手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

母指圧迫における「肘」の活用 その3

2009-09-26 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
上腕は外旋させ、前腕は回内させるために、肘はいかに立ち振る舞えばよいのか!!


みなさん考えてみましたか?


では、答えを発表します。






ジャーン!!










「肘だけ外旋させる」です。







・・・ 






・・・  ・・・ 














エ~ッ、それだけのこと~


そんなことでここまで引っぱってきたの~!!







そう言いたくなった方もいらっしゃるかもしれません。


でも、そんなことが大切なんですよ







ちょっとやってみましょう


写真は手を宙に浮かしていますが、ここではベッドや机などにつけて行ってみてください。




母指圧迫の形を作ってベッドにあて、体重をかけてみます。







そのまま、肘だけ外旋してみましょう。




いかがでしょう?


力が母指へさらに加わっていくのがわかりますか?


こうすることで上腕は外旋し、前腕は回内して、肩甲帯から前腕にかけての力がスムーズに発揮されます







「これにて一件落着~」というわけで、無事に肘は「名奉行」の役割を果たすことができました







あまり説明されない使い方かもしれませんが、上手な人はこのような動きを無意識に行っています。


肘を伸ばしっぱなしにしている、あるいは単に曲げ伸ばしだけしているというのは、とてももったいないことなんです。


それだけではなく力をさらにかけようとしたとき、指先の力で押し込もうとしやすくなるために、指を傷めるリスクが高くなります


(また出ましたね。私の十八番)


肘の活用を知っていれば、肘を外旋させるだけで力が伝わっていくのです。


この違いは大きいですよね







それから注意していただきたいのは、決して上腕が外旋位、前腕が回内位を保つことが重要なのではないということです


大切なのは、上腕が外旋方向に、前腕が回内方向に「動こう」としていることです。



それが実際は動いているように見えなくても、「動こう」としているときには力が発生しています (等尺性収縮ですね)。


ですから見た目の位置ではなく、身体の中でどのような力が発生しているかを自分で感じることが肝心なわけです







これを感じ取れるようになることは、患者さんの身体にどのような力がかかり続けたことで機能障害を起こしたかを理解する上でも大切ですよ。


同じような動きをしていても、熟練者と初学者で効きが違うのは、身体の中で発生している力が違うともいえると思います。










さて今回のシリーズは「肘の活用」をとおして、身体の使い方についてご紹介してきましたが、これは他の部位でも活用できる動かし方です。


ですから、ぜひみなさんそれぞれで工夫なさってみてください。


私も日々工夫しているのですが、これからも積み重ねていってどんどん熟練していきたいと思っています











あ~ヤレヤレ、今年の初めに「身体の使い方に力を入れて紹介していきたい」なんてことを書いた割には、他のことばかり書いていました。


ずっと胸につかえがある感じだったので、今回でちょっとスッキリしました

母指圧迫における「肘」の活用 その2 ≪お知らせ≫

2009-09-19 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
母指の圧迫では、上腕は外旋すべきなのに、前腕が回外(外旋)してはいけない


どういうことでしょう






とにかくここは前腕で試してみましょう


上肢を水平に挙げ、上腕が動かないように反対の手でつかんで固定します。


手は母指で圧迫するポーズをとりましょう。







まずはそのまま前腕を回外(外旋)させながら、母指で圧迫を加えようとしてみてください。









この感触、おぼえておいて下さいね







つづいて前腕を回内(内旋)させながら、母指で圧迫を加えようとしてみてください。









どちらのほうが、母指に力が伝わる感触があったでしょうか?







きっと回内(内旋)させたほうではなかったかと思います(強引に誘導しているかな?)


回内させたほうが前腕の安定感が増し、母指球(母指内転筋)も自然な緊張が生れるはずです。


空手でも、前腕を回内させながら正拳突きをします


ですから前腕は回内させることで、力が手へとスムーズに伝わるわけです







さて、上腕は外旋させろといい前腕は回内させろという、互いにケンカになりそうな状況を上手くまとめて体幹の力を伝えながら、さらに上肢の力も加えて増幅させる仕事をしてくれるのが「肘」というわけです。


いや~、肘というのは「遠山の金さん」や「大岡越前」らのような「名奉行」の働きをするんですね


でも前回お話ししたような、上肢を一本の棒のように固定して使っているとそうはいきません。


上腕の顔が立つように上肢全体を外旋すれば前腕が困り、前腕の顔を立てて上肢を内旋すれば上腕が困ってしまい、肘は板ばさみになって「迷奉行」にしかならないのです


肘を上手く活用することが大切です。


どのように活用して肘を「名奉行」にするのか?


