手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

ひとりできる!クラニアル・リズミック・インパルス(CRI)触診練習法 その3

2015-11-28 17:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
頭蓋の動きであるクラニオ・リズミック・インパルス(cranial rhythmic impulse:CRI)の触診について、はじめから5gの軽いタッチで触れようとするのではなく、しっかり触れてから圧力を減らし軽くしていくことで手指の余計な力みを防ぐというコツをご紹介しました。



この5gという表現ですが、これではっきりイメージできる、わかるという方もいるでしょうし、ピンと来にくい方もいるでしょう。

明確な指標は理解を容易にしますが、感じ取るときにあまり意識しすぎてそれに囚われてしまうと、かえって感覚の足を引っ張ってしまうことがあるかもしれません。

そこで他の表現をご紹介します。



ソフトなタッチのコツは、

「皮膚をつけて骨を浮かす」

というものです。



骨というのは指節骨や中手骨のこと。


皮膚(指紋部)は頭部に触れているけど、その圧力が骨まで及んでいない。

皮膚は接触しているけど、骨はまるで宙に浮いているかのような感覚で触れるということです。

5gと言われると数字を意識し過ぎて硬くなってしまう方は、このよう表現のイメージを持って触れてみてください。



いろいろ練習してわからないという方、イチかバチかの方法もあります。

それは、意図的にゆっくり手を動かすというものです。



頭にコンタクトしたら、仮に一分間に10回を目安として5秒でわずかに手を膨らませ、続く5秒で元に戻すということをくり返します。

このリズムをしばらくくり返して、さほど意識しなくてもできるようしておきます。



これを数分間続けているうちに、自分の手の動きとは異なるリズムが気になり出すことがあります。

手をそのリズムに同調して動かすようにしてみてください。

それがCRIの可能性があります。

上手くいけばこの方法でわかるかもしれません。



いろいろお話ししましたが、どうしてもわからないなら、わかる人にリードしてもらうというのが一番でしょう。

自分が頭にコンタクトした手の上から、手を重ねて触れてもらい、CRIに同調してその動きを感じ取られるようにリードしていただきます。

「CRIの動きがわかりません」と私に相談にみえた方も、これでわかるようになったということが少なくありません。



ただ、リードするには技量が求められるので、身近にいない場合は仲間をつくって練習するとよいでしょう。

ひとりで黙々と練習するより、グループという「場」の力を借りたほうが理解を助けるかもしれません。

それになかなかわからないものを、ひとりでコツコツ練習するのはモチベーションを保つのも大変ですから。



一度でもCRIの動きを感じ取れたら、それは「塩の味を知った」ということと同じです。

いちど塩をなめればその味を忘れることはないように、いちどCRIの感覚をつかめば、その後わからなくなることがあっても、記憶を頼りに確率を高めていくことはできます。

「この味は塩とは違う」「この味は近い」という感じで。



そして、呼吸や脈拍など身体の中にいろいろ存在する動きの中からCRIを感じ取るということは、料理なら味見で塩加減をみるということ似ています。

料理の味見をしたとき、いろいろな味を感じます。

でも塩の味がわかっていれば、いろいろな味の中から意識をそれに集中して、塩加減をみることがでるでしょう。

CRIの動きがわかっていれば、頭に触れた時のいろいろな動きの中から、CRIの動きに意識を集中して調べることが出来るわけです。



このように考えれば「自分にもできそうだ」という気持ちになれるでしょうか?

すぐには無理でも「なるほど、それと同じことか」と理解できれば十分です。



感覚を養うときは、心のどこかで感じている「自分にはムリかもしれない」というで気持ちをできるだけ無くすことができるように、心のハードルを下げるということがとても大切だと思います。




次回は下肢や体幹のCRIを感じる練習です。

≪次回(12月12日更新)に続く≫



ひとりできる!クラニアル・リズミック・インパルス(CRI)触診練習法 その2

2015-11-14 17:03:17 | 学生さん・研修中の方のために
前回は頭蓋療法について、そして頭蓋の動きであるクラニオ・リズミック・インパルス(cranial rhythmic impulse:CRI)の触診についてご紹介しましたが、その感覚はつかめたでしょうか?

「むずしかった!!」という方、少なくないと思います。

はじめからひとりで練習したら、わからないのが普通なのでガッカリしなくても大丈夫。



今回は、頭部を軽く触れるコツをご紹介します。


CRIを感じるには5gの力で触れるとされているので、そうとう軽く触れることになります。

ところがここでよくみられる失敗が、軽くを意識し過ぎるあまり、かえって指に力が入って硬くなってしまうことです。

そうなったらCRIを感じ取ることは難しいでしょう。



はじめての方におすすめしたいのは、まずは頭部を包むようにしっかりと触れ、そこから手を浮かすように軽くしていくという触れ方です。

はじめから適度な触れ方を狙うのではなくて、いったんしっかり当てて触れた後、じょじょに力を抜いていきます。

このようにすると、指に余計な力が入ることをある程度防ぐことができます。



また徐々にタッチを軽くしていくことで、自分が感じ取ることが可能な強さのところで止めやすくなります。

軽くすることばかり意識がいって、自分がわからなければ意味がありません。

コンタクトする圧力が多少強くても、自分がわかるということが大切だと思います。

わかったという感覚をつかんでから、さらにより軽いタッチでも感じ取ることができるようトレーニングしていけばよいわけですから。

まずはこの方法で、何となくでも感覚がつかめるかどうか、練習してみてください。



CRIを感知すると、コンタクトしている手を外に押し出そうとするように、頭が中から膨張をし、やがて収縮します。

収縮は能動的というよりも、空気が抜けるような感じでしょうか。

わずかに空気が入って風船が膨らんだり、わずかに空気が抜けてしぼんだりするような印象です。

CRIを触診することができたら、そのリズムに同調して動きについていけるように練習します。



ところで風船といえば、実際に膨らませた風船に両手で軽くコンタクトして動きを感じとるという練習も、頭蓋仙骨療法を学んだはじめの頃に教わって練習していました。

この場合も膨張と収縮を感じるのですが、風船は動かないので自分の手の動きを感じているということになります。



手にもCRIが?と疑問を持つのが普通ですが、脳脊髄液は脳脊髄を覆う硬膜から神経鞘を経て全身に送られることが近年明らかにされたことから、CRIも全身どこでも感知されるのだと説明されています。

その確かさはともかく、このような解剖学的な仕組みが明らかになる前から、手足でもCRIは確認されていたので、頭蓋仙骨療法を現場で用いるならとにかく感じ取れるようになっておきましょう。

≪次回(11月28日更新)に続く≫