花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

損保ジャパン 「ペルジーノ展」

2007-04-27 23:42:02 | 展覧会
ゲストの okiさんに頂いたチケットで損保ジャパン東郷青児美術館〔特別展〕「甘美なる聖母の画家 ペルジーノ展 ~ラファエロが師と仰いだ神のごとき人~」を 観た。okiさんに感謝!

イタリア・ルネサンス関連の展覧会は多いが、日本ではあまり知られていないペルジーノにスポットライトを当てた展覧会が開催されるなんて画期的だと思う。2007年イタリア年との連動でなければきっと難しかったに違いない。

今回展示されていたペルジーノ作品は、現在ペルージャに残されている宗教画が中心で、主に初期作品と晩年期作品が多い。まぁ、それはそれで作風の変遷も辿れて興味深かったが、最盛期のペルジーノらしい甘美さの目立つ作品が少なく、ちょっと拍子抜けの感もあった(^^;;;

まずは、美術ド素人が今回の展覧会で知ったことをサックリとまとめてみたい。

イタリアはウンブリア地方ペルージャ近郊に生まれたピエトロ・ヴァンヌッチ(1450頃-1523)は、その出身からペルジーノ(ペルージャ人)と呼ばれた。地元での修行時代を経て、フィレンツェのヴェロッキオ工房で徒弟として学ぶ。当時、1470年代のヴェロッキオ工房にはボティッチェリ、レオナルド、ギルランダイオなどの若い才能が犇いていた。ペルジーノも頭角を現し、独立後はフィレンツェとペルージャに自分の工房を持つことになる。シクトゥス4世によるローマ(ヴァティカン)のシスティーナ礼拝堂側面壁画制作においてはフィレンツェ画家集団のリーダーとなって活躍し、その高名は広く知られることになる。

そんな最盛期のペルジーノを見て「神の如き画家」と記したのはラファエッロの父ジョヴァンニ・サンティだ。後年ラファエッロ少年はペルジーノ工房で学ぶ。
そう言えば、北イタリアのブレシャやベルガモ、ミラノなどで観た初期のラファエッロ作品はペルジーノ作品によく似ていたっけ。


ラファエッロ「聖セバスティアヌス」(ベルガモ)

しかし、ペルジーノは大工房運営の経営者として主題・構図などの使い回し再生産に向かい、盛期ルネサンスの絵画革新の波から取り残されていく。生き残るには、昔も今も、絶えざるイノヴェーションが必要なんだね(^^;;


ということで、漸く絵画感想に進む(^^ゞ

-展示はペルジーノ画業出発前夜のペルージャ画壇の作品から始まった。当時を代表する/画家ベネディット・ボンフィーリ(1418/20~1496)とバルトロメオ・カポナーリ(1420頃~1505)作品は、フラ・アンジェリコの影響だったり、金地背景など、平面的で装飾性の見られる後期ゴシック的なものを残す構図と作風だった。マザッチョ(1401~1428)やマンテーニャ(1431~1506)のような遠近法はまだ試みられていない。

ところが、ペルジーノの手に帰せられる1473年の工房作《ペトラッツィオ・ダ・リエーティの娘の潰瘍を治す聖ベルナルディーノ》になると、遠近法を使った装飾的建築物の奥行きと、背景の風景による広がり、そして下部に描かれた色彩豊かで優美な人物像による物語絵が不思議な空間を作り出していて、一挙にルネサンス世界が現出するのが面白い。




ペルジーノのフレスコ画《聖ロマヌスと聖ロクスに祝福を授ける父なる神》(1476)は特に向かって左の聖人にヴェロッキオの影響を色濃く見てしまった。図録にもあるが、とてもフィレンツェ風なのだ。それから、気に入ったのが下部に描かれた塔のあるデルータの街並み!のどかで柔らかな光に包まれ、素朴な壁の手触りまで感じてしまった。

《ピエタのキリスト(デチェンヴィリ祭壇画のチマーザ)》(1495)は小画面ではあるが、宗教画としての精神性の感じる質の高い作品だと思った。祭壇画自体はナポレオンによる略奪に会い、現在ヴァティカン所蔵だ。ドメニコ・ガルビによる模写作品がペルージャに残され、今回並列展示されているものの、やはり力量の差というものがある(^^;;




