手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

手技療法習得へのステップ3‐ トリートメント その4 ≪おしらせ≫

2009-07-25 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
さまざまなテクニックを学んで使える道具が増えてきたら、頭の中の道具箱に整理しておくとよいでしょう。


そうすることで各テクニックの特徴がつかみやすくなり、新しい技法と出会ったときも「このテクニックは、あのテクニックと似ているな」とか「あのテクニックと同じグループに入るな」という具合に自分で判断できるようになり、テクニックの種類にも振り回されなくなります。


さらに、すでに習得した同じグループに属するテクニックの経験を生かすことで、新しい手技も早く覚えられます


ひとつの参考として、私なりに整理したものを紹介しますね







いろいろあるテクニックも下の表のように「他動的」「自動介助的」「自動的」の3つと、関節運動を「伴う」「伴わない」に分類できると思います




他動的テクニックは、術者により外から力を加えられて行うテクニックで、関節運動を伴うグループのストレッチ、関節モビライゼーションなどと、関節運動を伴わないグループのマッサージや、筋筋膜リリースなどが含まれます。


自動介助的テクニックは、術者によって外からコントロールされつつも、患者自身の力(内在力)によって行われるテクニックで、筋肉エネルギーテクニックやPNFなどの関節運動を伴うテクニックが存在します。


関節運動を伴わない自動介助テクニックなんてのは、ちょっと考えにくいかな?







そして上の表には示されていませんが、自動的テクニックになるとマッサージやストレッチももちろん含まれ、さらにエクササイズというよりアクティブな要素が強くなります


エクササイズボールやセラバンド、バランスディスク、ストレッチポールなどを使用した方法はもこれに含まれるでしょう。


これらも広い意味での「徒手医学」の概念の中に入ってくるので、手技療法の仲間だといっていいと思います。







さらに、それぞれのグループ(表のマス/セル)は、下の表のように直接法と間接法に分類できます




直接法とは、制限のある部位の起始と停止を遠ざける、縮んだ組織を伸ばすなど、制限に直接ストレスをかける治療手技です。


間接法とは、制限のある部位の起始と停止を近づける、縮んだ組織をさらに縮めてリラックスさせるなど、制限に間接的に働きかけてリリースする治療手技です。


筋スパズムなど、組織が過敏になっているときは間接法からはじめるとよいでしょう。







このように私は、「自動か他動か」「関節運動の有無」「直接的か間接的か」という3つの軸で分類しています。


もちろんこれらは大ざっぱに分類しただけですので、キッチリ線引き出来るものではありません。


≪次回へつづく≫








 身近な道具を使って、かんたん!スッキリ!!
        「コリとり体操」公開のおしらせ
 

これまで、当院ホームページで「コリとり体操」というエクササイズを公開して参りましたが、このたび当院で紹介している「道具を使ったコリとり体操」をいくつかまとめて冊子をつくりました。

体性機能障害は、ほとんどが毎日の生活習慣の中からうまれるので、日ごろのセルフケアがとても大切になります。しかし現実として、体操をなかなか習慣にできない方、仕事から帰ってくると体操をする気力も残っていない方、子育てに追われて気持ちに余裕を持てない方などもいらっしゃいます。私はそのような方のために、より簡単なセルフケアとして、道具を使う方法もアレコレ考えて紹介しています。

患者さんへのアドバイスとして、みなさんご自身のセルフケアとしてお役立ていただければと嬉しいです。PDFとしてダウンロードできるので、どうぞご活用ください。

自分でいうのも何ですが、やっているとけっこう楽しいですよ(親バカでしょうか)

ちなみにこの中の一部が、8月1日発売の健康雑誌「はつらつ元気」さんにも紹介されます。こちらもよろしければご覧下さい。






くつぬぎ手技治療院 「身近な道具を使って、かんたん! スッキリ!! コリとり体操」


手技療法習得へのステップ3‐ トリートメント その3

2009-07-18 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
新しいテクニックを学ぶ時のアドバイスを、もう少し続けたいと思います







