手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

母指圧迫での手による力の加え方(組織固定の大切さ) その2

2014-10-18 16:47:23 | 学生さん・研修中の方のために
ティッシュプル(=皮膚のあそびを除いておくこと)など組織固定の大切さは、手技療法を用いる上でいくら強調してもしすぎるということはありません。



いくら見た目はテクニックの形がきちんとできていても、組織固定が上手くいっていないと十分な効果を挙げることはむずかしいでしょう。

なぜなら、角度の微調整をして必要な方向に刺激を入れることが難しくなるためです。

また、コンタクトしているポイントがグラグラして安定しないため、セラピストの手や腕に不必要な力みができてしまいます。

その結果、組織の状態をモニターしておく触診の精度が著しく低下したり、セラピストの身体にムリをかけてしまうことになります。



とにかく重要なことなので、まずは過去の記事で復習なさってくださいね。

「ひとりでできる!!肋骨の可動性検査練習法 その9≪大事な大事なティッシュプル1≫」

「ひとりでできる!!肋骨の可動性検査練習法 その10≪大事な大事なティッシュプル2≫」



あそびをとる方向はどれでもかまわないのですが、力が加わる方向の手前からとったほうがよいでしょう。

今回は、母指を肘に向けてにコンタクトしていますので、手首側に触れてから肘側に皮膚をひっぱりましょう。


練習ですので、しっかり引っ張ってかまいません。



ティッシュプルできたら、手首を尺屈させながら母指圧迫してみてください。


このときの感触を覚えておきましょう。



こんどは、ティッシュプルができていない状態で圧迫してみてください。

押さえる角度を微妙に変えて、微調整してみてください。

両者を比べて、どちらのほうがより安定感があって、しっかりと力を伝えることができるでしょうか?



ティッシュプルできている場合のほうが、圧倒的に安定性や力強さがあるのではないでしょうか。

手にも余計な力が入らず、角度の微調整も行いやすいはずです。

これが組織固定することの大切さです。



ところで、コンタクトする側のティッシュプルをしても、手の安定感がまだ良くない感覚を持つ時があります。

そのようなときは、支え手側のティッシュプルも行いましょう。

今回の場合なら、四指を伸筋側に当てるとき、より肘側に触れて、そのまま手首側に皮膚を引っぱっります。



写真はわかりやすくするため大げさに動かしてますが、支え手側の場合はごく軽く、皮膚の表面が少し動く程度の感覚でかまいません。

それだけでも十分に安定してきます。

試してみていかがでしょうか?



支え手側のティッシュプルは、個人的には上肢や頸部など、把握するような手の形の時によくとりますが、腰背部を押さえる時も必要なら行います。


もっともこの場合は、圧迫を加えると同時に支え手側も押し広げられ、皮膚のあそびが除かれていることも多いので、あまり意識されることはないかもしれません。



しかし、無意識に行っていることを意識してコントロールできるようになるのが技術というもの。

コンタクトした時に違和感がないかどうか、感覚が教えてくれている情報をやり過ごすことがないように意識して練習するようにしましょう。



支え手側のティッシュプルは、コンタクト側に比べてあまり注意を払われにくいだけにぜひチェックしておいてください。

コンタクト側と支え手側、どちらのからティッシュプルするのかについては、どちらからやっても固定さえできればよいのですが、私は支え手側から行っていることが多いです。



以上のお話しは、母指を外転位でコンタクトした場合でしたが、では対立位ならどうでしょうか?


そう!母指は橈側から尺側へ、四指は尺側から橈側へ、腕をくるむようにティッシュプルするわけですね。



皮膚のあそびをとる操作も、はじめは試行錯誤が必要ですが、慣れてくるとその場ですぐにとることができるようになります。

ちょうど、自転車に乗れるようになるのと同じ感覚です。



組織を固定させることの大切さ、改めて感じていただけてでしょうか。

次回は母指の力を使うことについてのお話しです。



母指圧迫での手による力の加え方 その1

2014-10-04 17:20:57 | 学生さん・研修中の方のために
手技療法を学ぶとき、手には力を入れず、体重を使うなど身体を使って操作することの大切さが強調されます。

私もそうしています。

手の力は支えるため、圧迫している手の形を保つために使い、刺激を加えるため、動かすための力は最小限にとどめるべきだと考えています。



ただ、身体を強調するあまり手の力を使うということがよくわからず、かえって手に無理な力が入ってしまっているという方もいます。

そのため最近では、手に力が入るとはどういうことなのか?まずはそれを身体で理解しておくことで、手元がおかしいときにより早く気づき、修正しやすくなるのではないかと考えるようになりました。



過去にも母指圧迫についてのポイントをお伝えしてきましたが、今回のシリーズは母指と手首を使ったときに違いについて、追加のお話しも交えながら復習したいと思います。

細かい話も入りますよ!

刺激する部位は前腕の屈筋を対象に、まずは手首を用いて力を伝えることから。



前腕の屈筋を、反対側の母指で圧迫するようにします。

写真のように、母指の指先を肘の方に向け外に開いた(外転位をとった)状態で前腕の屈筋に当て、四指は伸筋側に当てます。




はじめに母指の指紋部が接触する部位、母指丘に力みが入らない角度を確認しておきましょう。
「母指圧迫:指紋部で押す工夫シリーズ」
「セラピストの母指を守る工夫シリーズ」



その状態で、手首を小指側に倒してみてください(尺屈)。
「母指圧迫における手首の活用」






そのとき四指の支え手、この場合なら特に小指と薬指がゆるまないように注意しましょう。

これがゆるむと母指圧迫の力が逃げてしまいます。

支え手が大切なのですね。
「ひとりでできる!!間接法の練習2」その5≪支え手の大切さ:ポジショナルリリース≫

ゆるまないといっても固定しているだけです、曲げるように力を入れる必要はありません。



いかがでしょうか?

手首の力だけでも、しっかり力が生み出せることを、感じていただけましたか?



今度は、母指を尺骨側の方に向けて(対立位をとって)前腕を圧迫してみてください。


この場合は、手首を反らせる(背屈)させるようにすると、力が伝わるはずです。


このように、母指が外転位でコンタクトしたら手首は尺屈、対立位なら手首は背屈させるようにすると、スムーズに力が加わります。

この感覚を覚えておいて下さい。



では試みとして反対に、母指が外転位のとき手首は背屈、対立位なら尺屈させてみてください。

先ほどと比べて、何だか力がすっぽ抜ける感じがするのではないでしょうか?

手首の力が上手く伝わっていないのですね。

ムリに力を加えようとしたら、母指に力が入ってしまうと思います。



コンタクトした部位に対して、もっとも効果的な方向から力を加えることは、とても大切なポイントです。

手首くらいならわかりやすいのですが、体幹や下肢などコンタクトする部位から離れれば離れるほど、スムーズに力を使えるのが難しくなります。

なかには力が伝わってなくても、その感覚がわからないために気づけず、そのまま続けている方もいます。

そうならないためには、まず手首の動きで、力が伝わっている、いないという感覚を養うのがわかりやすいでしょう。



現場では部位によって、さまざまな角度でコンタクトするはずです。

この手首を用いた練習でも、さまざまな角度でコンタクトして、もっとも力が伝わる角度に手首を動かせるように、いろいろ試してみて下さい。



もしここで、いくら試してもしっかり圧迫できている感触が得られていないなら、それは組織が固定できていない、いわゆる皮膚のあそびが除かれていないためです。

次回はそのお話しをしましょう。