手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

「押す」「引く」「まわす」という身体の基本操作 その3

2015-05-30 17:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
今回も「引く操作」のつづきです。

前回のように下肢を持ち上げた状態で、肘を曲げ下肢を支えてみてください。

このとき肘を曲げる力で支えていると、腕は下肢の重みを強く感じて、早く疲労してしまいます


では見た目は同じ形でも、肘を引く力で下肢を支えてみてください。


先ほどより楽に支えられるのではないでしょうか。



はじめの方法が、上腕二頭筋など肘を屈曲させる筋肉を働かせているのに対して、こちらは広背筋など肩を伸展させる筋肉を使うことになります。

肩の伸筋のように体幹寄りについている筋肉のほうが、肘の屈筋より強い力を持続して生み出すことができる。

だからより楽に持てるのですね



さらに肩を後ろに引く(肩甲骨を内側に引く)。


胸郭を回旋させる力を使って上半身から引く。


骨盤を回旋させる力を使って下半身から引く


重心を後ろに移して腰を引く。


体幹や下肢の力を加えるほど、より楽に支えることができるようになるはずです。



そして大切なことをもうひとつ。

ここでは下肢を支えるために、

肘を引く

肩(肩甲骨)を引く

胸郭を回旋させる力を使って上半身から引く

腰を回旋させる力を使って下半身から引く

重心を後ろに移して腰を引く

とご紹介しましたが、実際の臨床ではこれらを別々に、あるいは組み合わせて使います。

すると負担が一か所に集中することを避けることができ、疲労しにくくなって身体を傷めるリスクを大幅に低下させることができます。



よく正しい姿勢とか、正しい動かし方といわれます。

もちろんそれは大切なのですが、どれほど正しく使っていたとしても、同じ部位に長期間反復して負担がかけ続けると傷めてしまうかもしれません。

ですから仕事として行う上では、動かし方のレパートリーを増やしていくことも必要だと思います。



カラオケでも持ち歌がひとつしかないより、レパートリーが多いほうが場は持ちますよね

それと同じ・・・かな?

ちなみに私はカラオケ苦手です



何はともあれ外見上は同じようでも、身体の中でどのような力を生み出しているかによって、まったく別ものになります。

焦らずに少しずつ、ひとつずつ、工夫しながらレパートリーを増やし、自分のものにしていってください。



そうそう、肘を曲げて支えるときには、セラピストの腕を自分の身体にくっつけて支えてください。


支えを増やすことでさらに楽に支えられるはずです。

これも負担を分散させるレパートリーのひとつですよ

「支えを作って負担を分散させる」「操作は身体のそばで」もご参照ください≫



次回は「押す」操作です

6月13日(土)更新です。


「押す」「引く」「まわす」という身体の基本操作 その2

2015-05-16 17:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
今回のシリーズは、触診やテクニックを用いるときは身体の力を使うということについてのお話です。



前回、「腰が動いて手がついていく」と述べましたが、この「腰」には体幹や下肢の力という意味を含めることにします。

範囲が曖昧なのですが、伝統的に「腰を使う」という表現が用いられていますし、あまり煩雑になっても困るので「腰」とひと言でまとめさせていただきました。

最近では体幹については「コア」という表現を用いたほうがピンとくる方が多いのかもしれませんが、私自身がまだ馴染んでいませんので「腰」とすることにします。



今回は「引く」操作のご紹介。

みなさんは仰臥位になったモデルの下肢を、足首を持って片手で持ち上げるとしたらどのようにするでしょうか?

足首付近の外側に立って、内側の手で足首を持ち、肘を曲げて持ち上げる。


写真は肘を曲げすぎかもしれませんが、何気なくやると、このような持ち上げ方をする方が多いかもしれません。

間違いではないのですが、この方法は腕にズシッと脚の重みを感じるのではないでしょうか?



