タイ国の洪水のニュースが連日放送されています。
そのニュースで、日本を代表する企業がこれほどまでにタイ国に進出し、それも重要な役割を担った製品を作っていることを知ることとなりました。
この地はアジアのデトロイトといわれるとのことで、トヨタをはじめ、ホンダ・日産・三菱自動車が操業停止となり、IT関連としてはハードデスクの世界的シェアを有しており、富士通・ソニー・パナソニックなどが深刻な被害を受け、その他新日鉄・JFEなどの鉄鋼関連も大きな被害を受け、日本の産業界にも深刻な打撃を受けているとのことです。
15年ほど前、私は今回の洪水の中心地・アユタヤからバンコックまでをチャオプラヤ川(その当時はメナム川と呼ばれていました)の船下りを楽しんだ記憶があります。
敬けんな仏教国であるタイは、川沿いにパゴタ(仏教寺院)が林立し、桃源郷を旅しているような穏やかな印象を持ちました。
その旅行は一応視察旅行であったため、進出する日本企業も視察したのですが、特に印象深かったのは日系の自動車工場で、一応ラインにそって自動車の組み立てをしているものの、手際といいスピードといい時代遅れの手工業の感は否めず、日本企業の本格進出にはまだまだ先!という印象を持ち、タイには近代文明など似合わないさえ思ったものでした。
あれから15年、世界は劇的に変りました。
経済のグローバル化が急速に進展し、日本企業の経営戦略は技術と企画・プロデュースをするものの、中国や東南アジアなどの人件費などのコストの低い国で生産し、世界に向けて販売するというビジネスモデルが勝利の方程式として確立しました。
たとえば日本の工場労働者の月給は20万円程度なのに対し、東南アジアでは5万円以下とすれば、海外への工場進出は経営的視点で見れば必須なことであり、タイ国でのこれほどまでの日本企業進出はまさにそのことを証明しているのではないでしょうか。
そんな状況の中で、もうひとつ重要なファクターが加わりました。それが円高です。
未曾有の円高は、グローバル化をさらに加速させます。
円高はメリットとデメリットがありますが、メリットを最大限生かしていくことこそ企業発展の必須条件とするならば、具体的には外国企業の買収や提携、工場や販売拠点の海外進出などが加速されると思われます。
私は洪水被害が復興した頃、たとえば来年の今頃にもう一度タイ国に旅したい、それも昔と同じコースをめぐりたいと思っています。
あの旅が私の心に深く刻み込まれており、その感動を再度味わいたいことと、これほどまでに産業発展を遂げたその理由が知りたいからです。
古都アユタヤから船に乗り、ひたすらチャオブラヤ川を下り、バンコクまでの船旅をし、古き良さを残したままの景色が、どのように変化したのか。
微笑みの国といわれた謙虚さと暖かさの人心が、どのように変化したのかを。
文明という洪水の中で、流されたもの、流れ着いたものを、この目でしっかり見てみたいのです。
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