私が50年若くなり、そしてもっと頭が良ければ、「人工知能」の開発の道を突き進んだに違いありません。
何といっても「人工知能」は時代を大きく変える力を持っているからです。
人工知能とは、人間のように賢いコンピュータやロボットのことで、その研究開発が急速に進んでいるのです。
この人工頭脳の最近の話題といえば、現役バリバリの将棋のプロ棋士が、最新の将棋ソフトと5対5のガチンコ勝負をおこなったところ、人工知能でつくられた将棋ソフト側が圧勝しました。
つまり将棋の天才たちが考えに考えた執念の一手よりも、コンピュータがはじき出した一手のほうが、勝ることを証明したのです。
しつこいようですが、将棋は知能を競うゲームですから、プロの将棋師よりも人工頭脳のほうが知能が上だったということです。
この結果は将棋の世界に大きな衝撃を与えました。
なぜなら人間の作ったものが人間の能力を上回ったからです。
しかし考えてみれば、たとえば100メートル走での桐生選手の記録は10秒01ですが、それを時速に換算すれば36キロとなり、若葉マークのドライバーも鼻歌まじりで出せるスピードです。
機械が人間を上回るなんてこれまでの技術の世界では当たり前でしたが、頭脳の世界でも人間を超えてしまう、そんな時代が来たのです。
人工知能は将棋以外のさまざまな分野で開発がおこなわれていますが、私が期待する2つの分野をご紹介します。
ロボットカー
人間の運転なしで、勝手にハンドルを動かし、勝手にブレーキを踏み、完全自動で走行できる自動車のことで、目的地さえセットすれば、安全・安心の上、確実に到着する自動車です。
その研究と開発は日本でも進められていますが、アメリカでは官民一体となって一歩も二歩も先を歩んでいます。
その中でも先行しているのは、インターネットでお世話になっているグーグルで、実際のアメリカの街中を毎日ロボットカーが走り続けており、48万キロを無事故で走行中とのことです。
巨大産業になることが確実視されている分野に素早く目をつけるところは、さすがアメリカ合衆国ですネ。
完全自動通訳機
翻訳機能や音声入力・出力機能はずいぶん昔から研究されてきましたが、完全自動としての実用化まではまだまだのようです。
外国語が苦手な人が、外人とのコミュニケーションにおいて何の不自由も感じない、それが完全自動通訳機で、海外のスーパースターの同時通訳で有名な戸田奈津子さんのような通訳機能がポケットに入いる大きさで活用できるものをいいます。
これさえあれば、外国語といっても英語が大苦手の私でも、ひとりっきりの世界一周が可能となるのです。
そのように人工知能は人間の営みの多くの分野に深く入り込み、人間に取って代わって活躍する、そんなSF小説みたいな未来がやってきたのです。
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しかし大きな問題も生じています。
アメリカでは人工知能を応用した会計ソフトが開発されたため、ここ数年で会計処理や税務処理の専門家が数万人規模で職を失ったと言われています。
そのように人工知能はビジネス界にとって、よりレベルの高い知的作業の代替を行うまでになってきており、人間が人工知能に使われる逆転現象まで起きてきました。
そのような労働問題・雇用問題が生じる恐れがある一方で、人工知能はビジネスの世界で、新たな能力確保にもなり、特に少子化による労働力不足に悩む日本にとって救世主となるかもしれません。
それに加え、日本は絶えず付加価値の高いビジネスモデルを作り、世界を相手にビジネス展開を宿命づけられていますが、人工頭脳を武器とした新たな産業を興し、世界を相手にビジネス展開していくことも期待できるのです。
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将棋ソフトで開発の後日談ですが、より強い将棋ソフトと並行して、接待将棋ソフトを研究中とのことです。
必ず人間が負けてしまう将棋ソフトは不愉快で、誰もが敬遠することが想定されます。
そのため相手の能力に合わせギリギリのところで人間が勝ち、いい気持ちにさせてあげるのが接待将棋ソフトの主旨で、しっかり商売のことも考えるとは、さすが日本の研究開発魂ではないかと思っています。