花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

エステンセ図書館「Parole Sacra(聖なる言葉)」展 超サクッと感想。

2024-08-31 17:14:20 | 展覧会

なんやかんやで、去年(2023年)秋の北イタリア旅行記の続きを書きそびれているが、国立西洋美術館「写本」展の感想ついでに、旅程の順番無視でモデナのエステンセ図書館「Parole Sacra(聖なる言葉)タナハ-聖書-コーラン」展について触れたいと思う。

モデナのエステンセ美術館「Ter Brugghen(テル・ブリュッヘン)」展にはボローニャのFさんと一緒に観に行ったのだが、Fさんが「ちょうどエステンセ図書館で特別写本展が開催されているから、ぜひこちらも観ましょう!」と案内してくれたのだ。(Grazie!! >Fさん)

「テル・ブリュッヘン展」の入口

で、「テル・ブリュッヘン展」を観終えて昼食をとり、図書館展示室の開館時間に合わせ、美術館と同じ建物内にあるエステンセ図書館(Biblioteca Estense Universitaria)に移動した。

・「Parole Sacra(聖なる言葉)タナハ-聖書-コーラン」展

https://gallerie-estensi.beniculturali.it/events/parole-sacre-tanakh-bibbia-corano/

「神の言葉が受け継がれ、広まった多くの貴重な形を証明しています。」

エステンセ図書館(Biblioteca Estense Universitaria)展示室(sala Campori)

「展示されている写本の中では、《ボルソデステの聖書》が際立っており、極めて例外的に一般に展示されています。1455年から1461年にかけて作られたこの作品は、公爵の文化政策の証であり、フェラーラに対する彼の権力を証明するステータスシンボルといえるものでした。実際、フェラーラのミニチュアの最高傑作であると同時に、イタリア・ルネサンス期のミニチュアの絶対的な傑作でもあります。」(公式サイトより)

ということで、2冊の《ボルソデステの聖書》が展示されていた。国立西洋美術館「写本展」のレオネッロ・デステの《レオネッロ・デステの聖務日課書》零葉にはエレガントさがあったが、《ボルソ・デステの聖書》は彩飾過多でかなり煌びやかである。

《ボルソ・デステの聖書》(1455-1461年)(146 di 623 • 072V - MS.V.G.12 / 147 di 623 • 073R - MS.V.G.12)

※ご参考↓:上記《ボルソ・デステの「聖書」》全ページのデジタル画像

https://edl.cultura.gov.it/item/0k53ezoojo

《ボルソ・デステの聖書》(1455-1461年)(198 di 585 • 098V - MS.V.G.13 / 195 di 585 • 097R - MS.V.G.13)

※ご参考↓:上記《ボルソ・デステの「聖書」》全ページのデジタル画像

https://edl.cultura.gov.it/item/yzjgxqd9r7

その他に、ヘブライ語聖書のタナハも2冊...

《タナハ》

《タナハ》

アラビア文字のコーランも2冊....

《コーラン》

《コーラン》

「一神教では、言葉と聖書の間には、伝達や啓示の異なる形式に関係なく、解けない絆があります。神は言葉で世界を創造し、言葉の中で彼は受肉し、言葉を通じて彼は預言者に自分自身を明らかにします。この理由から、偉大な一神教は、神聖なテキストを書くという物質的な行為を通じて、言葉の拡散に生きてきました。」(公式サイトより)

展示数は少なかったが、それぞれの個性ある聖書は彩飾のあり方も異なり、私的にも興味深く観ることができた。


国立西洋美術館「写本」展 サクッと感想(2)

2024-08-27 22:14:37 | 展覧会

今回の写本展は「零葉」を中心とした展示だったが、最終章に1冊の「写本」《ガブリエル・ケーロの貴族身分証明書》が展示されていた。

《ガブリエル・ケーロの貴族身分証明書》スペイン、グラナダ(1540年)

