私の好きなTV番組は、なんといっても「ローカル路線バス乗継の旅」で、地図を片手に2時間の番組を食い入るように観てしまいます。
これはテレビ東京系列の土曜スペシャルで放送されている不定期の旅番組で、俳優・大川洋介と漫画家・蛭子能収、それと女性ゲスト(番組ではマドンナと言います)の3人が繰り広げる珍道中で、路線バスを乗り継いの旅番組です。
旅番組といっても、この番組の特色は目的地への到達が至上課題で、たえず次のコース・次のバスへと知恵と情報を集中させて、一歩でも目的地に近づく必死の奮闘で、旅番組につきものの有名な観光地、名物の食事の紹介などは二の次三の次となるわけです。
だからこそ幸運と不運があり、発見があり、そしてそこに暖かい人とので出会いがあり、美しい日本の風景があるのです。
この番組の旅ではルールがあります。
●.3泊4日で目的地に到達すること。 ●.路線バスだけで行くこと。●.携帯電話は使用禁止のこと。
ということで、電車や高速バス・タクシーは乗れなく、「これから先はバスはありません!」と冷たく言われれば、歩くしかないのです。と
とはいえ路線バスなどは日本全国・網の目のように張られているとお思いでしょうが、実態はそうではないのです。
電車が走る主要ルートはバス路線などないですし、人口の少ない過疎地は採算が取れないためここもバス路線がなく、1日数本の村営のコミュニティバスに頼るしかないのです。
また県境の峠道などは、バス会社の管轄の境でもあり、次のバス会社のバス停まで歩くしかないのです。
たとえば日本橋→京都の番組では、東京・藤沢間は湘南電車で1時間弱ですが、路線バスだけでは、路地から路地とバスを乗り継ぎ、朝日本橋を出て夕闇が迫る時間になって藤沢に着くという、それだけ路線バスの旅は大変なのです。
話変わって私の旅は、絵の素材を探すことが目的の旅です。
上の絵は江の島周辺を小さな旅をした折、竜口寺の山門でこの風景に出合いました。
明日からお祭りとのことで、電気屋さんが祭提灯をセットしているところですが、この風景を通して祭りを楽しみにしているワクワクした気持ちが表現できたのではないかと思います。
もしこの山門が普段の山門だったら、私はたぶん描かなかったでしょう。
つまり山門が人前には見せたくない化粧中だったからこそ、私はその飾らない姿・素直な姿が絵を描く動機づけとなったのです。
TV番組「ローカル路線バス乗継の旅」の面白さと、私の絵のテーマ探しは共通点があります。
それは飾らない、ごく当たり前の姿こそ面白く、そして美しいということだと思います。
通常の旅番組はシナリオが前もってできていて、その筋書の中でタレントが大げさに感動したり、美味しさに絶賛したりの芝居が視聴者に見え見えで飽きてしまい、ちっとも感動しなくなりました。
しかしこの旅番組はドキュメンタリーそのもので、ハラハラドキドキで視聴者だけでなく、出演者もその先が全く読めない、出会いと発見、運と不運ののぶっつけ本番のリアリティがとても面白いのです。
私も「毎日が発見」の人生を、絵を描くことを通して歩みたいものです。