花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

山種美術館「桜 さくら サクラ」

2007-04-01 02:36:17 | 展覧会
先週から風邪気味と忙しさが混じって、本当に土曜日が待ち遠しかった~!
ということで、風邪も抜けてきたので、さっそくお花見に(笑)。いや、山種美術館「桜 さくら サクラ」展を観がてらに、千鳥ヶ淵の満開の桜を満喫してきたのだった。

  


さて、やはり今回もお目当ては速水御舟の「春の宵」である(^^ゞ。この作品には画面の中へと惹き込む力が満ちている。小さな画面の中に静かに永遠の時が流れているのではないかと思うほどだ。



はらはらと花びらは降り散る。感嘆するのは薄闇に散る花びらが、確かに時を刻んで地に降りて行く…その絶妙な、まるでコマ落としフィルム映像のような降らせ方である。
観る者の目は花びらを追いながら散り積もる地に降りて行く。更に、積もる花びらから斜め対角線上に伸びる幹と枝を追い、満開の桜の先の細い月に行き着く。すると、その少し下に一片の花びらが舞う。ああ、風が吹いているのだ…と気がつく。その大気の流れを追いながら、また静かに時を刻みながら降りしきる花びらに目は行くのである…。
エッシャーが線により循環する世界を構築したとしたら、御舟は筆先の生むかそけき花びらにより循環する時間を画面に封じ込めたのだと思う。

「春の宵」の隣には同じく御舟「夜桜」が展示されている。こちらは淡い闇に一枝の山桜の花がクローズアップされている。絹地に描く巧みな線と見事な構図とである。格調高く香るような一枝は文句無く素敵だ。



だが、今回、ああ、やはり…と思ったのは制作年だった。「春の宵」は1934年、「夜桜」は1928年。一瞬見ると「夜桜」の方が老成した作風のように思えるが、それは違う。画家として「桜」を通して描きたいものを描き切る技量を持っているは断然「春の宵」の方だからだ。なぁんて、美術ド素人が勝手に断言してしまって良かったのだろうか?どうぞ「春の宵」好きのたわ言とお許しあれ(^^;;;