こんな気持ちでいられたら・・・一病理医の日々と生き方考え方

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医療を哲学的に考える(15)・・・医療者の視点からの医療とは その2

2014年03月01日 | 病理のこと、医療のこと、仕事のこと
さて、前回、「医療者によって患者一人一人は「症例」として相対化される。」というように考えた。



前回は、小説で考えてみたが、今回は医療漫画の金字塔、手塚治虫作『ブラックジャック』で考えてみたい。
といっても、ブラックジャックを一番読んだのは小学生の頃で、通っていた塾に置いてあったからという程度だった。その後もちょくちょく読んでいたが、ファンと言うほどではない。
そんな、不肖コロ健がブラックジャックについて知っているのは、医師免許を持っていないこと、医学知識は豊富で手術の技術は天下一品であること、金持ちからはそれ相応の治療費をとる、ということを軸にして話が展開されるということぐらいだ。

この3つの点から医療をみてみる。もちろん、現代の話としてである。

1)医師免許を持っていないのに医療行為をしているということ・・・どれほど優秀であっても、医師免許が無くては日本国内で医療行為をしてはならない。医療というものは国が担保して行っている国民への最大のサービスである。自由診療であっても、医療行為は国によって質が担保されていなければいけない。結局のところ、ブラックジャックはヤミ医者として一生を送るのだが、このことに対して喝采を送る人が多かった。おそらくは、「実力さえあれば何を行ってもいい』という考え方があるのだろうか。
2)医学知識は豊富で手術の技術は天下一品であるということ・・・自分の家を建てるときに、腕はいいけど愛想の悪い大工に頼むか、それとも腕は悪いが愛想がいい大工、どちらに頼むかという話がある。こと手術”だけ”ということになったら腕のいい医者に頼む人がほとんどだろう。だから、手術の技術が天下一品であるブラックジャックは許された。
3)金持ちからはそれ相応の治療費をとる・・・ブラックジャックは自らの技術料を的確に判断していた。だから、とれるところからは“適正”にとったといえる。ブラックジャックという漫画は、医療行為がお金に換算されうるものだということ青少年に知らしめてくれた。そして、ブラックジャックを通じで医者というのが金を稼ぐには手っ取り早い職業の一つであるということを知った、青少年は医者を目指すことになった。



ブラックジャックという漫画は、手塚治虫という医師であり卓越した画力をもった漫画家によって描かれたことにより、医師というもののあり方というのがリアルに表現された。
私にしても、ブラックジャックを読んで少なからず影響を受けた年代である。ある点では、内科医である父よりも考えさせられたところもあった。だけども、ブラックジャックのような外科医にも父のような内科医のいずれにもならずに、病理医になった。
だが、病理医になってわかったのは、ブラックジャックのような病理医がいてもおかしくなく、病理医も臨床医と同じで、医者という立場にあるということに違いはなかった。

日本の医療保険制度は国家財政を圧迫するほど負担の大きいものではあるけど、そのなかで働いていてつねづね思うのは、医療保険というものに雇われているということ。
ブラックジャックのような医者がいて悪いとはいえないけれど、彼がきちんと医師免許を取って市中病院で日々難しい手術をこなし、時としてVIPの手術を行う、というような展開が理想的であると思うのだが、どうだろう。




『医療とは国家が医療者を通じて行う生命のサービス』


アッチョンプリケ
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