今回のシリーズでは私が経験したエピソードをもとに、患者さんとの関係づくりについて考えてきました。
モデルとなったおばちゃんは、はじめは私が近づくのを激しく拒否されました。
おばちゃんの場合、リハビリがどのようなものかを体験する前に、痛い思いをするというイメージが大きく膨らみ、自分がつくったそのイメージに対して恐怖感を抱いて興奮していらっしゃったのだろうと思います。
このようなケースは、リアクションの大きい小さいは別にして、けっこうあるのではなでしょうか。
実際に行ってみたらさほど大したことはない、受け入れられる範囲の痛みであったとしても、やってみるまではやはり怖いというのも無理ありません。
だって弱点を相手にみせるわけですから。
「案ずるより産むが易し」とは、実際に産んでからこそ言えることで、産むまでは不安はつきものです。
その不安をいかに和らげ、リハビリを進める上で心理的な受け入れがスムーズにいくように、働きかけ方を工夫していくというのも、私たちの大切な仕事になります。
私はおばちゃんとの関係を作っていくために、治療の意思の確認、気持ちの受容、コミュニケーションの蓄積、触診による身体への接触へと順を追って進めていきました。
それに伴い患者さんとの距離も、社会的距離(3.6m~1.2m)⇒個人的距離(1.2m~45cm)⇒親密距離(45cm以内)へと近づいていくことができました。
対人距離の近づきは今回の場合、信頼関係の高まりを表すものでもあったといえるかもしれません。
(信頼関係の高まりといっても、マイナスでスタートしたのが±0になったというわけですが…)
セラピストと患者さんが信頼関係をつくるプロセスの中で、両者をつなぐ媒体となるものは、態度・言葉・触れることの3つではないかと思います
患者さんはセラピストの態度や言葉づかい、触れ方をとてもよくみていらっしゃると私は感じます。
ところがセラピストは、どちらかというと評価から治療のプロセスを重視します。
それが仕事ですから仕方のない面もあるかもしれませんが、あまりにも態度・言葉・触れることに無頓着だと、関係に溝が生まれたり、ぎくしゃくする原因になるかもれません。
今回のケースでも患者さんとの関係を作っていく上で、その3つが大きな役割を果たし、幸い上手くいくことができました。
だからといって、丁寧な対応をしていればOKというわけでは必ずしもありません。
たとえばセラピストが、笑顔でニコニコしながら好意的に 「前回の治療のあと、どうでしたか。調子はよかったですか?」 などとたずねたとします。
このような態度で接された時、患者さんによってはさほどの結果が出ていなくても、嫌われたくないという心理が働いて 「ええ、よかったです」 とおっしゃる方もいるでしょう。
反対に、セラピストの態度を押しつけがましく感じてかえって機嫌を損ね、わずかに変化しているにもかかわらず、「いいえ、別に」 と答える方もなかにはいらっしゃるかもしれません。
この場合、患者さんに対して失礼な態度をとっているわけではないので、誤っているとはいえないでしょうが、それでも正しい情報が入らない可能性があります。
ですから、このようなときは目もとの力を抜いて軽くほほ笑むていどの表情をし 「ご様子はいかがですか」と、ごくふつうの淡々とした態度で、偏った反応になりにくいようなたずね方をするほうが、より望ましいのではないかと思います。
私たちが患者さんをみるということは、患者さんも私たちもみているということになります。
私たちは、態度・言葉・触れることが持つ意味と影響について、よく考えなければいけないと思います。
最近では学校や職場で、コミュニケーション技法の講義や研修なども行われていますが、そのような機会を持たず、経験だけで現場をこなしているという方もいらっしゃるでしょう。
もちろん経験はとても重要なのですが、何気なく交わしている患者さんとのやりとりを振り返り、その意味を振り返ることはとても大切だと思います。
経験を積んで現場に慣れ、その中で何気なく使っていた言葉や態度が、じつは患者さんとの関係にマイナスの影響を及ぼしていたという可能性もあるのではないでしょうか。
経験を積んだ方ほど、いちどセルフチェックしてみる必要があるかもしれません。
一日でたくさん交わされている、コミュニケーションのすべてをチェックするのは不可能です。
そのなかのスポット的なもの、ほんの数分間の出来事だけでも、振り返ってみてはいかがでしょう。
今回のエピソードが、そのためのお役に立てば嬉しいです。
おばちゃんもきっと喜んでくださると思います。