トリートメントのステップというのは、前の2つの段階で身につけたことをベースにして、幅を広げていく段階だといっていいかもしれません。


ちょうどカラオケでいうなら、持ち歌のレパートリーを増やすということと同じです


(ちなみに私は、カラオケが大の苦手です)


「リラクゼーション」「メンテナンス」で行ったことは、歌ならボイストレーニングに相当します。


こう例えれば、トリートメントとして行われる各テクニックは、ポップスやロック、あるいはド演歌に含まれる曲と同じといえます。


ですから、関心を持ったテクニックから気軽に学びましょう。







そのテクニックが教えてくれる、新しい視点を体験しましょう。


はじめっから疑ってかかるのも、信じきって鵜呑みにするのも、どちらも良くありません


カラオケに行ってマイクを持つと、すっかりその世界に入り込むけど、歌い終わるとケロッとしている方、みなさんの身近にもいらっしゃると思います


このような態度は、新しいテクニックを学ぶときにも大切かもしれません。あやかりましょう


(カラオケに関しては、私にゃとうていムリですが)







つまり、はじめは先入観を持たずに素直に受け入れ、云わんとしていることがわかったら、それが納得できるものであるかどうか判断するわけです


学ぶときには、そのテクニックにはどのような特徴があるか?長所は?短所は?を常に念頭におきましょう。


それまでの固定観念がひっくり返ることもあるかもしれません。それもひとつのチャンスです







実際問題としてテクニックにも相性があり、いまいち覚える気にならないとか、学んでみたものの使う気にならないというものも当然出てきます。


私の場合は胸椎スラストのテクニックにある、患者の体幹を抱え込んで行うチェスタードロップ(ドッグテクニックと呼ぶ人もいます)や、うつ伏せになった患者の脊椎を押す(←厳密には違いますが)バリットテクニックは、どうも受けつけませんでした。


歌の中にはどうも自分には馴染まない曲ってありますよね。それと同じことです。


馴染まないテクニックはムリに自分の中に取り入れなくても、学んだことによって視野が広がっているはずなのでムダにはなっていません。







主体性をもって、何が今の自分に必要かを冷静に判断しながら、積み木を重ねるように一歩ずつ学んで自分のものにしていって下さい。


いろいろなテクニックを学ぶことを通して、筋骨格系のはたらきというものを肌で感じ、自分なりにまとめていきましょう。


その過程で自分なりの核、つまりスタンスができてくれば、テクニックの名称に振り回されることはなくなり、それぞれのテクニックの良いところを自分の中にとりこんでいくことができます。





こうなればしめたもの






ある程度レパートリーが増えてきたら、身につけたテクニックを整理しておくとよいでしょう。


手技療法習得へのステップ3‐ トリートメント その2

2009-07-11 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
前回は、手技療法のあらゆるテクニックの共通テーマである「評価によって検出された部位へ、いかに刺激を集中させるか?」ということについてのポイントをお話しました


もちろん身体の状況によって、制限が広い範囲にあるときや、組織が弱くなっているときなど、刺激の集中が高いリスクをもつときは、分散させることが必要な場合もあります。


ただ、技術的に刺激を集中させることができれば、分散させることは難しくありません







さて、手技療法のテクニックとして名称のついているものはたくさんあり、さらに、ほぼ毎年新しい名称のテクニックが発表されているので、それらをすべて身につけようと思ったらとてつもなく大変です


もちろん学ぶことが大切であることは言うまでもありませんが、数多くのテクニックを追いかけすぎて、それに振り回されないように注意する必要があると思います


ですからこのステップでは、テクニックの習得以前に「学ぶ上での意識のあり方」が、重要になる思います。







「自分のスタンスを創り上げよう」 と意識することです。


学ぶ上でのテーマを決めたり、「こんな臨床家になりたい」とイメージを持つのもよいかもしれません


途中で方針を変えるのは、ぜんぜんかまわないことなので、今の時点で決められる範囲で決めてしまいましょう。


それが方位磁石の役割を果たしてくれます。







参考までに、私自身はどのような思いを持って学んでいたかご紹介します


私の場合、「各テクニックの共通している要素は何かを知る」ということをテーマとしていました。


当時の私を知る人がいたら、何やら食い散らかすがごとく、あっちこっちに顔を出しているように思われたかもしれませんが、それはこのテーマの答えを探そうとしていたからです。


