対局日誌

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キーワードで解く初歩の死活(書評)

2004-12-17 04:49:47 | 棋書


キーワードで解く初歩の死活(小阪秀二著:日本棋院)

長く続いた、小坂さんシリーズの書評もこれで最後。
本書は小阪さんの囲碁の本における絶筆です。

テーマは死活。
死活については、既に紹介した三冊でも時折、触れていますが、今回はそれを系統的にまとめた内容になっています。

この本については、このブログに初めてコメントしてくださったまえださんが、
>私たちはつい死活に「コツ」を求めてしまいますが、
>結局のところ「ヨミ」以外で死活を解くことはできないんですよね。
>この本も「キーワード」に拘ってるわりに、
>「キーワード」では解けないことを露呈している本だと思うのです。
という鋭い指摘をなされています。
この考え方は私にありませんでした。

しかしそのまえださんの指摘を踏まえた上で、尚、私はこの本を良い本だと思っています。

例えば詰碁を解く際、私たちは読んでも無駄なところを、経験上読みから外すわけですが、完全な初心者ならば、石を置けるところ全部を読んでしまうかもしれません。
361の交点が19路盤にはあるわけですから、本気でそんなことを考えたら、途方にくれてしまいますよね?
まぁ、これは極端な例ですが、ある程度、「ここがポイントかな」というコツがわかるまで、
かなり無駄な読みを繰り返すことを強いられる。
その無駄な読みがトレーニングであり、大事なのは承知していますが、「頑張ろう」と思えるレベルに至るまでの労力は、かなりのものがあり、それがみんなを詰碁から遠ざける一因になっている、というのはあると思うのです。

私自身は詰将棋にある程度慣れていましたので、むしろ詰将棋に比べて詰碁は楽だったのですが、詰将棋に取り組む際、王手がかかる場所を全部を読んでいた頃を思うと、より置ける場所が豊富な詰碁を白紙から考える辛さ、というのはわかるような気がします。

そこで、その「とりあえず読みを省略できる部分」、「とりあえず読んでみるべき部分」を理屈で、出来るだけ説明してしまおうというのが本書の狙いだと思います。
「とりあえず」というのがポイントで、多分、小坂さんはキーワードで「全部解ける」ということを本書では目指していないと思います。
結局は自分で読む力をつけなければいけない、というのは良くわかっていたはず。
しかし、ことによってはまえださんの仰る通り「全然解けないかもしれない」けど、解くための「道筋の第一歩」をこのキーワードから見つけて貰い、少しでも詰碁が苦痛でなくなるようにしたい、詰碁に親しんで欲しいというのが、小坂さんの願いだったのではないでしょうか?

将棋のわかる人には、「頭金を覚えたら、詰みが見えやすくなってきませんでしたか?」と問いかけたい。
本書は囲碁における「頭金」のようなポイントを解説しているのです。
そして同時に「頭金だけ」では詰将棋は解けませんよね?

あるいは囲碁の話で似た例をあげると、この本は詰碁における「囲碁格言」のようなものを学習する本だと、捉えてもいいかもしれません。
「囲碁格言」は常に成立するとは限らないけれど、方針を立てる指針にはなる。
そういう意味です。

以上より、私は「詰碁が苦手だけれども、やらなきゃダメだな」と感じている初級者に、この本を薦めます。
また詰碁も50題ほど掲載されているので、問題集として買っても損はないと思います。
欠点としては「これならわかる囲碁入門」と同じ登場人物の、没個性的な会話が、私はやや退屈だったことでしょうか。
詳しくは「これならわかる囲碁入門」の書評をご覧ください。

余談ですが「詰碁を解くカギ」(山海堂:橋本宇太郎著)という本を立ち読みしたのですがどうやら「キーワード~」と同じ目的の本のようです。
こちらは上級者向けで、「キーワード~」の第2のキーワード「形」の説明を、不十分と感じる方は一読されてみてはいかがでしょうか?

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