花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

キンベル美術館(4) レストラン

2007-10-26 00:14:01 | 美術館
旅行疲れの為なのか、ちょっと身体がだるい日が続いている。ブログをサボり過ぎているので、軽くキンベル美術館のビュッフェレストランを紹介しておこう(^^ゞ

◇キンベル美術館(Kimbell Art Museum

先にも触れたが、このレストランはフォートワースの市民に人気のようで、お昼には行列もできていた。私は午後2時のランチタイム終了少し前に飛び込んだので、あまり待つことも無く食事にありつけた。

ランチはビュッフェ形式で、プレートの大・中・小を選び、スープ、サンドウィッチ、サラダのメニューから好きなものを選ぶようになっている。プレートによって値段が違い、私は中を選んだのだが約10ドルぐらいだったと思う。

さて、メニューはどーしようと迷ったが、私の前に並んでいた若い女性3人組が選んでいるのをマネすることにした(^^;。案外正解だったかも。スープはトマトとアボガドがあり、どうやらアボガド人気が見て取れた。ということで、私もアボガドを(笑)。サンドゥッチはハムサンドにして、サラダはビーンズと野菜とフルーツにした。プレートの上にスープカップまで載せるようになっているのにはちょっと驚き。別会計でデザートと飲み物が選べる。アメリカのケーキは甘すぎるのでパスし、飲み物は紅茶を選ぶ。



別にオシャレで気取ったところも無いレストランが何故人気なのだろう?と思いながら席に着いた。お値段的にもリーズナブルなのは了解できたが、多分、そのヘルシーさんが受けているんじゃないかと思った。アボガドの冷製スープもだが、あっさりとスパイシーでカロリーも低め。日本人の口にも合う美味しさがある。「キンベル・クックブック」のレシピもきっとヘルシー料理が多いんじゃないだろうか?



このレストランは2階ギャラリーと中庭を挟む位置にあり、ルイス・I・カーンの自然光を取り入れる設計の妙で、明るくカジュアルな雰囲気になっている。フォートワースは暑いくらいの晴天で、気候がもう少し涼しければ中庭で食べると気持ち良いだろうなぁと思った。

キンベル美術館(3)  CARAVAGGIO 《いかさま師》

2007-10-14 09:47:13 | 美術館
◇キンベル美術館(Kimbell Art Museum

この美術館の圧巻は、左にカラヴァッジョ《いかさま師》、中央にフランス・ハルス《ロンメルポット奏者》、右にジョルジュ・ド・ラ・トゥール《クラブのエースを持ついかさま師》と並ぶ一面の壁かもしれない。

ということで、もちろん、CARAVAGGIO(カラヴァッジョ)《いかさま師》から♪


“The Cardsharps”(1594) Oil on canvas 94.2 x l30.9 cm (拡大はここ

やはり初期の傑作だろうなぁと思う。騙す側に騙される側という有りがちで普遍的な人間模様が、スリリングな緊迫感を孕みながらひとつの画面に凝縮されている。この3人の表情や身振りが実によく練られていて、それぞれがジグザグとした三角構図を連ねて行くことにより、駆け引きの心理模様がスリル満点のドラマとして成り立っている。

更に、全体として見れば安定したピラミッド型構図を取っているにもかかわらず、テーブル角から手前にはみ出すゲーム(バックギャモン?)台が、このカードゲームの危うさを象徴しているように見えた。CARAVAGGIO作品でよく見られる果物籠のヴァニタスを連想させる置き方だ。

さて、まず魅入ってしまうのはゲームに夢中で頬をピンク色に上気させた騙される少年のつるんとしたお肌。羨ましいこと、まるで少女のようだ(笑)。左上方(やや前面)からの照明が少年の頬からトランプ・カードを握る手へと差し込み、眼はそこからストライプの斜めの線を遡り、髭の男が騙す側の相方へ合図する指の数字へと進む。ちなみに皮手袋の質感表現がなかなかに良くって、柔らかくなめした山羊皮のような感じを受ける。淡灰色の手袋から指先が覗いているのがアクセントかなぁ。指先の肌色が男の陽に焼けた顔色と呼応して、カードを覗き込む悪人顔を強調している。で、男のストライプはまた騙す側の少年のベストのストライプに繋がっていて、そこに隠したカードに気付かせる。騙す少年も必死の眼差し(笑)。

この作品がジグザグ型の三角形を重層的に多用しているのがわかるのは、もう一方で、照明が騙される少年のカードを持つ手から騙す少年の左手に当たり、その腕からストライプのベストへと続く三角山が存在することだ。初期CARAVAGGIOの幾何学文法ということだろうか?

