昨年末、私を著作者とするトレース水彩画をテーマとした出版の依頼がありました。
版元は真面目な出版で定評のPHP出版です。
そのため、暮れも正月もない仕事漬けの日々を過ごし、ようやく私の作業の大部分を編集に引き渡すことが出来ました。
とはいえ、編集とレイアウト作業はこれからで、本の題名の決定や校正など、まだまだ作業が山積しているのですが・・・。
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これまで私の著作したトレース水彩画での出版は8冊となり、今回は9冊目となりますが、8冊目と9冊目の間は5年の期間があり、私にとってその期間は大きな変革の時でもありました。
2002年に停年退職してから第2の人生を画家として歩むべく必死に絵の研究をし、2年後の2004年に1冊目となる「トレース水彩画入門」を出版し、以降次々と出版を行ってきました。
画家ですから、出版だけでなくいろいろな絵の注文もこなし、それなりに充実した画家人生を歩んできたと思っています。
そして2010年に8冊目となる「水彩画革命」を出版した時は67歳となっており、この出版を契機にこれまでとは違う生き方をしようと思うようになりました。
それは職業としての画家から、悠々自適の中での絵を描くよろこびを優先した生き方に変えることにしたのです。
だからそれ以降一切、絵を描いて収入を得ることは止めることにし、その間依頼されて何枚かの絵を描きましたが、すべて無償でおこないました。
そして二度と出版の話は来ないことを予感していた、というより出版への願望がすっかり消えてしまいました。
その心の動きは、予想外の結果となりました。
それは絵への情熱が弱まったのではなく、むしろ高まっていき、積極的なチャレンジをするようになっていったのです。
以降の作品発表の場は、HP「森田健二郎のトレース水彩画教室」ですから、その中でのそのシリーズ企画「ペットのお言葉」「江ノ電日記」「写実のその先」「水彩画上達のコツ」「心にしみる日本の風景」を次々更新し、そして動画シリーズの「動画で納得、トレース水彩画」は、それなりに反響を呼びました。
その間別の何かに発表するということは考えていなく、純粋にトレース水彩画の理解者が、ひとりでも多くなることを願ってのHPでの展開でした。
そして絵を描くよろこびは、絵そのものを確実に上達させる効果もありました。その理由は、
絵はノルマや目標があるから上達するのではなく、自由で何の制約もなく、心のおもむくままに描いてこそ本領を発揮するものだと、しみじみ感じたのです。
この出版化に尽力いただいたのは、出版編集会社の社長さんで、常日頃からこれまでの私のHPやブログをすべてご覧になっており、だからこそ私の出版化を実現化させたのです。
その中でのスケジュールが短すぎるという問題に対し、彼は「新たに制作するよりも、これまでのHPの作品やブログ等の文章をまとめれば、いい本が作れるじゃないですか」と話され、事実その通りとなりました。
悠々自適時代の中で制作した絵と文章は相当量あり、20日間という極めて短い著作期間も、まさに5年間の悠々自適時代に貯めた中から引き出すことで、充実した内容になりました。
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そして出版が実現したもうひとつの理由に、時代背景も味方していると思っています。
2004年に1冊目となる「トレース水彩画入門」を出版したとき、周囲から「インチキくさい描き方」とか「正統的でない」とか言われました。
あれから10年、時代は大きく変わり、デジカメやスマホなどの通信機器といいますか、コミュニケーション機器が飛躍的に普及する中、絵の描き方は時代から取り残され、化石化していることにようやく世間が気づいてきたことです。
その証拠のひとつとして、定価2000円の「トレース水彩画入門」の中古本が10倍近くの高値がついていることが、それを如実に物語っています。
それは新しい絵の描き方に対する強い期待の表れであり、その後ろに多くの潜在顧客が待っているような予感があるような気がします。・・・ということで
この3月全国の書店から発売されるトレース水彩画の出版に、ぜひご期待ください。
上のラディシュの絵は、新本にその描き方が詳細に載っており、あなたも本を見れば確実に描くことが出来るようになるでしょう。