みなさん考えてみてください







〈さらにドラマばりのひっぱり方で、衝撃の真相は次回へ…










 身近な道具を使って、かんたん!スッキリ!!「コリとり体操」が、
 「壮快」さんでも紹介されました
 





当院ホームページで公開しているエクササイズ「道具を使ったコリとり体操」が、おかげさまで健康雑誌「壮快」11月号「首の痛み特集」で紹介されました。

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患者さんへのアドバイスとして、みなさんご自身のセルフケアとしてお役立ていただければと嬉しいです。フリーでダウンロードできるので、どうぞご活用ください。




くつぬぎ手技治療院 「身近な道具を使って、かんたん! スッキリ!! コリとり体操」


母指圧迫における「肘」の活用 その1

2009-09-12 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
前々回はASTRで用いる、母指での押すフックについてのお話でしたが、今回も母指にまつわるお話です







マッサージなど、軟部組織マニュピレーションの基本の中に「母指での圧迫」があります


「指圧」のなかには、「母指での圧迫」がすべてという流派?もあるくらい、基本中の基本になっています


治療院やクイックマッサージ、整骨院や病院のリハビリ科にお勤めの方は、日常的によくお使いなのではないかと思うのですがいかがでしょうか?


ちなみに、私もよく使っています







母指でのコンタクト方法は、いろいろなテキストで紹介されていますのでそちらに譲りまして、今回は「肘の活用」についてです。

母指での圧迫に、肘を活用する?

何のことか、ピンときにくいかもしれません


でも身体の使い方としては意外と大切なことなんですよ。







「身体を使う」というと、ほとんどイコール「体重を乗せる」ことのように教わります。


そのためか母指での圧迫を行っているとき、肘をピンと伸ばしたまま一本の棒のようにして、ペッタンペッタンと米つきバッタのように身体を前後に動かしている方がいます。


体重は伝わっているはずだから、これでOKといわれればそうなのかもしれません。


でも身体の使い方としては「ウ~ン」という感じです。







上手く身体を使うというのは、体重や重力を利用するのはもちろんですが、言いかえると下肢や体幹で生じた力を、上肢で増幅させながら手に伝えるということです


「増幅」なんていうと、よけいにややこしく感じるかもしれません。


下肢や体幹の力をスムーズに手に伝えながら、上肢の力も加えていくことから増幅という言い方にしてみました。


このイメージは大切なのですが、よりわかりやすくするため具体的にいきましょう。







上肢を上腕と前腕、そして手に分けて考えます。


まずは上腕から。


体幹の力がスムーズに上腕を通過するためにはどうすれば良いのでしょうか?



答えは、「上腕が(軽く)外旋することです。







とにかく実践していただきたいので、細かい理屈はまたにして、一般的な話でまとめたいと思います。


上腕が外旋していると、肩を下げて脇をしめやすくなり、体幹の力はスムーズに手に伝わります

反対に上腕が内旋していると、肩が上がって脇が空き、体幹の力はスムーズに手に伝わりません


スポーツや武道でも、肩が上がって脇が空いているのは好ましいとはされないはずです。







試しに写真のように片手でイスやベッドの縁をつかみ、身体を支えてみて下さい。


まずは外旋して。・・・いかがでしょう?









わりと楽に安定して身体を支えられるのではないでしょうか?







では次に、内旋してみましょう。・・・いかがでしょう?








力まないと支えにくく、油断すると肩が上がり、何やら肩峰のあたりにツッパリ感を感じませんか?







これは、せっかくの体幹の力が肩峰に逃げているのです。


逃げているだけではなく腱板にもストレスをかけており、術者の肩を痛めるパターンになっています


ときどき、肩がすくんだ状態で施術をしている方を見かけるのですが、そのときたいてい上腕は内旋しています。


くれぐれも注意なさってください。


(ちなみに上の写真は、違いを強調するためにオーバーにしています。それから、意識することで、上腕を外旋させた状態で肩を挙げる、あるいは、内旋させた状態で肩を下げることももちろん可能ですが、外旋させた状態で肩を下げたほうが、一番安定すると思います。)







いかがでしょうか?上腕は(軽く)外旋させることが大切だ、ということがおわかりいただけたでしょうか?


そして、中立位から外旋方向に向かうときに上腕の力が発生して体幹からの力に加わって増幅し、前腕から手に伝わっていくわけです。







ところがところが、母指での圧迫のときに前腕は回外(外旋)しないほうがよいのです







〈ドラマのようなひっぱり方で次回につづく

感謝 感謝 の4周年

2009-09-05 20:00:00 | よもやま話
おかげさまで9月2日に開院4周年を迎えました


そして、北海道に来て5年が過ぎました


多くの方の支えがあって、ここまで来ることができました


ほんとうにありがとうございます








思い返せば本業はもちろんですが、それ以外のことももいろいろ経験することができた4年間でした










これまで縁もゆかりもなかった土地で開業したためか、単に商売下手なのか、はじめの1年半は赤字でした


誰も来ない日がしばらく続くと、自分は世の中から必要とされていなのではないかと、ロクでもないことを考えたものでした


ちょうどそのとき、昔、新聞配達をしていた頃の先輩が心配して声をかけてくださりました。


先輩からアドバイスをいただいてチラシをつくり、早朝にポスティングをしてまわりました


あるマンションの集合ポストに 『無断でチラシをいれた業者は、罰金として3万円をいただきます』 と書いてあるのを読んで、本気でビビッてしまいました


そんなこともありましたが、少しずつ成果が出始め、おかげさまで今では多くの方にご利用いただけるようになりました。


ついつい、「技術さえ身につければあとは大丈夫」と思いがちだったのですが、いかにPRするか、つまり、自分のことを知ってもらうかということの大切さを思い知らされました。