で、やっぱりCARAVAGGIOの白って上手くて、騙される少年の襟や袖口のレースの細い縫取り縁取りの繊細な描写なんて芸が細かい。それに騙す少年の白ブラウスのドレープもオシャレ。髭男のベストもだけど、この後ろ向きの少年も結構ファッショナブル(笑)。緑の袖やベストはシルクジャガードっぽくて、特に後ろ姿の背中の線に添った陰影がなまめいているんだよねぇ。観ながらダブリンの《キリストの捕縛》の兵士の腰の線を思い出した(^^ゞ。それからズボン(?)の黄金色の幅広ストライプの光沢表現だが、割りとサックリとした筆致なのに、離れて見ると質感が伝わってくる。この筆致は後年の《マルタ騎士の肖像》を思い出させた。あ、もちろん、暗赤色のテーブルクロスの質感やバックギャモンの描写などにも注目。

それ以上に凄いなぁと思ったのが三人がそれぞれ被る帽子の羽!ふさふさ感が伝わってきて、まじまじと筆致を探ってしまった。微妙な細い線が羽毛の流れを的確に捉えている。特に後ろ向きの少年の羽の淡い諧調が美しく、どんな風に描いているのかなぁと接近(笑)。色を変えながらの羽毛の乱れる繊細な線が観られた。癇癪持ちの画家なのに描く時は根気強いんだからねぇ(^^;;。でも、羽の先の方は絵の具をぐるると薄く塗り伸ばした上に、ちょいちょいといった感じだった(なんと言う表現/汗)。

この《いかさま師》とよく似た題材を扱ったCARAVAGGIO自身の風俗画には、カピトリーニ美術館の《女占い師》とルーヴル美術館《女占い師》があるが、やはり完成度の高さから言えばこの作品に及ばないと思った。当時においても大いに注目を集めた作品であり、模作も多く残され、また、CARAVAGGIOに影響を受けた画家たち(カラヴァッジェスキたち)が競って《いかさま師》やカードゲームを題材にした作品を描いている。同じ壁に並んでいるジョルジュ・ド・ラ・トゥール《クラブのエースを持ついかさま師》もその一連の作品であり、詳細はまた後日扱いたい。

ちなみに、このCARAVAGGIO《いかさま師》は当時パトロンであったデル・モンテ枢機卿が所有していた作品で、絵の裏にはシャンパンのコルク型のような枢機卿の印章が見られる。1627年、枢機卿の死去の際、アントニオ・バルベリーニ・イル・ジョヴァーネ枢機卿に売却された。その後、1892年にシャッラ=コロンナ・バルベリーニ・コレクションの分散により行方不明になっていたが、なんと90年後にスイスの画商のもとで発見。ニューヨークの画商を通じて1987年6月にキンベル美術館の所有となった。当時購入に当たったディレクターのEdmund Pillsburyってかなり御目が高いかも(^^;

【参照】
 ・ミア・チノッティ著「カラヴァッジオ」岩波書店 p31~p33
 ・Denis Mahon(1988年)「Fresh light on Caravaggio’s earliest period: “Cardsharps” recovered」:《the Burlington magazine》cxxx,n,1018,gennaio,pp,10-25
 ・Keith Christiansen(1988年)「Technical report on ‘ The Cardsharps’」:《the Burlington magazine》cxxx,n,1018,gennaio,pp,26-27

キンベル美術館(2)

2007-10-10 04:27:12 | 美術館
◇キンベル美術館(Kimbell Art Museum) 

美術館メインの受付は階段を上った2階にある。階段を挟んですぐ前はミュージアム・ショップ、その隣に噂のカフェ・レストラン。ここのカフェは地元でもかなり評判が良いらしい。ショップでは料理本「The Kimbell Cookbook」まで置いてあった。

ということで、ギャラリーにいざ!

