東アジア歴史文化研究会

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「解決されない北朝鮮の日本人拉致問題 憲法改正を急ぎ国際社会と攻勢続けよ」(櫻井よしこ)

2017-12-24 | 日本の安全保障
『週刊ダイヤモンド』2017年12月23日号より転載

拉致被害者のご家族にとって拉致された子供や兄弟と会えないまま、自分たちの生命が尽きてしまうのは、本当に悲しいことだ。

12月12日、増元るみ子さんの母、信子さんが90歳で亡くなった。娘の写真を部屋に飾り、お花やお茶を供えるのを日課とし、「一目会いたい」と呟くのが信子さんだったと、るみ子さんの弟の照明さんは語る。照明さんはいま、家族会の事務局長だ。

るみ子さんは24歳で拉致された。花にたとえれば香しく咲き始めたばかり、人生において最も美しく成長する若さの真っ只中にあったるみ子さんは、いま64歳だ。どのように過ごしているだろうか。

苦労し、悲しい思いを沢山重ねてきたに違いない。死ぬ前に一度でいいから抱きしめたい。頭を撫で、頬にさわり、「どんなときも忘れたことはなかったよ」と言ってやりたい──信子さんの「一目会いたい」という言葉にはそんな思いが凝縮されていたに違いない。

るみ子さんの父の正一さんは15年前に亡くなった。そのときに照明さんに言い残したという。「わしは日本を信じる。お前も日本を信じろ」と。

日本は拉致被害者を40年間も救出できずにいる。いま、北朝鮮有事がいつ起きてもおかしくない事態に直面している。そのとき、拉致された日本人を誰が助けるのか。米軍でも韓国軍でもあるまい。自衛隊しかない。

しかし自衛隊は有事の際、北朝鮮に行くことさえできない。2年前の平和安全法制で有事の際、自衛隊は北朝鮮に上陸できることになった。しかし、当欄で指摘してきたように、自衛隊上陸には、(1)当該国(北朝鮮)政府の了承、(2)北朝鮮が平和な状態にあること、(3)北朝鮮軍と共同行動を取ることという三つの条件がつけられている。これでは自衛隊は北朝鮮上陸もできない。

従ってるみ子さんも、るみ子さんと同時に拉致された市川修一さんも、横田めぐみさんも救出できない。国家としてどうするのか。米国に「どうしてもお願いします」と、頼むのか。米国も、軍事作戦の最中に頼まれても困るだろう。つまり、わが国は有事によって命が危ぶまれる国民を救出することができない国なのだ。

正一さんは息子の照明さんに「お前も国を信じろ」と遺言した。一方、めぐみさんの母、早紀江さんはかつて問うた。「今の日本は国家でしょうか。さらわれた国民を何十年も取り戻すことができない日本は国家と言えるのでしょうか」。お二人は、日本国政府よ、しっかりしてくれ、日本国民よ、政府が国民を救えるようになるために、しっかり考えてくれと、訴えているのだ。

日本は何十年間も北朝鮮にコメや資金を渡し、譲歩してきた。その度に騙され、何も解決されなかった。その間米国は幾度も自国民を救出した。両国の違いは何か。自国民はなんとしてでも救い出すという決意と、軍事力の有無ではないか。北朝鮮は最終的に米国が軍事力を行使するかもしれないと恐れているのである。

日本は軍事力の行使以前に、まともな軍事力の保持さえ憲法で禁止している。北朝鮮は日本を国などとは思っていない。恐れてもいない。その意味で、拉致が解決されない理由のひとつは間違いなく現行の日本国憲法にある。憲法改正は激しく変化する国際情勢に対応するためだけでなく、国家意思を積極的に示し、拉致問題解決につなげるためにも必要なのだ。

12月11日、日本は国連安全保障理事会の議長国として北朝鮮の人権問題を取り上げた。参加15カ国中、少なくとも9カ国が日本人拉致に言及する初めての状況が出現した。国際社会に拉致事件の酷さがより広く認識された結果である。こうして北朝鮮に迫っていくのがよい。国内では憲法改正を急ぎ、国際社会では積極攻勢を続けるのだ。

『週刊ダイヤモンド』2017年12月23日号

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