枠装飾には金地に色鮮やかな動植物が静物画風に描かれているので、どう見ても南ネーデルラント=フランドル風であり、すなわちイスパノ・フラメンコ様式のように思われた。

というのも、実はこの《ガブリエル・ケーロの貴族身分証明書》とよく似た写本を以前に観ていたのだ。拙ブログでも書いたが、第8回「西洋中世学会」の企画展示「さわって体験 中世写本 とその周辺」展に出展されていた《神聖ローマ皇帝カール5世発行の爵位証書》である。

https://blog.goo.ne.jp/kal1123/e/16050d0b44ee78bf47c47665c690e721

《Niculas de Campooへの神聖ローマ皇帝カール5世発行の爵位証書》発行地:スペイン、バリャドリッド(1550年)八木健治氏「羊皮紙工房」蔵

八木健治氏の「羊皮紙工房」サイトによると(拡大写真も見られます)

https://youhishi.com/medieval_manuscripts_gallery#toc1

「金泥で塗られた欄外装飾は、「イスパノ・フレミッシュ」(スペイン+フランドル)様式。フランドルのゲント・ブルージュ様式を踏襲し、動植物が立体的に描かれています。」とあった。

内藤氏の写本も八木氏の写本も、両者とも「装飾文字のD」から続いて「ON CARLOS」の文字が描かれている。すなわち、スペイン国王 Don Carlos=カルロス1世(カール5世)なのだ

まぁ、スペイン王国は正式にはカルロスと母のファナとの共同統治であり、公文書のサインは女王フアナとカルロス1世の2つのサインが添えらるそうだ。しかし、ファナはトルデシリャス修道院に幽閉なので、やはりカルロス1世が前面に出るいうことになるのだろう。

《カスティーリア女王ファナ1世の印章》

上↑の展示印章の表記が「カスティーリア女王」とあるが、スペイン王国成立(1516年)以前の印章なのだろうか?? 図録を(購入せず)読んでいないので私的に謎である

さて、また、展覧会の最後の方に興味深い零葉があった。『クレメンス集』の余白部分に注釈を書き込んでるのだが、それも図形デザインの中に書き込むという洒落たことをしている

《教皇クレメンス5世およびヨハンネス22世『クレメンス集』(ヨハンネス・アンドレアエの注釈を伴う)零葉》フランス南西部、おそらくトゥールーズ(1330-50年頃)

当時は枠外余白部分に注釈や感想(更には似顔絵、いたずら書きまで)など書き込むことが普通に行われていたのかもしれない。

というのも、以前、拙ブログで「ボッカッチョの余白書き」として、2013年秋にラウレンツィアーナ図書館(フィレンツェ)で観た「BOCCACCIO AUTORE E COPISTA」展に触れたことがある。

https://blog.goo.ne.jp/kal1123/e/5955ebb50d138b6e90ade5aa4b7590f1

私の撮った写真は不鮮明だったが、注目すべき画像をネットで見つけたのでコピペ紹介したい

ジョヴァンニ・ボッカッチョ自筆原稿《ラテン語雑集(アンソロジー)》(14世紀)ラウレンツィアーナ図書館(フィレンツェ)

私見だが、ボッカッチョの方がアンドレアエよりもデザイン的に凝っているし、本文を含めぜーんぶボッカッチョの自筆というのも凄いんじゃないかと思うのだけどね

ということで、様々な種類の「写本」の世界を勉強するとともに、内藤氏の情熱をひしと感じられる素晴らしい「写本」の世界を堪能できた展覧会だった。


国立西洋美術館「写本」展 サクッと感想(1)

2024-08-25 22:41:03 | 展覧会

国立西洋美術館「内藤コレクション 写本-いとも優雅なる中世の小宇宙」展を観た感想をサクッと書きたい。6月に観たのに、すっかり遅ればせの感想文となってしまった

https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2024manuscript.html

2019年秋の版画素描展示室の「写本」展を観て、内藤コレクションの概要を知ったつもりだったが、今回の展覧会ではその膨大なコレクション内容に驚いてしまった。内藤裕史氏のコレクション形成への情熱がその一枚の零葉からも伝わって来るようだった。

オープニングは内藤氏が最初に購入した作品のひとつ《詩編零葉》が展示されていた。

《詩編零葉》フランス北部、パリあるいはアミアン司教区(?)(1250-60年)

装飾もシンプルで色遣いも抑えた上品な零葉で、内藤氏が惹かれたのもわかるような気がする。

展覧会の章立ては....

