与党候補は「疑惑の百貨店」とされながらも、47・83%もの票を集めた。このことは、韓国国民の中の「左翼(反米・反企業)志向」の強さを示す証左として、留意していく必要がある。
1位と2位の得票差は0・73ポイントしかなかった。そこを危ぶむ声も日本にはあるようだが、選挙とは「1票差でも勝ちは勝ち」の世界だ。
前回の大統領選で、文在寅(ムン・ジェイン)氏の得票は41・08%。過半数に遠く及ばなかったが、就任するや絶大な大統領権限を振るってきた。
尹氏も2カ月の「政権引き継ぎ期間」を経て、5月10日には新大統領に就任し、絶大な大統領権限を手にする。
しかし、国会では、文与党(=尹氏にとっては野党)が議席の3分の2を占めている。今回の大統領選と同時に実施された国会議員補欠選挙では、「国民の力」が5戦全勝した。だが、「ほぼ3分の2」の壁の高さは変わらない。
おそらく尹錫悦政権は内閣の構成からして、国会の抵抗に遭いスムーズには進められない。
国会だけではなく、裁判所、軍、警察、情報機関の上層部も、文政権の意向に沿った「左翼あるいは進歩派」が握っている。各級の選挙管理委員会、国営通信社や国営(公営)放送も同様だ。官公組織の上層部に根を張った左翼人脈を一掃するだけでも2年ぐらい要するかもしれない。
日本では、韓国大統領選で保守派が勝てば、対日を含む外交・安保政策、国内経済政策などが大転換するとの見方が多いようだが、大間違いだ。
尹新大統領は新しい政策を、いくらでも口で語ることができる。岸田文雄首相と電話会談をすれば、それなりの新展望が出てくるだろう。
しかし、韓国側では、国会の承認を必要とするような措置は、少なくても2024年4月の次期国会議員選挙まで、何一つとして実現できない(=大統領に国会を解散させる権限はない)。現に「共に民主党」幹部は選挙前、「尹錫悦が当選しても、何もできない〝植物大統領〟で終わるだろう」と嘲笑した。
5月9日までは、文氏が「絶大なる大統領権限」を握り続ける。彼の手中には、次期大統領予定者すらも逮捕する権限を持つ「高位公職者犯罪捜査処」がある。選挙無効を宣言できる中央選挙管理委員会も彼の手中にあることも忘れてはならない。
2017年5月15日、韓国・JTBCによると、第19代韓国大統領に就任した文在寅(ムン・ジェイン)氏は政権引き継ぎ期間が一切ないまま、新政権をスタートさせることになった。
さらに、朴槿恵(パク・クネ)前政府の大統領府のシステムには各種の報告書などが記録されておらず、会議室の予約内容など実際の業務に役立たないものばかり残されていることが明らかとなった。