モデルとなったおばちゃんは、はじめは私が近づくのを激しく拒否されました。
おばちゃんの場合、リハビリがどのようなものかを体験する前に、痛い思いをするというイメージが大きく膨らみ、自分がつくったそのイメージに対して恐怖感を抱いて興奮していらっしゃったのだろうと思います。
このようなケースは、リアクションの大きい小さいは別にして、けっこうあるのではなでしょうか。
実際に行ってみたらさほど大したことはない、受け入れられる範囲の痛みであったとしても、やってみるまではやはり怖いというのも無理ありません。
だって弱点を相手にみせるわけですから。
「案ずるより産むが易し」とは、実際に産んでからこそ言えることで、産むまでは不安はつきものです。
その不安をいかに和らげ、リハビリを進める上で心理的な受け入れがスムーズにいくように、働きかけ方を工夫していくというのも、私たちの大切な仕事になります。
私はおばちゃんとの関係を作っていくために、治療の意思の確認、気持ちの受容、コミュニケーションの蓄積、触診による身体への接触へと順を追って進めていきました。
それに伴い患者さんとの距離も、社会的距離(3.6m~1.2m)⇒個人的距離(1.2m~45cm)⇒親密距離(45cm以内)へと近づいていくことができました。
対人距離の近づきは今回の場合、信頼関係の高まりを表すものでもあったといえるかもしれません。
(信頼関係の高まりといっても、マイナスでスタートしたのが±0になったというわけですが…)
セラピストと患者さんが信頼関係をつくるプロセスの中で、両者をつなぐ媒体となるものは、態度・言葉・触れることの3つではないかと思います
患者さんはセラピストの態度や言葉づかい、触れ方をとてもよくみていらっしゃると私は感じます。
ところがセラピストは、どちらかというと評価から治療のプロセスを重視します。
それが仕事ですから仕方のない面もあるかもしれませんが、あまりにも態度・言葉・触れることに無頓着だと、関係に溝が生まれたり、ぎくしゃくする原因になるかもれません。
今回のケースでも患者さんとの関係を作っていく上で、その3つが大きな役割を果たし、幸い上手くいくことができました。
だからといって、丁寧な対応をしていればOKというわけでは必ずしもありません。
たとえばセラピストが、笑顔でニコニコしながら好意的に 「前回の治療のあと、どうでしたか。調子はよかったですか?」 などとたずねたとします。
このような態度で接された時、患者さんによってはさほどの結果が出ていなくても、嫌われたくないという心理が働いて 「ええ、よかったです」 とおっしゃる方もいるでしょう。
反対に、セラピストの態度を押しつけがましく感じてかえって機嫌を損ね、わずかに変化しているにもかかわらず、「いいえ、別に」 と答える方もなかにはいらっしゃるかもしれません。
この場合、患者さんに対して失礼な態度をとっているわけではないので、誤っているとはいえないでしょうが、それでも正しい情報が入らない可能性があります。
ですから、このようなときは目もとの力を抜いて軽くほほ笑むていどの表情をし 「ご様子はいかがですか」と、ごくふつうの淡々とした態度で、偏った反応になりにくいようなたずね方をするほうが、より望ましいのではないかと思います。
私たちが患者さんをみるということは、患者さんも私たちもみているということになります。
私たちは、態度・言葉・触れることが持つ意味と影響について、よく考えなければいけないと思います。
最近では学校や職場で、コミュニケーション技法の講義や研修なども行われていますが、そのような機会を持たず、経験だけで現場をこなしているという方もいらっしゃるでしょう。
もちろん経験はとても重要なのですが、何気なく交わしている患者さんとのやりとりを振り返り、その意味を振り返ることはとても大切だと思います。
経験を積んで現場に慣れ、その中で何気なく使っていた言葉や態度が、じつは患者さんとの関係にマイナスの影響を及ぼしていたという可能性もあるのではないでしょうか。
経験を積んだ方ほど、いちどセルフチェックしてみる必要があるかもしれません。
一日でたくさん交わされている、コミュニケーションのすべてをチェックするのは不可能です。
そのなかのスポット的なもの、ほんの数分間の出来事だけでも、振り返ってみてはいかがでしょう。
今回のエピソードが、そのためのお役に立てば嬉しいです。
おばちゃんもきっと喜んでくださると思います。
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