嬉しくなることにオープニングからイタリア古典美術だ♪。ドゥッチオ、ドナテッロ、フラ・アンジェリコと続く。おお、ジョヴァンニ・ベッリーニにティツィアーノのベネツィア派!

ベッリーニ《祝福のキリスト》の夕焼けの光と雲が殊更に美しい。神々しい光と影の効果には惹かれてしまう。キリストの傍らに可愛い白ウサギが居て「再生」を意味するらしい。でも、東方ビザンツ教会ではウサギはキリストの象徴でもあったらしい。ジョヴァンニの兄ジェンティーレがオスマン支配のコンスタンチノープルに出稼ぎに行っているし、ヴェネツィアではビザンツの影響もあるんじゃないかと美術ド素人は勝手に想像しているのだがどうなのだろう??
ベッリーニはその他にも《聖母子像》、近くには義理兄マンテーニャ《洗礼者聖ヨハネのいる聖家族像》の構図や人物の彫像的立体感、ティツィアーノ《聖女と幼い洗礼者聖ヨハネのいる聖母子像》の聖母(衣装)の真紅の深さや風景、それぞれの「らしさ」に魅了されながらも微笑んでしまう。

  
Giovanni Bellini (1430–1516)     Andrea Mantegna (1431–1506)
《Christ Blessing》          《The Madonna and Child with Saints Joseph, Elizabeth, and John the Baptist》


Tiziano Vecellio (1488–1576)
《The Madonna and Child with a Female Saint and the Infant Saint John the Baptist》


北方絵画ではフランドル派ヤン・ホッサールトの《ヘンドリック3世の肖像画》が素晴らしい!その質感あふれる緻密な描写、やはりファン・エイクの流れを汲んでいるなぁと見惚れる。画像ではよくわからないかもしれないが、絵に描かれた額縁の前にヘンドリック3世が居て一種のトロンプイユ効果があり、さらに似たような本当の額縁に収まっているのが面白い。
ドイツのクラナッハ《パリスの審判》のパリスは三美神の迫力に腰を抜かしているみたいで楽しい(笑)。

   
Jan Gossaert, called Mabuse(1478–1532)   Lucas Cranach the Elder (1472–1553) 
《Portrait of Hendrik III, Count of Nassau-Breda》  《The Judgment of Paris》


ということで、それではルネサンスからバロックのコーナーへ…♪

キンベル美術館(1)

2007-10-09 16:41:56 | 美術館
◆キンベル美術館(Kimbell Art Museum) (FORT WORTH,TEXAS)




ルイス・I・カーン(Louis Isadore Kahn)設計のキンベル美術館の外観はかまぼこを並べたような造形デザインで、材質はコンクリート打ちっぱなし。訪問したこの晩夏の季節、なみなみと湛えられたプールの水面が涼を呼ぶ。飼い主と散歩に来ていた犬が何度かこのプールの水を飲んでいた。(建築紹介はこちら

さて、この美術館の所蔵作品と言ったら珠玉の粒揃いで、よくぞ収集できたものだと驚くほど。何しろCARAVAGGIOの名作《いかさま師》まであるのだからね(^_-)-☆

その珠玉の一端は入り口すぐ右側に展示されている日本美術でも良くわかる。伊藤若冲に曽我蕭白、乾山の茶碗!左には繊細な描写の中国古典絵画が並ぶ。欧州古典絵画の宝庫というイメージが良い意味で裏切られる喜び!

  
伊藤若冲《寿老人》     曽我蕭白《鍾馗と蜘蛛》


茶陶 左の茶碗は尾形乾山作

でも、この所蔵品の質の高さと充実ぶりから想像もできないのだが、何とこの美術館は今年で創立35周年という歴史の浅い美術館なのだ…信じられないっ!!(・.・;)

フォートワース現代美術館

2007-10-08 15:16:26 | 美術館
フォートワースは不思議な街だ。宿泊したHホテル近くでは土曜日夜は遅くまで賑わっていたが、日曜日の午前、すぐ近くの電車&バスの駅舎は無人駅でなないかと疑うくらいひっそりと静まっていた。

