ゆるゆるらいふ

とりあえず、今日も一日機嫌よく・・・

【観劇メモ】三谷幸喜 「大地(Social Distancing Version)」を家で観る

2020年08月08日 | 演劇

「大地(Social Distancing Version)」

作・演出 三谷幸喜

PARCO劇場

 

三谷幸喜さんの舞台が家で生配信で観られる日が来るなんて思っても見なかった。

 

先週土曜日の昼間、息子のゲーム機のケーブルを借り、私のノートパソコンとテレビをつなぐ。

 

こんなこともできるなんて

 

普段、ほとんど演劇を観ない夫も巻き込み、お茶など用意してテレビの前でスタンバイ。

 

開演時間少し前から、三谷さんが画面の中でパルコ劇場の中を歩いていく。

 

 

舞台はとある共産主義国家らしい。

反政府主義者のレッテルを貼られた俳優や芸人たちが収容されている施設の中。

 

面倒見がいいのになんだか貧乏くじを引いてしまうチャペックが大泉洋さん。

俳優としての才能はなく、大きな劇団の裏方だった。

指導員に上手に取り入って、みんなのためにいろいろ調達してきてくれる。

 

映画界の大スター、ブロスキーが山本耕史さん。

いかにも、っていう白いスーツがとてもお似合い。

時折上半身裸になり、マッチョな肉体を披露したり・・・。

 

女形だけど心は男らしいツベルチェクは竜星涼さん。

美しさゆえに政府の男色な役人に気にいられてしまい、仲間のために身を投げ出すことになってしまう。

 

不器用で決して思想を曲げない正義感が強く容量の悪い俳優ツルハには相島一之さん。

いつも役人にたてついては食事を抜かれたりしている。

 

世界的なパントマイミストだけどいつも腰痛に悩まされているプルーハが浅野和之さん。

 

有名劇団の座長で収容所でも最年長のバチェクは辻萬長さん。

重鎮感がハンパないけど子供のようにわがままだ。

 

大道芸人で物まね芸人でもあるピンカスは藤井隆さん。

有名俳優たちの中では芸人は格下で、頼まれると断れず、いつも作業を押し付けられている。

 

大学の演劇サークルに所属していたというだけで拘束された最年少のミミンコに濱田龍臣くん。

今回は彼がストーリーテラー。

大人になったな~

 

その恋人で女性の収容所に連れてこられたズデンガはまりゑさん。

あかるく、超前向きでがさつなキャラが舞台をパッと明るくする。

唯一の女性だ。

 

演劇好きの指導員、 ホデクは栗原英雄さん。

自分の書いた超拙い脚本を有名俳優たちに演じさせようと張り切っている。

 

演劇・映画などげk術に全く興味も理解もない政府の役人ドランスキーが小沢雄太さん。

ツルベチェク(竜星涼さん)に一目惚れし、権力を笠に自分のものにしてしまう。

 

後半、若い二人の逢引のために、全員がいろいろな役回りを全力で演じる。

それまでの毎日が嘘のように、みんなが目を輝かせ、生き生きとしているのが、切ない。

 

それぞれの得意分野でのもてる力、芸を存分に出し切って、大成功に終わるはずだった・・・

がたった一つの忘れ物からほころびが生じ、全員の生死をもゆるがすことになってしまう。

 

相手をおもいやり、かばい合い、皆を助けるために自分の命を投げ出そうとまでしていたのに、

犠牲になるのが一人でいいとなると、押し付け合い、裏切り、自分が選ばれなかったことに胸をなでおろす。

 

極限状態の中で誰もが自分が生き延びたいと思うのは決して罪なことではないのだろう。

 

一人が連れていかれたのち、政権が変わり、皆は解放される。

 

ストーリーテラーがその後の皆の様子を語るけれど、ただ一人消息がわからない・・・。

 

 

今回、当初の脚本・演出をコロナ禍のソーシャルディスタンスに配慮したバージョンに作り直したとか。

 

傾斜を付けた八百屋舞台は9つのブロックに分かれていて、それぞれの部屋のようになっており、俳優さんたちはほとんどその中で演じる。

恋人同士の若い二人が抱き着こうとしても片方がするりとかわしたりして、ほとんど接触が無い。

 

それでも何の不自然もないどころか、絶妙な間が笑いを誘う。

コロナのことがなかったとしても、これはこれで、完璧だ。

 

三谷さん、さすがです

 

実は、この舞台、8月4日のチケットが取れていた。

ちょうどこのころ、東京都の感染者数が激増。

劇場も相当な感染対策をやっているとのことだったが、電車を使って渋谷に行くのがちょっと不安。

普段の私なら気にせずに行ったことだろう。

だって、私はインフルエンザにも一度もかかったことがない。

 

しかし今はちょっと事情が違う。

7月に90歳近い義母が骨折し、みんなで交代で泊まったり食事を作ったりするプチ介護中。

ここで私が感染したら大変なことになってしまう。

 

払い戻しを受け付けていたので、泣く泣く払い戻すことにした。

 

それにしても、パルコ劇場にどうしても行けない

 

4月の渡辺謙さんの「ピサロ」

6月の佐々木蔵之介さんの「佐渡島他吉の生涯」

ともに中止で払い戻し。

そして今回も。

 

パルコ劇場以外にも払い戻しの嵐だった。

 

9月のチケットも取れているが、どうなることやら。

 

以前ならチケットが取れたら、公演の日をわくわくしながら心待ちにしていたものだ。

 

今は、チケットが取れても、公演はあるんだろうか、私は行っていいんだろうか、と、なんだかハラハラして落ち着かない。

せっかくエンタメ業界が復活しつつあったのに、またまたこんなことになってしまった。

 

コロナで少し良かったことと言えば、

中止じゃなくてもチケットが払い戻せることと

なかなかチケットが取れない舞台を生配信で自宅で観られることかなあ。

 

無観客でのスポーツの試合、演劇、ライブやコンサート・・・

 

舞台の終盤、連れていかれた一人を思い、バチェク(辻萬長さん)がつぶやく。

「私たちは観客というもっとも大切なものを失ってしまった・・・」

 

いつでも行きたいところに行き、会いたい人に会い、仲間たちと美味しいものを食べて大声で笑う。

そんな日常が戻ってくることを願うばかり・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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