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『「中国の悪夢」を習近平が準備する』福島香織著(徳間書店)暗愚の独裁者が政権を握る時世界は巨大な悲劇に巻き込まれる

2017-12-01 | 中国の歴史・中国情勢
微妙な諸矛盾を、次の任期に習近平が克服できなければ中国は「小さな戦争」に打って出て国内を引き締める危険性がある

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凡庸でとらえどころがなく、これという決断力がないように見えた。豪腕な指導力が決定的に欠け、稀薄な印象があった習近平は思いのほか、野心家だった。中国歴史上、最弱の皇帝になるだろうと予測されたが、どっこい。本人は「毛沢東とならぶ大指導者」を僭称する。なにしろ党規約に「習近平思想」を認めさせたくらいの政治力量はあるようだ。

しかし、この皇帝の暗愚さはその独裁体制を権力基盤と誤解しており、そのまま行くと世界は巨大な不幸と惨劇に巻き込まれかねないだろう、とするのが著者・福島香織氏の立場である。

習近平が腐敗摘発に乗り出したのは、彼自身が清廉潔白ではないにも拘わらず贅沢を嫌うかのような演出をこなしつつ、朋友の王岐山をつかって、実際は政敵の排除をするのが反腐敗キャンペーンだった。「蠅から大虎まで」容赦はしないと最大の政敵だった薄煕来を手始めに、共産主義青年団のホープ孫政才までも葬った。

江沢民の掲げた「三個代表論」とは、てっとり早く言えば、資本家と結び付きを認め、実態としては社会主義を有耶無耶にして、皆が豊かになろうという発想に基づいた。

「だが、党の権力と資本の結び付きは三つの潜在的リスクを生み出した。一つは、根深い腐敗構造を生み、共産党の腐敗は、農民・労働者を中心とする人民の党という建前を失わせることになった。二つ目は、貧富の格差によって、搾取される農民・労働者等大衆と、共産党権力は人民を最大の潜在的敵として恐れるようになり始めた。三つ目は、共産党一党独裁体制と自由経済のシステムの根本的な相性の悪さによる矛盾の拡大によって、政治改革なしの持続的経済成長が難しくなり、経済成長が維持できなくなった時点で、共産党の正統性が失われる危機が見えてきた」(29p)。

不安が増大し、言論空間をさらに狭窄にしてネット監視団を置き、人権派弁護士を片っ端から逮捕拘束し、先端技術を本来の人類と文明の発展に使わず、人民の監視に転化しようした。

「習近平の治国理政思想の行き着く先は、こうした人民を家畜のように管理する社会、SF小説にでてくるようなディストピアである危険もある」(155p)

そしてアンタッチャブルだった軍人事に着手し、習近平のお友達、昔の部下を才能の有無に拘わらずトップに配置した。

こういうやり方は既存勢力に不満を与えることになるだろう。

「習近平の軍制改革は、単なる改革を超えて、習近平の私兵化に近い(中略)。軍権を掌握したどころか、むしろいつ誰が自分を裏切るかも知れない、という疑心暗鬼になり、さらに有能な軍人を粛清していった。おかげで誰も習近平体制批判を公言しなくなったが、怨嗟は水面下に潜り込んだ。太子党・紅二代の解放軍将校たちは、父親の勇名を利用し、そうした水面下の軍内不満分子を煽動して、いつなんどき政変を企てるかもしれない」(171p)と福島氏は軍事クーデターの可能性にも触れる。

ずばり習近平政権の権力構造の奧底に容赦なく手を突っ込んで問題点を白日に晒してみせた豪快な分析である。

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