さて、今回の展示作品中一番ペルジーノらしい作品は《聖母子と二天使、鞭打ち苦行信心会の会員たち(慰めの聖母)》(1496-98)だったと思う。まさしく、ラファエッロの師とわかるおだやかな優雅さと感傷的な雰囲気を合わせ持った聖母だ。ウンブリアの明るい色彩(私的にはヴェネツィア派の影響を感じるのだけれど)の祭壇画は、頭上には二人の天使、左右には信者が3人づつ並ぶという、やや単純化されたルネサンスらしいシンメトリーの構図である。まぁ、物足りないような気がするのは量産大工房のせいかもしれないけどね(^^ゞ




で、今回で一番目が惹かれた作品はウフィッツィから出展された《少年の肖像》(1494頃)だった。ペルジーノらしいメランコリックな甘やかさに満ちて見応え十分である!レオナルドの影響だろうか、光と影の醸し出す陰影のある表情と眼差しは、青春を凝縮したような風さえ感じる。宗教画作品中心の中ではどうしても目立つし、なおかつ筆致も一番丹念なのである。ペルジーノの代表作品をもっと見たいと思わせる作品だ。




さて、最後の方には意外な作品が展示されていた。 元々はペルージャにあったラファエッロ《キリストの埋葬》(現ボルゲーゼ美術館所蔵)の模写作品だ。あの(!)シピオーネ・ボルゲーゼがオリジナルを略奪して、さすがに地元に悪いからとカヴァリエーレ・ダルピーノに模写させたという因縁のある作品だ。ダルピーノと言えばCARAVAGGIOが徒弟として働いた師匠あり、模写とは言え、なんとなくバロックの匂いを感じたのは気のせいだろうか?(^^;;
しかし、ダルピーノが略奪作品模写って凄く皮肉な話だよね。なにしろシピオーネは同じようにダルピーノ自身が持っていたCARAVAGGIO作品を税金のカタに無理やり奪ったのだから!!

ということで、最後はCARAVAGGIOがらみで、めでたく締められたかな(笑)

3月に観た展覧会

2007-04-11 23:12:34 | 展覧会
■■3月に観た展覧会■■

・「冬季展 銀器の名工-沢田宗味」 (畠山記念館) ☆☆☆★
  銀器はあまり惹かれなかったが、何と言っても本阿弥光悦の赤樂茶碗「李白」が嬉しかった!酒好き李白の顔の色だろうか?(笑)。尾形乾山の白梅が可愛い「結鉾香合」も気に入る♪(チケット感謝!>okiさん) 

・「生誕120年 富本憲吉展」 (世田谷美術館) ☆☆☆
  富本の作品変遷を辿る。日本の伝統を踏まえてはいるが、英国留学で得たものの大きさを知る。空間を埋める模様はアラビア模様の影響もあるかも。(チケットThanks!>okiさん)

国立西洋美術館 常設展  ☆☆☆☆
   2005~2006年新規購入作品の展示にヨルダーンス「聖家族」があった。やはりCARAVAGGIO風♪【版画展示室】にはションガウアーやデューラーも!「書斎の聖ヒエロニムス」に感動!!ヽ(^o^)丿

・「華麗なるハリウッド映画衣装展」 (大丸ミュージアム) ☆☆☆
  映画「マイ・フェア・レディ」の衣装が本物&レプリカで展示されていた。オードリーってウエストが細い!「タイタニック」のガウンの繊細なデザインに惚れ惚れ♪(チケット感謝!>okiさん)

・「異邦人たちのパリ1900~2005」 (国立新美術館) ☆☆☆★
  モディリアーニとブランクーシ「眠れるミューズ」が何故か似ているような気がした、ということはキリコも似ている??(かなり意味不明かも(^^;;;)

・「ミレー、コローとクールベ展」「常設展」 (青山ユニマット美術館) ☆☆☆★
  常設展の方はシャガールとエコール・ド・パリで、国新美の展覧会に呼応しているかのようだった。クールベ「シヨン城」の静けさを味わう。でも、常設の藤田嗣治「薔薇」がとても気に入る。

