こんな気持ちでいられたら・・・一病理医の日々と生き方考え方

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医療を哲学的に考える(16)・・・医療経済の観点から

2014年05月19日 | 病理のこと、医療のこと、仕事のこと
このテーマ、このまま放っておくと自然消滅ということになりかねないので、適当なところでいったん完結を目標にしようと思う。これまで、いろいろな観点から“医療”というものを考えてきたが、結局のところ漠然として捉えどころの無いまま今日に至っている。実をいうと、最近では、本格的な哲学(入門)書に手を出してもみたものの、“医療”というある意味“実業”を哲学的に説明すること自体、無駄な様な気がしてきている。

その理由の一つとして、医療にはお金が介在するということがある。



ボランティアだけで医療を行うことができる医者がはいない。金がなくては医療行為そのものを行うことができないわけで、それは仕方の無いことだし、薬も出してくれない医者に誰がかかりたいと思うだろう。哲学というのはもっとこう、純粋なものであり、少なくともお金の介在するようなものでは無いような気がするのだ。だから、医療というものに普遍性を持たせて定義することが果たして可能であろうかと思うのだ。


先日、ビットコイン(Bitcoin)、というインターネット上の仮想通貨の取引所が破綻したという騒動があった。日本政府はこれに対して、「通貨ではない」との公式見解を示した。通貨というものは国家が命がけで守るものであるということがよくわかった。そして、通貨以上に大事なものが国民の生命である。だから、国家は高い金をかけて医療者を養成し、医療者を通じて病気の治療を行う。

これが、『医療とは国家が医療者を通じて行う生命のサービス』という、言葉に連なっていく。
日本の医療費は30兆円をゆうに超え、毎年1兆円ずつ増加しているという。団塊の世代の引退により、労働人口は激減しているのに、出て行く金はどんどん増えている。国家予算の半分が医療に費やされているというのは果たして許されることなのだろうか。医療技術は日々進歩し続けているが、その技術にも限界が来ている。所詮人間が行うことなので、限度があるのは当然である。しかしながら、薬はどんどん進歩している。とくに、抗がん剤関連の進歩は、分指標的薬剤の開発ラッシュにより劇的なものとなった。こういった薬剤の使用について検討するという点で病理医も無関係でいられない。



「この薬を使えば、治るかもしれません」自分では金を出さない医者が、新薬を治療適応外の疾患に対して使いたがるのをしばしば見る。確かにそうだが、ではなんのために使うのか、とも思う。本当に患者のためか。その薬を使うことができたら、“自分が”名医の称号をうることができるからではないか。そんな可能性は無いか。チャレンジングな製剤の投与は、効果がなくて当たり前、効果があったら儲けもの、といったような側面がある。ただ、患者の側にも、わらをもつかみたくなる気持ちがある。私だって、生命予後の悪い病にかかってしまったところで、「最近、あの薬が、この症状にも効果があるという話があるんですよね、保険適応外なので自費になりますが」と言われたら、相当悩むだろう。
子供二人が無事家を出て行ってくれ、コロもナイトも面倒を見る必要がなくなってからなら別に心配は無いが、それまでは死ぬわけにはいかない。というか、できれば生きていなくてはいけない。
そうすると、たとえ高額であってもその薬を自費扱いで買い求めることとなる。でも、その薬を買うことができなかったらどうしようもない。
しばしば物語にもなるように、薬は昔から高価で、容易に買い求めることのできるものではない。



これは、薬剤に例をとった話だが、医療には金が介在する。これは、古来常識的なことである。『医は仁術ならず、算術なり』などと、儲け主義の医者を揶揄して言うが、どの程度まで儲けてよくて、どこからは儲けてはいけないなどということは誰にもわからない。
“哲学”というものが、ソクラテス、プラトンの時代に始まったものとすると、それは紀元前400年頃である。“医聖”ヒポクラテスの生きた時代と同じだ。
ヒポクラテスの誓いの対象は“医療”を生業とする“(よき)医者の心得”である。ということは、“医療”は“哲学”に先んじて存在していたことになる。そして、“医療”には様々な矛盾や危険がすでに包含されていたことを示している。

医療と経済の写し鏡
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国民医療費、過去最高の38.5兆円 1人30万円突破 (日経新聞 2013/11/14)

 厚生労働省は14日、2011年度に病気やけがの治療で全国の医療機関に支払われた医療費の総額(国民医療費)が、前年度比1兆1648億円増(3.1%増)の38兆5850億円だったと発表した。国民1人当たりでは9700円増(3.3%増)の30万1900円で、30万円を初めて突破。いずれも5年連続で過去最高を更新した。高齢化が進んだ上、医療技術が進歩して治療費が膨らんだのが主な原因。国民医療費が国民所得に占める割合は11.1%だった。年齢別では、65歳以上の医療費が21兆4497億円で全体の55.6%を占めた。75歳以上に限ると13兆1226億円で34.0%だった。医療費を賄う財源の内訳は、国民や企業が負担する保険料が18兆7518億円で全体の48.6%。患者の自己負担は4兆7416億円で12.3%、国と地方を合わせた公費は14兆8079億円で38.4%だった。診療種類別では、医科診療が27兆8129億円で全体の72.1%。薬局調剤は前年度比7.9%増と高い伸びで6兆6288億円となり、歯科は2兆6757億円だった。国民医療費は、保険診療の対象になる病気やけがの治療に掛かった費用を推計する。保険外の診療や健康診断、正常な出産などの費用は含まれない。労災分などを含まず、国民医療費の98%程度をカバーする概算医療費は12年度分が既に公表済みで、38兆4千億円に達している。〔共同〕

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1 コメント

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Unknown (組織防衛の哲学)
2015-01-11 18:47:53
医療事故を隠蔽するのに裏金を使う事は哲学しないの?
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