各テクニックの共通要素さえわかれば、自分なりにいろいろアレンジして新しいものを創っていくことができるはずだと考えたからです


そこから得たものを、この「手技療法の寺子屋」で少しずつお伝えしてます。


このテーマを持ち続けることで、私は多少のことがあってもブレずに来れたのだろうと思っています


ですからくどいようですが、自分のスタンスを創りやテーマを決めておくことは、さまざまなテクニックを学んでいく上で本当に大切なことだと思います








私はあれこれ手を出しましたが、もちろんマッサージひとすじとか、スラスト専門というのもあっていいと思います。


また、私は手技療法にこだわっていますが、鍼灸を組み合わせたり、治療機器を用いるのも当然OKです


いろいろなタイプの臨床家がいることは、業界の層を厚くして手技療法を発展させ、多くの患者さんに役立つためにも必要です。


ただ、お山の大将にならないようには注意したいところです(私を含めて…)


そして、いろいろなタイプを選べるからこそ、自分のスタンスを創っていくことがなお大切になってきます (ホントにくどいですね)。







その意識がないばかりに、「いろいろ見聞きしているんですが、どれを学べばいいのか迷っているんです」という方、ときどき見かけます。


真剣に悩み迷っている方もおられますが、なかには「この治療法さえ覚えたら大丈夫」という夢のような話を求めて、あっちこっちを渡り歩いている方もいらっしゃるようです。


これは「青い鳥症候群」と同じで、ちょっといただけないかもしれません。


「いろんなことを勉強はしたんですが、結局何も使えないんです」では悲しすぎます。







真剣に悩んでいるという方、特に臨床に出てまだ間がなく「今の自分にはまだまだ自信が無くて不安です…」という気持ち、確かにわかります。


でも、焦って自分を見失わないで下さい


「自分のスタンスを創るんだ」という気持ちさえ忘れなければ、少しずつかたちになっていくはずです


実は、より精度の高い個別対応の技術がトリートメントでは求められるといっても、手技療法の基本的なところはリラクゼーションやメンテナンスで紹介した内容で習得できています。


(それほど前の2つでお伝えしたことは重要だと思っています


ですから、これまで学び身につけたことを自分の支えにして、着実に進んでいきましょう

手技療法習得へのステップ3‐ トリートメント その1

2009-07-04 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
これまで、技能習得の流れということで「リラクゼーション」「メンテナンス」と進んできました(それもかけ足で)


最後のステップは「トリートメント」です


この段階は、症状の回復や改善を目的としています。


当然ながら同じような症状でも、患者さんそれぞれによって原因は異なっています。


そのためトリートメントでは、より高い「個別対応の技術」が求められることになります。


本来なら治療を行う前提として、適応と禁忌の鑑別をはじめとした「評価」が必要になるのですが、ここではテクニックを習得するということを中心にまとめているので省きますね







トリートメントに相当するテクニックというのは、数え上げればきりがありませんが、それらを実施する上で共通する重要なポイントがあります。


それは「評価によって検出された部位へ、いかに刺激を集中させるか?」ということです



前回のメンテナンスでは「ストレッチを加えた状態から角度を微調整して、最も抵抗が強くて伸びにくい角度を探し」ました。


上述のポイントは、それをより積極的に進めたものといえます。







具体的に脊椎の関節モビライゼーションを例としてあげましょう


脊椎関節モビライゼーションは、脊柱に対して分節(セグメント)的なモビライゼーションを行う、例えばL1-2間など部分的な椎骨間の可動性を回復させることを目的としたテクニックです。


L1-2間に刺激を集中させるにはどうすればよいでしょうか?


ただ単に腰を回旋させればいいのか?





