで積み重ねを続けていきます。


歌舞伎だったか能だったか、踊りの名手だった方が 「まだ足りぬ 踊り踊って あの世まで」 という歌をのこされています。


このような心掛けを持ち続けたいものです。





そういえば、バスケットボールをやっていた友人から聞いた話を思い出しました。


アメリカのプロバスケットボール、NBAの選手たちは試合時間がのこり3秒(1秒だったかな?)でもタイムアウトをとって、得点するためには何をどうすべきか作戦を練るそうです。


これぞプロですね。


そしてNBAに入るような選手は、バスケットゴールのボードにあるラインが消えるほど、シュート練習をするそうです。


このような影の努力を私たちも見習いたいところです。





今の私からみれば、かつての私がこぼしていたような「治療の時間が短いから、ただ押したりもんだりして終わりやわ」というセリフが、いかにタルんだものかということがよくわかります。


今回は、以前の私のはずかしい話をあえてさせていただきました。


みなさんには、くれぐれもこのようなことにならないようにしていただきたいと願っています。



「時間が短いから、ただもんでいるだけ」とボヤく前に その1

2011-12-17 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
今回は、かつての私に説教をしたいと思います。


整形外科クリニックにお世話になり、リハビリスタッフとして修行していたころの話です。


整形外科や整骨院では、いろいろな都合から直接触れて治療できる時間が、患者さん一人あたり10分程度、長いところでは15分、短いと5分というところも少なくないと思います。


当時の私は、時間の短さのために自分が思っているようなことが出来ないと思いこみ、「治療の時間が短いから、ただ押したりもんだりして終わりやわ」とボヤいていました。





こんなセリフを今、目の前で聞いたとしたら、


「お前の言うてることは、自分の未熟さ棚に上げて言い訳してるだけやないかっ


と喝を入れてやるところです。





ボヤきをながらもきちんと時間どおりやっていたかといえばそうではなく、頻繁に時間をオーバーして職場に迷惑をかけ、注意を受けることもしばしばでした。


確かに、次から次へと患者さんがいらして、時間に追われながら仕事をするとなると、ストレスになってボヤきたくもなるかもしれません。


それでもこれはただの甘えでプロ失格です。





まず、「ただ押してもんでいるだけ」ということから。


下の写真は、伏臥位で背部から圧迫するというポピュラーなアプローチですが、何をしていると思いますか?



脊柱起立筋への圧迫法という答えが一般的でしょうか。


確かにその通りなのですが、それだけではありません。





皮下組織(浅筋膜)のすべりをつけているともいえます。


または、胸背筋膜をリリースしている。


起立筋という大まかなくくりではなく、最長筋筋腹の緊張を低下させている。


最長筋と多裂筋間に指を進入させて筋膜を離開しリリースしている。


多裂筋の短縮した筋線維を特定してアプローチしていることもあります。





さらには関節機能障害を起こした椎骨の肋骨突起に後方からコンタクトし、押圧を加えることで回旋のモビライゼーションをかけているともいえます。


力が不十分なら、下肢をテコに使って補うことができます。


また、肋骨突起の外方からコンタクトして内方に押圧を加えると、側屈の関節モビライゼーションとなります。


この部位が胸椎なら、肋骨にコンタクトして押圧を加えれば、肋椎関節のモビライゼーションにもなります。





少なくてもこれだけのことは挙げられますし、もっと他の可能性もあるのに、ただ押えているだけ、もんでいるだけとしか考えられないとはどういうことでしょう。


それは触診によって異常な部位を評価して特定し、正確な刺激を加えることができる技術のないことを棚に上げ、環境のせいにしているわけです。


知識のなさと、技術の稚拙さと、意識の低さの現れです。


にもかかわらず、恥ずかしげもなく話しているというのは、まさに赤面ものの話です。





そのくせ、ちょっとカイロプラクティックなどをかじり始めていた私は、わかっているのかどうかも定かではないのに、 「この椎骨がRPS(※)しているから、TP(横突起)にコンタクトして~」 という専門用語はやたらと使いたがったのです。


(※ ディバーシファイドリスティングという椎骨の状態の表記法。この場合、右の横突起が後方にきて上方に変位している、つまり椎骨が右回旋・左側屈している状態を指しています。)


