わが家は湘南の海が見える小高い丘の上にあります。
家のまわりは傾斜地となっているためいろいろな木々が茂り、豊かな自然に囲まれた立地となっています。
そのため季節に合わせてのいろいろな野鳥が来、動物といえばたぬきが住み着いており、最近ではちょくちょくアライグマも見かけるようになりました。
しかし何といっても圧倒的に多い動物は「タイワンリス」で、リスの住む森にわが家が入り込んでいると言ったほうが正しいのかもしれません。
リスはターザンのように木々を飛び渡ったり、バルコニーで日向ぼっこしたりは日常的で、2階の自室で絵を描いているとき、気配を感じ窓の外を見ると、一匹のリスがガラス越しに私の描く絵をジッと食い入るように観ているときもありました。
しかしわが家にとってのリスはかわいいのですが迷惑者でもあり、特にわが妻にとっては積年の恨みが積もり積もった天敵となってしまったのです。
妻は畑仕事が大好きで、庭の片隅の小さな畑でいろいろな野菜作りをし、実のなる木を育てているのですが、その多くは人間様が食す前に(まさにその寸前で)リスが食べてしまうことにありました。
きゅうり・トマト、さつまいも、木の実として柿・みかん・ゆずなど収穫間近で食い散らかしてしまい、妻の怒りは当然といえば当然のことでした。
そして今年の秋も、妻が干し柿が大好物なのを知っている田舎の姉から、立派な柿がたくさん送られてきました。
さっそく皮をむいた柿を洗濯干しで吊るして干し柿を作るのですが、リス対策として笑ってしまうほど厳重に網で囲い、キラキラ光るおどしを過剰にぶら下げて数日間ベランダで干すことになりました。
しかし予想に反してといいますか予想通りといいますか、今年も出来上がり寸前で見事にリスにやられてしまいました。
網が食い破られ、そしてことごとく食べられてしまっていました。
すっかり頭にきた妻は「リス捕獲器」を買ってきて設置したのですが、次の日あっけないほど簡単に一匹のリスが捕獲されました。
金網の中でパニック状態のリスを前にして、妻と私は
妻 「捕まえたのは私だから、殺すのはあなた。水の中に漬けるだけでいいんだからあなたやって!」
私 「そんなかわいそうなこと出来るわけないよ。それにしてもリスって本当にか~わいいね~。」
妻 「・・(あきれ顔)・・」
私 「私からの提案なんだけど、ペットとしてこのリスを飼うことにしようよ。 ボクが全部世話をするから。」
妻 「何バカ言ってるの。それだけ言うのなら殺すのは中止して、二度と寄り付かないようにしてやるゾ~!」
妻はフライパンと棒を持ってきて、リスのそばで鼓膜が破れるほどの音でガンガンフライパンを叩いて、腰を抜かさんばかりになっている(と思われる)リスを開放しました。
その時妻は、無念を晴らした忠臣蔵のように、晴れ晴れした心境になっていたようです。
そして次の日、なんということか、あのリスがまたやって来ているではありませんか。
あのリスにはしっぽの傷に特徴があり、間違いなくきのう捕まえたあのリスですが、ベランダのテーブルの上でこちらを見ながらなにかしゃべっています。
耳を澄まして聞くと、リスはこんなことを言いました。
リス 「きのうのペットの話、俺のほうは前向きに考えているのだが・・・」
※というわけでこの話はおしまいにしますが、ほとんどが事実で、一部フィクションとなっています。