Ⅰ)聖書、Ⅱ)詩編集、Ⅲ)聖務日課のための写本、Ⅳ)ミサのための写本、Ⅴ)聖職者たちが用いたその他の写本、Ⅵ)時祷書、Ⅶ)暦、Ⅷ)教会法令集・宣誓の書、Ⅸ)世俗写本

それぞれの章の展示作品がほぼ年代順で、制作地(国・地方)も表記されていたので、年代が下るにつれ彩飾が美麗になっていく様や、国や地方によ彩飾の違いや、同時代における彩飾様式の国際化が伺えたり、私的にも彩飾写本の展開を勉強できる貴重な機会ともなった。

リュソンの画家(彩飾)《時祷書零葉》フランス、パリ(1405-10年頃)

上記↑のリュソンの画家の華やかな枠装飾など、いかにもパリの写本だなぁと思う。クリスティーヌ・ド・ピザン工房を想起させるものがある。

で、私的に嬉しかったのは《レオネッロ・デステの聖務日課書》零葉だった。

フランチェスコ・ダ・ゴディゴーロ(写字)、ジョルジョ・ダレマーニャ(彩飾)《レオネッロ・デステの聖務日課書》零葉(部分)イタリア・フェッラーラ(1441-48年)

レオネッロ・デステ(Leonello d'Este,1407-1450)時代の写本は麗しくもエレガントだったのだなぁとしみじみ見入ってしまった。というのも、ボルソ・デステ(Borso d'Este、1413–1471) 時代になると彩飾も過剰になるので、私的にレオネッロの趣味の良さに惹かれてしまうところがある

それとは別に、下記↓のようなヘントやブルッヘを中心とした南ネーデルラントで流行した枠装飾の展開が面白い。

《時祷書零葉》南ネーデルラント(1500年頃)

解説には植物モチーフを散りばめたトロンプ・ルイユ風とあったが、私的には枠装飾の静物画的展開を見てしまう。例えばマリー・ド・ブルゴーニュの時祷書の画家の静物画的志向をも想起するのだが、自然観察とリアルな細密描写というネーデルラント的展開がとても興味深い。


九州国立博物館「長沢芦雪」展サクッと感想。

2024-08-16 17:04:16 | 展覧会

遅ればせながら、九州国立博物館「生誕270年 長沢芦雪-若冲、応挙につづく天才画家」展を観た感想をサクッと書きたい。(展覧会チケットに感謝です!!>山科さん)

https://www.kyuhaku.jp/exhibition/exhibition_s71.html

※出品目録:https://www.kyuhaku.jp/exhibition/img/s_71/exhibition_s71.pdf

事前にゲストの山科さんから、後期展示では芦雪作品だけでなく若冲《象と鯨図屏風》も展示されるとの情報を頂いていたが、やはり福岡行きの主目的は「ローマ展」のカラヴァッジョだったから、泣く泣く前期展示を観ることとなった。どうみても後期の方が見応えありそうな内容なのだよね

とは言え、久しぶりに芦雪の躍動感溢れる大画面作品を色々と観ることができたし、更に最後の章では当時の京都画壇の充実ぶりに想いを馳せてしまった。

もちろん、長沢芦雪(1754-1799年)は辻惟雄先生の「奇想の系譜」でも挙げられた奇想の画家として有名ではあるが、私的に師匠の丸山応挙(1733-1795年)が元々好きなので、大胆な作風の芦雪が応挙の高弟という意外性が好もしい。

長沢芦鳳《長沢芦雪像》(江戸時代 18世紀)千葉市美術館

今回の前期展示で、一際目が吸い寄せられたのは無量寺の《虎図襖》ではあった。観者の眼前に飛び込んで来るような迫力の大画面である。

長沢芦雪《虎図襖》(1786年 天明6年)和歌山 無量寺

が、以前にも観ているので、私的に面白く観たのは西光寺《龍図襖》だった。

長沢芦雪《龍図襖》(江戸時代 18世紀)島根 西光寺 

何というか、もちろん勇壮な龍ではあるのだが、襖に収まるように無理やり身体を(特に尻尾部分!)丸め曲げてみましたぁ~的な、大胆な筆致と墨筆の淡さと掠れ具合も相まって、ユーモラスな風情を感じてしまったのだ

で、嬉しいことに芦雪は師匠応挙の仔犬の愛らしさも引き継いでいる

長沢芦雪《布袋・雀・犬図》(江戸時代 18世紀)和歌山 無量寺

長沢芦雪《仔犬図屏風》(江戸時代 18世紀)江戸千家・蔵

それで、久々に思い出したのだ。ロサンゼルスのカウンティ美術館で観た丸山応挙《Puppies among Bamboo in Snow》を。やはり仔犬もより写実的なのである。

丸山応挙《雪竹仔犬図屏風(勝手な和訳です), Puppies among Bamboo in Snow》左隻(1784年)カウンティ美術館(ロサンゼルス)