・特別展「レオナルド・ダ・ヴィンチ -天才の実像」 (国立東京博物館) ☆☆☆☆
  「受胎告知」はウフィッツィよりも高い位置に展示されているし、いつもの自然光に近い状態から凝った照明になっていた。なるほど、端正さが強調されたような気がする。会場で「右側から見るんだって」と言う話し声があり、ふ~ん!と鑑賞。後日、NHK番組で確認(笑)。平成館の展示も勉強になること多し。ウフィッツィではサックリと通り過ぎてしまったし(^^ゞ

・「桜 さくら サクラ・2007-花ひらく春」  (山種美術館) ☆☆☆★
   毎年この季節は千鳥ヶ淵の桜と山種の桜で春爛漫を味わう。今年もまた速水御舟「春の宵」を堪能できた♪

・「人間の奥行き-ヴァンジ作品展 2000-2006」 (イタリア文化会館) ☆☆☆☆
  ヴァンジ作品は人間の内面を、立体としての奥行きを通して表現している。その身体表現は空間の中に屹立する個の痛切な祈りであり叫びであり意思である。現代彫刻でありながら、わかりやすく、深く心に喰い込んでくる。

東京ミッドタウン

2007-04-05 23:51:49 | 建築
日曜日、青山ユニマット美術館で「アンドリュー・ワイエス展」を観た帰り、青山墓地の桜を見ながら、ついでとばかり噂の東京ミッドタウンまで足を伸ばしてしまった。かなりミーハーかも(^^ゞ



混んでいなかったらサントリー美術館に寄ろうと思ったのだが、もちろんビルの中は激混み(笑)。美術館は後からゆっくり来ようとあきらめ、サックリとお店など覗いてみる。

近年できた話題のビルの中ではオトナ度が結構高いんじゃないかと思う。和風のお店などもあり落ち着いた雰囲気。原宿の某ショッピングビルや六本木の某ビルより広くて歩きやすいし、高級品から無印良品まであるので、一応庶民の私でもお買い物ができそうで良かった~。さっそく手提げバッグとTシャツを購入(^^;;

さて、これからサントリー美術館を含めた六本木トライアングルがどのような協力をして行くのか、こちらにも期待したいところだ。

山種美術館「桜 さくら サクラ」

2007-04-01 02:36:17 | 展覧会
先週から風邪気味と忙しさが混じって、本当に土曜日が待ち遠しかった~!
ということで、風邪も抜けてきたので、さっそくお花見に(笑)。いや、山種美術館「桜 さくら サクラ」展を観がてらに、千鳥ヶ淵の満開の桜を満喫してきたのだった。

  


さて、やはり今回もお目当ては速水御舟の「春の宵」である(^^ゞ。この作品には画面の中へと惹き込む力が満ちている。小さな画面の中に静かに永遠の時が流れているのではないかと思うほどだ。



はらはらと花びらは降り散る。感嘆するのは薄闇に散る花びらが、確かに時を刻んで地に降りて行く…その絶妙な、まるでコマ落としフィルム映像のような降らせ方である。
観る者の目は花びらを追いながら散り積もる地に降りて行く。更に、積もる花びらから斜め対角線上に伸びる幹と枝を追い、満開の桜の先の細い月に行き着く。すると、その少し下に一片の花びらが舞う。ああ、風が吹いているのだ…と気がつく。その大気の流れを追いながら、また静かに時を刻みながら降りしきる花びらに目は行くのである…。
エッシャーが線により循環する世界を構築したとしたら、御舟は筆先の生むかそけき花びらにより循環する時間を画面に封じ込めたのだと思う。

「春の宵」の隣には同じく御舟「夜桜」が展示されている。こちらは淡い闇に一枝の山桜の花がクローズアップされている。絹地に描く巧みな線と見事な構図とである。格調高く香るような一枝は文句無く素敵だ。



だが、今回、ああ、やはり…と思ったのは制作年だった。「春の宵」は1934年、「夜桜」は1928年。一瞬見ると「夜桜」の方が老成した作風のように思えるが、それは違う。画家として「桜」を通して描きたいものを描き切る技量を持っているは断然「春の宵」の方だからだ。なぁんて、美術ド素人が勝手に断言してしまって良かったのだろうか?どうぞ「春の宵」好きのたわ言とお許しあれ(^^;;;