新しいことを覚えると嬉しがって舞い上がるというのは、はじめのうちはよくあることで 「はしか」 のようなものですが、今となっては穴があったら入りたい思いです。


もちろん専門職として専門用語に慣れるというのは必要なことですが、専門用語を覚えただけで、まるでできるようになったかのような錯覚をしてしまうのには注意しなければなりません。


ちょうど高校生の頃、テスト前に勉強ができる子のノートをコピーしたら、もう勉強した気になっていたというのと似ています。


(私くらいかな? 結果はもちろん惨憺たるものでした。





余談ですが専門用語というのは、同じ知識を持つ人同士がコミュニケーションをするとき、短時間で多くの情報を伝えるのに便利な道具で、それ以上のものではないと思います。


ところが、これに人間の心理が入ってくると、妙にありがたみを持たせ、専門用語を知っている自分に酔ったり、専門外の一般の人や同業でも知らない人に対して優越感を持って使うということがあります。


ひどくなると、自分の実力不足を隠すために専門用語を並べ、相手を煙に巻くなどというようなこともあります。


こうなると始末に負えず、バケツの水でもかぶって頭を冷やすしかありません。


このようなことは、当時の私自身の心を振り返って感じる印象なのですが、みなさんはどう思われますか?


つづいて「時間が短い」ということについてです。



≪次回に続く≫



ひとりでできる!!仙腸関節の可動性検査 その5

2011-12-10 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
仙腸関節の可動性検査については、わからないことがいろいろあります。


そのひとつが加齢による骨癒合です。


仙腸関節は70代では80%、80代では100%骨癒合を起こすとされています。


しかし、80代の方に仙腸関節の検査を行うと、意外に可動性を感じることがあります。


また、可動性の制限を感じてアプローチし再検査を行うと、可動性が回復していることも少なくない気がします。


もちろん骨性の制限を感じることもありますよ。


けれども80代以上は、100%全員が骨癒合しているとはどうも思えません。





果たして、私が感じているものはいったい何なのか?


仙腸関節が動いているというのは実は錯覚で、コンタクト部位の下層にある軟部組織のすべりの有無なのか?


それとも軟部組織、たとえば後仙腸靭帯の緊張の有無なのか?


それにしては仙腸関節が開閉しているように感じるので、やっぱり動きがあるのか?


数年来悩んでいるのですが、よくわかりません。





ただ、何らかの動きを感じとっているのは間違いないと思います。


もし、それが厳密に仙腸関節の動きではなかったとしても、治療前と後で変化がみられるなら、機能障害を改善させているということになるので、「実用的には問題ない」と割り切って検査しています。


基準がズレていたとしても、ズレたままの基準で前後に変化がみられるなら、あるていどの指標にはなるというわけですね。


とにかくこれについて何かご存じの方がいらっしゃったら、ぜひ教えてください。





さて前回は、仰臥位でも行った前方・後方回旋、インフレア・アウトフレア検査を立位で行いました。


ではチャレンジとして仰臥位では行いませんでしたが、股関節を外転・内転させ、そのときの仙腸関節の動きを感じ取ってみてください。


反対側の膝を曲げて外転、伸ばして内転させるようにします。






どのような動きに感じられましたか?


自分なりにで結構ですから、その感覚をよく覚えておいてください。





それが感じられれば、今度はさまざまな方向に下肢を動かして、仙腸関節の動きを感じ取ってみてくさい。


このとき骨盤を動かしてみるという方法でも、感じとることができればかまいません。


ただ骨盤を動かすと、骨盤全体の傾斜が入るのでそれを差し引いて仙腸関節の動きを感じとる必要があるので、ちょっとややこしくなるかもしれません。


初心者の方には、骨盤を傾けるような動きができるだけ入らないように、上体をまっすぐ起こしたまま、下肢を動かして練習することをオススメします。




慣れてきたら、骨盤の傾きも含めて上半身の動きも加えていろいろ動かしてみるとよいでしょう。


さまざまな方向に動かしていると、仙腸関節も実にいろいろな動きをしている様子が感じとれると思います。


この感じを覚えておくことが実際の評価と治療で役立ちますので、身体に刻み込んでおいてください。





今回のシリーズでは仙腸関節がテーマでしたが、仙腸関節に限らず、関節の制限があるというのは、すべての動きの中である方向、もしくは複数の方向、はたまたすべての方向に動きにくくなっている状態です。