それでは刺激が分散してしまいます





もっとも、身体をテコにしてテクニックを行う場合、L1-2間だけ動かすというのは不可能ですから、実際にはL1-2間が頂点になるように身体を曲げたりひねったりするということを行うわけですが


具体的な手順については専門の書籍をご覧いただきたいのですが、テクニックを行うにあたって常に意識しておかなければならない重要なポイントがあります。


言葉で表現するのは難しいので、イメージでお伝えしますね


下の写真はベルトを持っている状態です。このベルトをただ曲げようとすると、このようになります



全体的に弓なりになって、刺激が分散してしまっています。


これは先ほど書いた、ただ腰を回旋させているというのと同じです。


分節的な刺激とはいえません。







持つ位置はこのままにして、ベルトの右寄りを曲げようとすれば、どのような力のかけ方をする必要があるでしょうか


似たようなことを、みなさんも子どものころ遊び半分でやったことがあると思います。


では、久しぶりに童心にかえってやってみましょう





いかがでしょう?簡単にできますよね





そのときに、自分の身体の状態がどうなっているかよく観察してみてください。


きっと、曲げる部位に意識を集中して、手の角度や力の入れ方をコントロールしているはずです。


このような動かし方をすることで、ねらった部分に刺激が集まってくるわけです。


この意識の仕方、力の入れ方、コントロールの仕方こそ、分節的な脊椎のモビライゼーションで必要なことなのです。


「手に取るようにわかる」とまではいかなくても、何となく私のお伝えしたいこと、感じていただけるでしょうか?







このベルトの例では「曲げる」という一方向のみですが、実際は屈曲⇔伸展・右側屈⇔左側屈・右回旋⇔左回旋という3次元的な方向性の中で決定されます


そうすることで、L1-2間の可動性を回復させる刺激がより高い精度で加わるわけです。


ところがテキストを読んでも、足を曲げて手を引っぱる、などということは書いてあるものの、このような意識の仕方についてはなかなか書いていません。


(あったら勉強不足ですので、ぜひ教えてください)


言葉で表現するのは難しいことなのですが、これこそが重要なポイントです。


テキストどおりやっているはずなのになかなか上手くいかないという方は、このポイントを押さえず、ただ漫然と手を引っぱって、脚を曲げて、身体をひねっている可能性があります。







このポイントは関節モビライゼーションに限らず、ASTRも含めてありとあらゆるテクニックに共通しています。


新しいテクニックを学び、ひとまず手順や型は覚えたものの、いまいち効いている気がしないというときは、ベルト(でも何でもいいのですが)を持ってねらったところを曲げ、そのときの意識の仕方や力のコントロール方法を確認し、それをテクニックに当てはめてみましょう









ASTR 1日セミナー(札幌)のおしらせ

5月17日(日)に札幌でASTRセミナーを開催いたします。

今回のテーマは「腰腹部へのASTR」です。
腰痛の相談は臨床的にも非常に多いものです。腰部は表面的に制限がある場合、座位でのASTRを行いやすいところですが、緊張が強いとなかなか上手くフックできません。そんな時は、下肢や胸郭をテコにするとかかりやすくなります。
また腹部の緊張は持続することによって、それ自体のトリガーポイントにより腰部に関連痛をもたらしますが、腹圧のコントロールが不良になるために構造的な負荷が腰椎にかかり、痛みを起こす場合もあります。
腹直筋・腹斜筋については、どちらかというとそれらを強化するほうが実施されがちです。ところが、いわゆる猫背の姿勢では胸郭と骨盤が接近したまま固定され、それらの筋が短縮して機能障害を生じているのが臨床的には観察されます。
強化するなら、まずは腹直筋・腹斜筋の適度な静止長を確保することが重要ですが、ストレッチをはじめとした通常のテクニックでは、必要な部位に伸張刺激を加えるのは困難な場合もあります。
ピントをより絞った伸張刺激を加えることができるASTRは、そのようなときに非常に有効です。
今回は、そのような腰部や腹部への軟部組織に対するASTRの紹介です。

なお、いつもは2時間のセミナーですが、今回は時間を拡張して一日セミナーとして行います。
各テクニックを、よりじっくりと取り組んでASTRの習得をより確実なものにし、より多くのレパートリーを身につけていただきたいと思います。
興味のある方は下をクリックしてください。


現在、定員に達しましたので、キャンセル待ちでのご案内となります。何とぞご了承下さい。

くつぬぎ手技治療院「手技療法の寺子屋」