上の絵は近々発売の出版「懐かしい大人の切り紙」内の島崎藤村の「惜別の唄」をイメージして描いた絵です。
写真をもとに描いたわけですが、絵のような一枚の写真があったわけではありません。4枚の写真を合成したコラージュを素にして描いたものです。
といっても分かりにくいので、この作品の完成までの経緯をたどりながらご説明します。
「惜別の唄」は男女の別れをの詩ですが、それを読んで最初に思いついたのは演歌の「別れの一本杉」の歌でした。しかし一本杉やお地蔵様を描いても、抽象的で別れの心情が表現できるとは思えず、第一私の感性ではありません。
私の感性とは直接的に表現することで、そのほうが素直に訴求できるのではないかと思い、別れの情景とはまさに人と人とが別れるとき、そのひとつとして電車が去っていく情景こそその心象風景にふさわしいと思いました。
とはいえ都会の駅よりもひなびた田舎の駅のほうが絵として面白いと思い、そのイメージを具現化することにしました。
となればたしかローカル線の無人駅を写した記憶があり、膨大な写真ストックからその写真を探し出す作業から始めました。
写真① 田舎の無人駅の写真が見つかりました。しかし背景は人工的過ぎるようです。
写真② 田舎駅の背景にふさわしい山並みの風景を合成することにしました。
写真③ やはり電車がなければ、ということで1両編成の古い電車も合成しました。
写真④ そして最後は(悩んだ末に)見送る人も合成することにしました。
これらの4枚の写真からのコラージュをコピーし、通常のトレース画法で描いたのが上の絵です。
実を言いますと「懐かしい大人の切り紙」の中の13枚の絵のほとんどが、何らかの写真の合成で描いているのです。
それほど魅力的な絵を描くには写真の合成が威力を発揮するのです。
「初心者のためのトレース水彩画教室」もまさにカリキュラムのテーマが「写真の合成」に入り、その第1回は「さりげなく小道具を入れる」です。
最初はカンタンな写真の合成ですが、だんだん面白くなります。ご期待ください。
この「写真の合成」での描き方では、写真を集めること、コラージュすること、トレースして絵を描くこと・・・などありますが、それ以上に大切なことは描く前に完成された絵をしっかりイメージできることにあります。
しっかりイメージできれば、どんな絵でも描けるかもしれません。
写真を合成して絵を描く・・・、こんな絵の教室、世界中探したってここしかないですよ~!!