NHK連続ドラマ「カーネーション」を観ることが日課になっている私ですが、このドラマは世界的ファッションデザイナーとなったコシノ3姉妹を育てた母親の一生をテーマにしたフィクションドラマです。
このドラマの面白いところは、可能な限り忠実に再現していることで、主役の小篠綾子はドラマでは小原糸子となり、長女のコシノヒロコは優子、次女のジュンコは直子、末っ子のミチコは聡子と名前こそ違うのですが、故郷の岸和田や、戦前・戦後の時代背景、ファッションの変遷なども忠実に描かれており、私はドラマを見ながらドラマとして楽しむことよりも、実際のコシノ3姉妹がなぜあれほどまでに飛躍できたのか?その原点となるものを探り続けることに興味を持ちました。
その中で母・糸子は子育てなどにはほとんど興味や関心すらなく、その分洋服作りの仕事に全エネルギーを集中させるのですが、3人の子供たちはそんな母を絶対的に尊敬しており、三人三様の視点で母の行動を理解しようとすることが才能を開花させるヒントとなり、ひいては世界的デザイナーとして飛び立つきっかけとなったことでした。
しかし1人のデザイナーが世界から評価を受けることすら大変なのに、どうして3人すべての姉妹が世界的デザイナーとして飛び立つことができたのでしょうか?
私は母のすざましい生き方を通して、ある重要なメッセージを子供たちに発信し、そのメッセージを具現化することに大きな喜びがあることを知ったからこそ、世界に羽ばたくことが出来たと確信したのです。
母が送ったそのメッセージとは、服をつくる中に無限の面白さがあるということでした。
コシノ一家の話のついでに小生の子供時代の話をするのはちょっと気が引けますが、私の子供時代もそれを連想させる経験をしてきたような気がします。
生まれ育った故郷のわが家は両親と4人の兄弟の6人家族でしたが、父も母も地域の小学校の先生で、長女と長男も教職につき小学校の校長先生までした教育一家でした。
しかし私の番から突然変異なのか私は美術大学から広告会社、そして画家となり、末っ子の三男も美術大学から演劇の道に進み、脚本家で演劇の演出家といったクリエイティブな仕事をすることになりました。
それには私と弟は色濃く母の影響を受けているからのような気がします。
母は元来文章を書くことが好きで、教職のかたわらたえず文章を書いており、その当時はいろいろな懸賞論文のコンテスト全盛のときであり、母は次から次と懸賞論文に応募し、コンテスト荒らしのように受賞を重ねてきました。
そのためか母はいつもノートを持参しており、忙しい仕事のちょっとした合間や、夜なべしてそのノートに書いてはちびた消しゴムで消し・・・とその情景を鮮明に記憶しています。
私の母への記憶は北陸の暗い天気のような苦難の人生の中で、ノートに向かって文章を書いているときだけ、サンサンと降り注ぐ太陽のような明るさに満ちている印象でした。
それを通して子供心に「創ることのすばらしさ」の思いが、クリエイテーブな職業へと私と弟を導いたのかもしれません。
その後母は出版への強い願望を持ち、何冊かの自費出版をし、最晩年になってもその意欲は衰えませんでした。
才能とは何でしょう?
それはいろいろな要因の複合により生じるものですが、その中でも最も重要な要素、それは面白さを発見する能力であり、それにより情熱が生まれ、モチベーションが高くなり、熱中する能力が生まれるのではないでしょうか。
面白いから情熱を傾ける、情熱を傾けるから上達する、上達するから才能が開花する、才能が開花するから面白い・・・そのスパイラルが才能を育んでいくのではないでしょうか。
そしてまた、情熱があるからこそいろいろな障害に立ち向かい、困難を乗り越える力が生まれるのではないでしょうか。
私たちは年を重ね人生の経験者となるわけですが、これまで培ってきた人生の面白さや情熱をより多くの人に伝えることも大切な役割と思い、わが母のようにこのブログを書いています。