出版のための絵をつづりその都度HPで発表している「詩歌の情景」の仕事はまだまだ道半ばですが、とても面白い出版となりそうな予感がします。
上の絵は土井晩翠の「荒城の月」の詩をもとに描いた絵ですが、いかがでしょうか。この歌は小学校の音楽の時間に習ったこともありよく知っている詞ですが、何度も読み返しているうにちにこのような情景が浮かび上がり、それを素直に絵にしました。
すばらしい文章があり、それに添える絵を描くのがこんなに楽しいのかとしみじみ実感しています。
この仕事は、歌を前に絵の構想をひねり出す作業が8割、構想を素に絵を仕上げる作業が2割という作業配分になっています。
構想のポイントは、詩歌の絵解き・絵で詩の説明は避けるようにしています。詩歌の世界が小さくなってしまうからです。
そうではなく詩歌の世界と絵の世界が共鳴しイメージが膨らみ、広がっていくような表現を目指しているのですが、それがとても難しいのてす。
そんな悪戦苦闘の日々が続いているうちに、本来の「陽気なおじさん」の私が、すっかり思慮深い「わび・さび・もののあわれおじさん」に変身してしまいました。
しかし大丈夫です。仕事が終わればすぐにメッキが剥げてしまいますから。
私は構想の浮かんだものから絵にし、浮かびにくい歌は後まわしにしているのですが、必然的に目の前には絵にしにくい歌が残ることとなり、難し過ぎでたぶん最後になるだろうと思う歌は下の歌と思いますのであなたも構想を練ってみるのはいかがでしょう。
やわ肌のあつき血汐にふれも見で
さびしからずや道を説く君
これは与謝野晶子さんの短歌ですが「やわ肌」といっても私には遠い昔の記憶しかないこともあり、この歌の構想がまったく浮かばないのです。
それにしても100年以上前の古い時代に、女性である与謝野晶子さんはものすごく大胆な歌を創ったものだとつくづく思うのです。
この「詩歌の情景」には彼女をはじめ日本を代表する歌人、石川啄木・若山牧水・北原白秋・島崎藤村・・・の諸氏の歌が登場するのですが、その歌の鮮烈さ、純粋さ、豊かさに驚き入るばかりです。
それが長い歴史と風土が培った「日本の心」かもしれなく、この本のコンセプトでもあります。 私の絵のポイントもそこにあります。
私も含めすっかり忘れてしまった「日本の心」を取り戻す本が出来そうです。