ノー天気画家の本音生活 

これが私の生き方などとヤセ我慢するよりも、今日の風に流されましょう!

魅力的な絵を描く秘密は写真にあります

2010-02-15 05:37:10 | 犬たち

トレース水彩画は写真をトレースして描く画法ですが、大きく2つの行程からなっています。
ひとつは、写真を撮り・選ぶ行程(A)で、何を描くかを決める行程でもあります。
もうひとつは、その写真をトレースし・彩色する、絵を描く行程(B)です。
それでは、行程(A)と(B)、どちらが重要でしょう?
もちろんどちらも重要ですが、レベルにより違いがあり、初心者の方は行程(B)こそ優先事項ですが、上級者になるほど行程(A)の方に重心が移行し、現在の私にとって圧倒的に行程(A)の写真こそが絵のクオリティの決め手だと思っています。
その大前提として、私は写真を素に描くものの、写真を越えた世界を表現しなければならないと思っているからで、「どう描くか?」より「何を描くか?」のほうが、はるかに難しいのです。
そのため絵の素となる写真がつまらないと、写真を大きく越えた絵を描く必要が出てくるため、いろいろなテクニックを駆使する必要が生じ、失敗の道をたどるケースが多いのです。
逆に、魅力的な写真を素に描けば、素となる写真が素晴らしいのですから、写真の持つ魅力に上乗せして、(精神的ゆとりからか)写真を越えた魅力をも引き出すことが容易になるのです。

魅力的な写真を撮るには、何といってもより多くの情景と出会うこと。
その情景は季節により、天候により、時刻により変化します。その最高の情景を見逃さず写真に収めることがポイントです。
私の趣味は散歩です。一日のかなりの時間を散歩に費やします。
小型のデジタルカメラをポケットに入れ、「!」と感じたらすかさず写真に収めることにしています。カメラテクニックにこだわらず、フルオートでチャンスを決して見逃がさないことがポイントです。
犬も歩けば棒にあたると言うように、数多くの写真を撮れば、その中に光る写真が見つかるはずです。

出版「水彩画革命―トレース水彩画で描く湘南・鎌倉の12ヶ月」は好評のようです。
この中で116枚の湘南・鎌倉の絵が掲載されています。
上の瓦屋根の絵の風景は、掲載された私の好きな一枚ですが、この風景はよく散歩で通る場所にあるのですが、あまりにも当たり前の風景なので、ず~っと見逃していました。
ある日の散歩のとき、「この風景は平凡だけど、もしかして面白いかも・・・」と写した一枚から描いたのですが、絵にすると写真にはない私の心象風景が表現できたように思え、不思議な感動を覚えました。

魅力的な写真から描く絵は、自分自身の内面をも表現できるかもしれません。

 


絵の世界は「反逆の作戦」の時代が来るかもしれない

2010-02-04 09:22:36 | 犬たち

今回出版された「水彩画革命」で8冊目の出版となりました。
まさか出版の仕事が出来るなんて・・・!私の画家として出発した当時は想像だにしなかったことですが、そこで決めた絵への取り組み姿勢としての「反逆の作戦」こそが、将来の可能性へ大きく寄与したことは間違いないと思っています。

 今から7年前、60歳の定年退職を区切りとして、画家として出発することに決めました。
再就職の話もあったのですが、せめて第二の人生ぐらいは失敗してもいいから自分のやりたいことをとことんやってみようという思いがありました。
とはいえ、その時点では絵はヘタクソで、絵の注文などあろうはずがなく、将来の画家としての見通しなどまったくありませんでした。
そのとき私は以下のような「反逆の作戦」に将来の夢を託しました。その作戦とは

画家が歩む「正しい道」を決して歩んではならないこと。
画家として「やってはいけないこと」「非常識なこと」だけを歩むこと。・・・
ということでした。

 画家が歩む「正しい道」とは、具体的にはなんらかの会派を目指し、徹底的にデッサンを修練し、畳ほどの大きさの絵を描き、展覧会に応募し、何年もかかりようやく会員となり、派閥で起こる恨みや妬みの中で長い期間もまれ、ようやく頭角を表すというこれまでの画家たちがたどった道をいいます。
私は60歳でプロの画家としてはとても遅い出発となったわけですから、画家が歩む「正しい道」を歩み、頭角を表す頃はお墓の中ということになりかねないことになります。
そのため画家が歩む「正しい道」の逆を突くことに活路を見出すという「反逆の作戦」を実行することで、これまでにない絵の世界を拓こうと考えました。

いろいろな誘いもありましたが、画壇という世界と距離を置くことにしました。画家ともあえて親交を持ちませんでした。
絵の描き方を根本から見直しました。特にデッサンの壁を突き崩す新しい技術開発に取り組みました。その結果として「トレース水彩画」という画法を編み出しました。
画家は作品の発表の場は展覧会が常道ですが、私はインターネットでのホームページだけ(結果として出版も加わりましたが)を作品発表の場にしました。
そのような反逆の精神を踏襲することにより、ようやく他とは違うオリジナリティが形作られてきました。
その結果として、いくつかの出版社から声をかけていただき、8冊もの出版化が実現したのです。

今、絵の業界は深刻な凋落の中にあります。
たとえば20年前から比較すれば、魅力的な画家や絵も少なくなり、画廊も大幅に減少しました。
この状況は確実に続きます。と言うことは、画家が歩む「正しい道」はあまりにも古く、社会のニーズから遠く離れて、すでに「正しくない道」となってしまうのが確実なのです。

 私のこれからは「反逆の作戦」をより徹底することにより、新しい絵の世界がより鮮明に見えてくるような気がするのです。