ダウンタウンから少し離れている美術館地区へはバスで向うことにした。バスの運転手は体格の良い黒人女性で、そっけないけど親切に美術館の停留所で降ろしてくれた。日曜日はキンベル美術館よりフォートワース現代美術館の方が開館時間が早い。ということで、開館を待ち構えて先に安藤忠雄氏の設計による現代美術館へ。



◆フォートワース現代美術館(The Modern Art Museum of Fort Worth

入り口側からはシンプルなガラス構造の建物に見えるが、中に入ると明るい陽光と反対側の広いプール池水面からの反射光が気持ち良い空間を創り出していた。水面に浮かぶ美術館という風情かも。どうせ現代美術だからなぁとクロークにカメラも一緒に預けてしまい、美術館内部の写真を撮れなかったのが残念なくらい!(こちらを参照)


建築デザインの秀逸性だけでなく、展示作品に合わせた展示空間なのではないかと思うようなオーダーメイド感覚に溢れており、次はどんな作品が、どんな空間が観られるのだろうかとワクワクする。展示室ごとに、通路や階段ごとに、大きく開かれた窓から違った風景が見られるのだ。ピカソやらポロックやら、現代美術作品苦手の私にも楽しめるのだから凄い(笑)。

ちなみに、開館直後から水面に張り出したか円形のカフェに人が入っていたから、地元でも人気のスポットなのではないかと思う。そう言えば安藤氏は大阪に事務所を持っていたと記憶しているが、大阪は水の街だし、中之島あたりのイメージがなんだか重なってしまうなぁ。




ところで、奇遇にも何と「カルティエ・コレクション展」でも来ていたロン・ミュエクの企画展をやっていた。皺や皮膚の下の血管まで透いて見える肌の色、睫毛や毛穴まで再現してしまう超リアルな大小フィギュアには感嘆してしまう!それぞれの孤独さが作品(人形)の表情や佇まいから滲んできて、ミュエクの監察眼の鋭さが窺えるのだ。


さて、次はそろそろ本目的であるこれまた有名な建築家ルイス・カーン(Louis Isadore Kahn)によるキンベル美術館に移動することにした。

帰国報告

2007-10-08 01:12:18 | 海外旅行
ようやく戻ってまいりました(ほっ)。今回はアメリカ3週間の旅でした。会社から勤続○○周年の連続休暇と補助(旅行券)を貰えるので、未見の米国CARAVAGGIO追っかけ、及び、美術館めぐりの旅を企画したのです。ところが、旅行直前に暑さによる体調不良で、殆ど下調べをする体力気力も無く、またしても行けば何とかなる状態で出かけました。まぁ、こうして無事に帰国できたのですから何とかなったことは確かですが、やはりボロボロ失敗なんかあったり…(>_<)




ということで、今回巡った先は…

フォートワース
 ・キンベル美術館
 ・フォートワース現代美術館
カンサスシティ
 ・ネルソン・アトキンズ美術館
デトロイト
 ・デトロイト美術館
シカゴ
 ・シカゴ美術館
フィラデルフィア
 ・バーンズ財団美術館
 ・フィラデルフィア美術館
ワシントン
 ・ナショナル・ギャラリー
 ・フィリップス・コレクション
 ・フーリア美術館
 ・国立自然史博物館
 ・レンウィック・ギャラリー
ニューヨーク
 ・メトロポリタン美術館
 ・フリック・コレクション
 ・ピアモント・モーガン・ライブラリー
 ・ニューヨーク近代美術館
 ・グッゲンハイム美術館
 ・クーパー・ヒューイット国立デザイン美術館
プリンストン
 ・プリンストン大学美術館
ハートフォード
 ・ワズワース・アテネウム美術館
ボストン
 ・ボストン美術館
 ・イザベラ・スチュアート・ガードナー美術館
ケンブリッジ(ハーヴァード大学)
 ・フォッグ美術館
 ・ブッシュ・ライジンガー美術館
 ・アーサー・サックラー美術館

アメリカは広すぎて移動がとても大変でした。欧州とは違い鉄道網が充実していないので、旅行者には小回りが利かなく無駄な時間を労したり、あきらめたり、もう泣くことばかり(涙)。今回の経験を次回(なんてあるのだろうか?)に繋げたいと前向きに思っていますが、本当に疲れました!