ヒマな状況を何とかしようとホームページでのPRも考え、金銭的な余裕がないので自分で作ろうとしたものの、なかなか上手くいかず、何度もパソコンに向かってパンチしそうになりました


ながーい時間をかけてようやくできた自作のサイトに、幸いにもFMラジオ局が目を留めてくださり、出演の依頼が舞い込みました


ところが、せっかく出演したラジオなのに緊張のあまり話もできず、DJの方の話にうなずくばかりで、終わった後に 「ラジオでうなずいとっても意味ないがな~と打ちひしがれました。


でもありがたいことに、番組を聞いていたリスナーの方がご来院くださり、その方がどんどん紹介してくださりました。







思いもかけず、前職でお世話になった松本先生と一緒に考案した「ASTR」が、共著で出版されることになり、本を書くという貴重な経験をすることができました


原稿を書いているときは、治療院がまだ赤字の期間中だったので、ゆっくり時間をかけることはできたのですが 「こんなヒマヒマ治療院の院長が、本なんて書いてエエのやろうか とか、 「本の出版もいいけど、治療院をまず何とかセエよ と自分にツッコミを入れながらパソコンに向かっていたことを覚えています。


それでも、松本先生や編集部の担当者さんと、メールのやり取りをしながら本を作っていったのは本当に楽しかったです


おかげさまで、「ASTR」は専門書にしては多くの方にご覧いただける本になりました







本の出版にあわせてDVDも撮影され、緊張で汗だくになりながら実技の解説をしました。


セリフを必死になって覚えたのですが、スポットライトがパッと光った途端、頭の中からセリフもパッと消えてしまいました。


何度もカットが入り、スタッフの方々にも迷惑をかけてしまいました。


撮影は2台のカメラで行われたのですが、どっちを見ればよいのかわからず、あいだを取って2台のまん中を見るという、我ながら間の抜けたことをしていました







仲間の支援のおかげで「徒手医療協会」さん主催のASTRのセミナーが開催されるようになり、北海道でも「北海道ハイテクノロジー専門学校」さん、「札幌高等盲学校」さんからのご依頼でASTRセミナーを行いました


最近では訪問マッサージの「まごころベルサービス」さんから、定期的にセミナーの依頼を受けるようになりました。


そして自分の治療院でも、「手技療法の寺子屋」というセミナーを開催するようになり、札幌でも少しずつ手技療法を伝える仕事を行えるようになってきました







また、ASTRを出版したおかげで、札幌で「オリエント歯科」さんを開業されている安井先生とご縁ができ、北海道全身咬合研究会に参加させていただくようになりました。


この会は、歯の咬み合わせと全身の関係に関心をもっている、歯科医師の先生方の集まりです。


歯科医師のグループのなかに、ひとりポツンとマッサージ師が入っている状態なので、はじめの頃は歯科の専門用語がチンプンカンプンでした


でも、先生方が親切に教えてくださったので少しずつ理解できるようになり、おかげさまで今では会の中で「歯科医師のための手技療法」というセミナーを、シリーズで行わせていただけるようになりました







患者さんからご推薦をいただいて、雑誌で紹介されたこともありました。


取材で写真撮影のとき、なかなか上手く笑顔をつくれず苦戦しました。


すると、記者の方が不意に突然、「あ~、先生のお人柄があらわれている、とってもいい笑顔ですねなんておっしゃったので、私は 「なんのこっちゃと思わずふきだしたら、その隙にバシャ バシャ バシャ バシャと写真を撮られてしまいました。


プロの手口はこういうものかと思わず感心してしまいました







道(未知)というのは、一歩の行動からどんどん切り開かれていくものなんですね。







これまで私なりにも頑張ってきたつもりですが、それ以上に出会った多くの方の支えがあったからこそやって来れたことを実感しています。


私はもともと独立心が旺盛なのか、「自分でやろう」とする気持ちが、どちらかというと強いほうです。


(自宅では、出したら出しっぱなし、開けたら開けっぱなしというのはさておいて


でも自分でやろうとすればするほど、陰になって支えてくれる人の存在がいかに大きいかを、かえって思い知らされてきました。


だからこそ私達の先祖は「おかげさま」という言葉をつくり、影から支えてくれる人たちを大切にしてきたのかもしれませんね。


ほんとうに良い言葉だと思います。


私には特定の信仰心はありませんが、この「おかげさま」だけは自分の中で大切にしつつ、これからも頑張っていきたいと思います。







そして家族へ。


開業後のシンドイ時期をよく支えてくれました。


長い間、赤字だったにもかかわらず「稼ぎが悪い」なんてことは一言もいわなかったこと、私にとってはとてもありがたかったです。


日ごろは口うるさいですが、いざとなったら一番の「おかげさま」になってくれる。


そんな家族に心から感謝します