基本としては、屈曲・伸展と右側屈・左側屈、そして右回旋・左回旋という6方向に対して可動性検査を行うことが多いのですが、実際の制限はそれらの組み合わせた3次元の方向に存在しているということを忘れないで下さい。



スタッフ間で情報を共有し、データとして残すためには決まった検査をする必要があり、この場合、制限の大きい方向を記録します。


ただ実際の治療のときには、たとえば屈曲制限だからといって屈曲方向にモビライゼーションを行うのではなく、屈曲に加えて、側屈・回旋のいずれの方向により制限があるのか、探しながら刺激するようにしましょう。


はじめのうちは大まかな方向でもかまいませんが、慣れてきたら微調整しながら動かすようにしてください。


そうすることで、よりきめ細かいアプローチができるようになります。



ひとりでできる!!仙腸関節の可動性検査 その4

2011-12-03 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
仰臥位で仙骨の動きがつかめるようになったら、立位で感じ取る練習をします。


立位のほうが安定性も悪くなり、他の部位の動きも入ってくるために、仙腸関節だけの動きをひろうというのは仰臥位よりも難しいかもしれません。


でも実際の現場では、セラピストにとって都合のよい体勢で評価できるとは限りません。


さまざまな姿勢で評価できるようになっておいたほうがよいでしょう。





こうなると大切になるのが、関節が動いている、今回なら仙腸関節が動いているというのはどのような感覚なのかということを身体で覚えておくことです。


それがわかっていれば、どのような姿勢でも評価することができます。


ですから前回までの練習をよく行って、感覚を覚えこんでおいてください。





少しでもわかりやすくするために、キャスター付きのイスを準備しましょう。


検査する仙腸関節側の膝を曲げて、イスの座面の上にのせます。



この座面で下肢を動かして、仙腸関節の動きを調べます。


どうしてキャスター付きのイスを使うのかというと、殿筋の緊張を最小限にするためにです。


立位でそのまま下肢を動かすことで殿筋が緊張すると、関節の動きがわかりにくくなってしまいます。


動かすとき反対側の膝の曲げ伸ばしなどによって操作するというのも、検査側の殿筋の緊張を防ぐためのコツとして、意外に大切になります。

では始めましょう。





膝をイスに乗せた検査側の仙腸関節に、仰臥位のときと同じようにコンタクトし、これを検査開始位とします。


そのまま、反対側の膝を曲げて腰を落としながら、検査側の下肢を後ろに伸ばしていきます。



股関節の伸展につづき、腸骨が前方に回旋してきます。


仙腸関節の動きを感じましょう。





つづいて、反対側の膝を伸ばして元に戻しながら、検査側の下肢も戻してきます。



そのままの勢いで検査側の下肢を、多少前に出してもかまいません。


この動きによって、股関節の屈曲につづき、腸骨が後方に回旋してきます。


以上の動きを繰り返して、腸骨の前方・後方回旋を感じとるように何度も練習しましょう。





つづいて、インフレア・アウトフレア検査です。


まずはインフレア検査から。


先ほどと同じ検査開始位で、検査側の足のつま先が外に向くように大腿骨を内旋します。



その動きに続いて腸骨がインフレアし、PSISは外側(Ex)へ動くはずですので確認しましょう。


アウトフレア検査はインフレア検査の反対方向に動かします。


検査側の足のつま先が内に向くように大腿骨を外旋すると、続いて腸骨がアウトフレアし、PSISは内側(In)へ動くはずです。



前方・後方回旋検査と同じように、繰り返し練習して感じとってください。





仰臥位のときと同じように、仙腸関節の動きを感じとることができたでしょうか。


もしかしたら、立位のほうがわかりやすかったという方もいらっしゃるかもしれません。


前回、わからなければ、そのわからない感覚を大切に練習してくださいとお話ししましたが、このようにポジションを変えると意外にわかりやすくなることがあります。

ひとつのことにじっくり取り組むもよし、いろいろ変えてみるのもよし、自分のタイプによって選ぶとよいでしょう。