では、次の方法を試してみてください。

モデルの足首の外に立って、内側の足を一歩引きます。

膝を曲げて腰の位置を低くし、内側の手で足首を持ちます。




そのまま重心を後ろ足に乗せ、腰を「引き」ながら膝を伸ばしていきます。


腕は支えになって身体の力を伝えているだけです。

「腰が動いて手がついていく」ですね。



すると、脚が持ち上がっていきます。

このとき、腕には脚の重みをさほど感じず、楽に持ち上がるのではないでしょうか

ちょうど綱引きで綱を引っぱったとき、ロープが勝手に上がっていくように、脚も勝手に上がっていくような感覚を覚えるのではないかと思います。



このように「持ち上げる」のではなく「持ち上がる」

「動かす」のではなく「動き出す」

「力を加える」のではなく「力が加わる」

というようなイメージで楽に操作をすることが、評価と治療を行う上でポイントになってきます。



ストレッチで引く操作をするとき。

関節モビライゼーションの形をつくるために、引く操作をするとき。

触れた手を離すとき。

すべてこの動かし方が基本になっています。



特に、触れた手を離す時の引く操作はあまり注意を払わせませんが、私はとても大切だと思っています。

「触れた手の離し方」シリーズをご覧になって、ぜひ復習しておいてください。



まずは日ごろの臨床で引く操作を行うとき、腰から動かす操作した場合と、腕の力で行った場合のどちらが楽か比較してみましょう。

必ず自分で体験して確認するようにしてくださいね。

次回も引く操作のお話が続きます。



次は5月30日(土)更新です。






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「押す」「引く」「まわす」という身体の基本操作 その1

2015-05-01 16:55:32 | 学生さん・研修中の方のために
触診やテクニックを学んで使うとき、はじめのうちは「何に触れるか?」「どのように相手の身体を操作するのか?」というところに目を奪われがちなもの。

そのためにセラピスト自身は、自分の身体をどのように動かしているのか、というところがおろそかになってしまうことがあります。

その結果、知らず知らずのうちに無理な体勢や力の加え方をしてしまい、自分の身体を傷めるようになる。



自分の身体を傷めている、あるいは違和感を持っている状態では精度の高い評価や治療は望めません。

ですから触診やテクニックを習得するには、自分の身体を無理なく楽に操作する技法を身につけておく必要があります。

今回のシリーズは、その基本的なところについてのお話です。



はじめに、自分の身体を操作する基本は「でんでん太鼓」のようなものだといえます。

でんでん太鼓は、中心の軸となる柄の部分が回転することによって、2つの球に遠心力が働いて太鼓を打ちます。

(欲しくなって買ったけど、送料のほうが高かった



身体の場合も、基本は中心の軸となる腰(体幹・下肢)が動き、その力が手に伝わって操作していく。

ちょうどラジオ体操にもある、上半身を回転させる体操も同じですね。


体幹を回転させる力が腕に伝わっていきます。

これによって軸がぶれることなく、安定して回転することができます。



反対に、腕を振り回すことで身体を回転させるとどうなるでしょうか?

試してみてください。

遠心力が働いて身体が外に振り回されるようになりませんか?

これでは軸がブレて安定しません。



この使い方で安定させるためには、体幹に力を入れて固定させる必要があります。

そうなると余計なエネルギーを使うと共に、動きにしなやかさがなくなります。



ですから、まずは中心から外へ力をつたえていくようなイメージで操作するとよいでしょう。

「腰が動いて手がついていくような」イメージでしょうか。

決して手先から力を加えるのではありません。

手は腰(体幹・下肢)で生まれた力を方向付けるのが仕事という感覚です。


もちろん動かし方は他にもあり、体の軸を1つではなく2つとしたり、軸を作らないという方法もあります。

でもまずは体幹を一つの軸としてイメージしたほうが、わかりやすいのではないかと思います。

慣れてきたらいろいろな方法を試してみて、自分の好みに合う動かし方を取り入れればよいでしょう。



ところで「腰が動いて手がついていく」ですが、それだけではハッキリしたイメージは持ちにくいですね。

ですから「押す」「引く」「まわす」という3つを私は基本操作としています。

これなら具体的なので、よりハッキリしてくるのではないでしょうか?



触診やテクニックなどで複雑な動きに見えるようなものでも、この3つの組み合わせで成り立っていると考えています。

次回はまず「引く」操作からお話したいと思います。


次回は5月16日(土)更新です。





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