ゆるゆるらいふ

とりあえず、今日も一日機嫌よく・・・

メアリー・ステュアート

2015年07月06日 | 演劇

すごいものを観た、と思った。

息もつかせない、とはこのことだろうか。

前日の「草枕」の舞台に流れる静寂さとはあまりにも真逆と言おうか。

観たいな~、と思いつつ、この辺りの日程が立て込んでいて、チケットを買っていなかったのだが、
前日、一緒に出かけたお嬢さんとそのお母さまが都合で行けなくなったと、譲ってくださった。

劇場は渋谷、PARCO劇場。

ホントに行ってよかった

まず、席がいい

通路前の中央。

なんだかVIPになった気分

生後6日でスコットランド女王に即位したメアリー・ステュアートに中谷美紀さん。

3度の結婚をしたものの満たされず、宗教上の反乱から幽閉されている。

父親であるイングランド王ヘンリー8世の女癖と気まぐれに翻弄され、過酷な運命を経て王位に着いた
エリザベス1世に神野美鈴さん。

メアリーとはいとこ同士だが、対照的に彼女は学問を愛し、独身を貫いている。

舞台は二人のそれぞれの立場で、交互に演じられていく。

初めはメアリーの気高い一言から始まる。
そのとき、神野さんは乳母。
腰を曲げ、おどおどとした様子でメアリーの顔色をうかがう。

ぱっと変わって、今度は神野さんが胸を張って、上から人を見下ろすような様子でエリザベスになると、
たった今までメアリーだった中谷さんが侍女になる。

さっきまでの気高く張りのある声から、急に上目使いで、高く弱々しい声と口調。
若くて経験の浅い侍女って感じ。

神野さんの理不尽な命令口調はさっきまで、乳母だった人とはもうすっかり別人だ。

この入れ替わりが繰り返され、ストーリーはどんどん悲惨な方向へ進んでいく。

二人は布を巻きつけたような衣装なのだけれど、この布の巻き方を瞬時に変えることで、
女王になったり、侍女になったり。

ワダエミさんがデザインしたというこの衣装、エリザベスは金色、メアリーは銀色、と新聞の特集記事に書いてあったけれど
照明のせいか、私の目のせいか、二人とも同じような色に見えた。

でも、色はともかく、布の巻き方一つで容姿がぜんぜん違って見えるってすごい
もちろん、お二人の演技力がすばらしいのだけれど。

先にも書いたが、息もつかせぬ、というのはこういうことなんだ、と思った。
お二人の「勝負」って感じすらしてくるくらいの緊張感。

イングランドに亡命し、敬愛するエリザベスにさえ会えば、きっと自分は助けてもらえる、と希望を持ち続け
イングランドにたどり着くも、発覚したエリザベス暗殺計画への関与を疑われ、牢獄で裁きを待つメアリー。
メアリーの王位継承権を利用しようとする勢力に、本人との意思とは別に巻き込まれていく。

メアリーのことを許してしまいそうになりながらも、異なる宗教を持つことから、
彼女の王位継承後の地震への弾圧を恐れ、メアリーの処刑を決断するエリザベス。

メアリーの期待とエリザベスの葛藤が交互に現れ、観ている方もはらはらどきどき。

なんとかメアリーを助けてあげられないの?と感情移入してしまう。

いざ処刑となった時に、母にも抱きしめられたことのない自分を、抱きしめ慈しんでくれた乳母に抱きついて
感謝するメアリーの姿には思わず涙が・・・。

凛として処刑場に赴き、目隠しを断る姿は、マリー・アントワネットのようだ。

もはや、本物の女王にしか見えない。

一方のエリザベスは、男性を嫌悪・軽蔑し、女である前に「女王」であり続け、男性への愛を追い求めるメアリーや侍女に嫉妬する。

メアリーを処刑したことがはたして正しかったのか苦悩する姿が痛々しい。

二人の立場を複雑にする宗教弾圧は、しっかりとした宗教観を持たない私にはちょっとピンとこないので、
あくまでも想像の域を出ないけれど、宗教というものは命を懸けるほどのものと思う人たちがいることは理解できる。

ただのいとこ同士であったなら、二人はもしかしたらとても仲良しになれたんじゃないだろうか。

この日は、東京公演の千秋楽。

カーテンコールで抱き合い涙ぐむお二人の姿が美しく気高かった。

本当に思いがけず、いい舞台を観ることが出来た。
譲ってくれたお二人になんだか申し訳ない。

貴重な機会を、ありがとうございました。
次回、8月の小栗旬さんの舞台でお会いしましょう














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