ノー天気画家の本音生活 

これが私の生き方などとヤセ我慢するよりも、今日の風に流されましょう!

楽しくなければ、絵ではない!

2015-03-30 04:48:27 | 犬たち

私はず~っと絵を描き続けてきたのですが、絵を描くことにず~っと熱中し続けてきたといいますか、心底楽しんできました。
今回はその「楽しみを引き出すコツ」についてお話ししようと思います。

いろいろな方から「絵でご苦労なさったでしょう」とか「厳しい訓練の積み重ねこそが大切なのでしょう」と聞かれますが、私は絵を描くことで楽しかったことしか思い浮かばず、努力や訓練、苦労などのマイナス要因とは無縁でした。
確かに描くのが面倒になった時もあったし、投げ出したいときもありました。
その時は躊躇なく絵を描くことをストップし、途中であろうが潔く中止しました。
しかしそのうちに、絵を描きたいという欲求が体の底から湧き上がってくるのですが・・・。
だから「絵を描くこと」=「楽しいこと」と直結したのです。

私にとって絵は楽しいから描くのであって、それ以外の気分のときは決して描かない。
そのことをかたくなに守ることこそ、絵を楽しく描き続けるポイントだと思っています。

勝ち続けるスポーツ選手の勝つ秘訣は、勝てる相手とだけしか戦わないこと、それに似ていて、楽しいときだけ描けば、いつも楽しく描いていることになるわけです。
そのひとつとして、数年前から絵の注文を受けないことにしました。
なぜなら受注することは責任が生じることで、描きたくなくても描かなければならないことであり、そんな苦痛を味わう恐れがあるならいっそ受注そのものをやめてしまえ!となり、それ以降すべての注文はお断りしています。
ただし無料なら引き受けることがあります。 

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それでは絵を描くことで、何が楽しいのかをお話しします。
10年以上も絵を描き続けていると、楽しさの中身も段階を追って変化してきました。

第1段階
絵画経験の初期には、絵を描くことでドンドン上達していく、それは写真そっくりに描けるようになっていく、その上達が実に楽しかったのです。
第1段階は、描く上でのテクニックの上達が楽しかったのです。

第2段階
その次のステップは、美しい写真探しに夢中になりました。
ほぼ写真通りに描けるようになれば、その素になる写真の優劣が絵の優劣に直結することになるわけですから、その素となる写真探しに夢中になりました。
その極め付けとして海外、特にイタリアとフランスに素晴らしい風景があることを知り、何度となくイタリアとフランスの旅をしました。
その地は圧倒的に美しく、惜しげもなく絵になる風景が広がっており、夢中になってヨーロッパの風景を写真に撮り、そして描いた時もありました。

第3段階
この段階では、写真を超えた創意工夫=思考こそが、絵を描く楽しさとなりました。
絵は自分発のメッセージですから、借り物のヨーロッパの風景よりも、自分の立っている足元の風景こそ、自分を描く絵のテーマにふさわしいのではないかと思い始め、毎日のようにカメラ片手に地元を歩き回りました。
しかし地元の風景は地味で、第2段階のような写真をそのまま正確に描き写せばそのままいい絵となる、そんな風景はほとんどありませんでした。
つまり地味で平凡な写真に、手を加えて写真を超えた絵にしていく、そこにこそ描くというより創り上げる楽しさがあることを発見しました。
それは「思考すること」、そしてその結果としての「知恵と工夫」にあったのです。 
それ以降数多くの地元 の絵を描きましたが、(その中に鑑賞者にはわからないように)しっかりと知恵と工夫が込められているのです。

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上の絵はこの地域のシンボルでもある、鎌倉の大仏を描いたものです。
これまで何度も高徳院を訪ね、大仏を描くことに挑戦しましたが、私の描きたい絵のイメージが構築できませんでした。
つまり、どのように描いても絵ハガキから抜け出たような絵にしかならず、それでは「自分を描く絵」にならなかったからです。
それを解決する方法は「思考すること」であり、それこそが第3段階での描く楽しさの発見でした。
その思考の結果、木の葉越しに見る大仏を描くことを思い付き、やっと自分らしいそれなりの絵が描けたと思っています。

高齢者と言われるこの年になって(この年になったからこそ)、思考することに無上の喜びを感じている今日この頃です。


新刊『誰でもたちまち絵がうまくなるトレース水彩画」入門』がPHPより発売

2015-03-11 10:43:31 | 犬たち

渾身の著作『誰でもたちまち絵がうまくなるトレース水彩画」入門』がPHPより発売されました。

私がトレース水彩画という画法を開発してから10年、気が付けば、実に楽しいがゆえに休むことなくトレース水彩画に取組んできました。
その成果のひとつとして、これまで8冊の出版化が実現し、累計14万部の発行となりましたが、それに加え、9冊目となる出版『誰でもたちまち絵がうまくなるトレース水彩画」入門』をPHP研究所より発売することになりました。
題名が少し長すぎるのですが、その題名のように読者に大きなインパクトをあたえることをしっかり期待できる本となりました。

思い返せば、開発当初はトレース水彩画なんて、正統的な道から外れた邪道の描き方・ちょっとうさんくさい描き方としての冷たい評価の連続でした。
しかし時代の流れの中でコミュニケーション環境が激変し、当然ながらカメラやスマホなどの機器の進化、アニメなどのビジュアル表現の世界も大きく変化しました。
しかし絵画の世界は旧態依然としており、新たな変革を余儀なくされている中で、そのひとつとしてトレース水彩画は素直に世間から受け入れられる、そんな風潮を肌で感じていました。
そんな中、PHP様より著作の依頼があり、出版化が実現したのです。
これが72歳の私にとって、この出版化は引退間近の1冊ではなく、新たな可能性の1冊となるような予感を感じています。 

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今私が感じているトレース水彩画について、『誰でもたちまち絵がうまくなる「トレース水彩画」入門』の中の文章の一部を抜粋するで、その要旨をお伝えできると思います。

Nさんという方からこんなメールをいただきました。

     「風景画は現地で描くのが基本ではないでしょうか。
     風とか、においとか、刻々変わる光とかをを五感で感じながら制作することを
     セザンヌや印象派の画家から学びました。
     私の姿勢は古いのでしょうか。」

Nさんの質問に対して、私は次のように答えました。

「風景画の基本とありましたが、絵の世界こそ全く自由に何をやってもいい世界で、そもそも正しい絵の描き方という概念そのものが存在しないのです。
もし絵に規範があるとすれば、あなたが尊敬するセザンヌも、当時の規範を破り邪道を歩んで人物であり、だからこそ絵の歴史を創る偉業を達成できたのです。
現地に赴き、風や光を感じながら描くのもひとつの方法であり、写真をトレースして描くのもひとつの方法で、どちらが正しいなんてないのです。
とはいうものの、どちらがより上手な絵が描けるか、それが問題なのです。
上手な絵が描きたいと思うなら、トレース水彩画は一歩も二歩も優れています」と。

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全国の本屋さんや、ネットのアマゾンなどで購入できます。 

    タイトル     誰でもたちまち絵がうまくなる「トレース水彩画」入門
    著者       森田健二郎
    出版社     PHP研究所
    価格       1512円
    販売      全国の書店、アマゾン その他