丸山応挙《雪竹仔犬図屏風( Puppies among Bamboo in Snow)》左隻一部拡大

ご参考:https://collections.lacma.org/node/2266592

ということで、今回の生誕270年記念展覧会でも、長沢芦雪の画家としての力量は美術ド素人の私も了解することができた。でも、やはり好きなのは師匠の丸山応挙の方だなぁと思う(ごめんね) 。なにしろ、出会いが上野で観た《氷図屏風》(大英博物館)だったのだから...。


東北歴史博物館「大シルクロード展」サクッと感想。

2024-07-17 00:42:41 | 展覧会

遅ればせながら、東北歴史博物館「大シルクロード展」を観た感想をサクッと書きたい

※「世界遺産 大シルクロード展」作品リスト

https://www.thm.pref.miyagi.jp/wp-content/uploads/2024/01/9430fb15683979ad103672bc3956d438.pdf

いにしえの「シルクロード」は、私的には憧れとロマンが詰まった地である。イメージするところは石田幹之助「長安の春」と岑参(715-770年)「胡笳歌 送顏真卿使赴河隴」辺りなのだけれど

君不聞胡笳聲最悲,紫髯眼胡人吹。
吹之一曲猶未了,愁殺樓蘭征戍兒。
涼秋八月蕭關道,北風吹斷天山草。
崑崙山南月欲斜,胡人向月吹胡笳。
胡笳怨兮將送君,秦山遙望隴山雲。
邊城夜夜多愁夢,向月胡笳誰喜聞。

閑話休題、実際のところは砂埃まみれのソグド人、ウイグル人、中国人などの商人たち、それに、荷を積むラクダなどの行き交う、広大で過酷な道程だっただろうと想像する。

《駱駝》(唐・8世紀)洛陽博物館

《尖頂帽》(前8-前3世紀)新疆ウイグル自治区博物館

上↑写真のフェルト帽は砂漠の乾燥地だからこそ、そのままの姿で発掘されたらしい。西洋の時代的には古代ギリシア時代頃だろうか?

で、興味深い青銅造りの騎馬遊牧民族像が展示されていた。

 

《男子跪坐像》(前5-前3世紀)新疆ウイグル自治区博物館

解説によると、「腰布のみを着け肉体を強調する表現は同時代のギリシア文化の影響とも考えられている。2000年以上前のユーラシア大陸の東と西の文化がうかがえる貴重な作品である」とのこと。なにやら頭の被り物もギリシア戦士の兜っぽく見えるし、なかなかに興味深い。

更に目を惹かれたのは、綴織壁掛けだった!!驚くのは武人像の顔の立体的写実描写であり、例えば、ポンペイからの出土品と言われても信じてしまいそうだ

《半人半馬および武人像壁掛》(前2-後2世紀)新疆ウイグル自治区博物館

解説によると、「被葬者のズボンの一部だったが、もとは大きな西方の綴織技法で制作された壁掛であった。上部には半人半馬を表し、下部には武人の頭部が見られる。顔の表現は写実的で、糸色の濃淡により立体感を見事に表現している。」とのこと。西と東の文化・物流の痕跡がシルクロードから見えてくる。

更に私的に興味深かったのは、粒金の装飾品であった。

  

《金製飾り(3点)》(吐蕃・7-9世紀)青海藏医薬文化博物館

地中海世界、特に古代エトルリアの粒金細工は有名である。その粒金細工の技術がシルクロードを経て吐蕃(チベット)まで伝わっていたのが確認できたような気がした。すると、伝弘法大師(空海)所持《金念珠》(唐・9世紀)も了解できるのだよね。

https://blog.goo.ne.jp/kal1123/e/73ed895c106a01022d25af6f143b8878

この展覧会ではユーラシア大陸の東と西を結んだシルクロードの様相が、西域の様々な出土品から身近に感じられた。故に、現代ウイグルやチベットの人々の文化が破壊されるのは心が痛む。


5月・6月に観た展覧会。

2024-07-06 00:13:25 | 展覧会

体調に波があり、ブログを休んでいた。ということで、体調の良いときは展覧会も観に行っていたのだった

・「大シルクロード展」(東北歴史博物館)

thm.pref.miyagi.jp/exhibition/7253/

中国の洛陽、西安、蘭州、敦煌、新疆などの博物館、研究機関の所蔵するシルクロード文物が展示。なかなかに面白かったので、あとでピックアップ感想を書きたい。

 

・「皇室のみやび」(三の丸尚蔵館)

https://pr-shozokan.nich.go.jp/miyabi/

お目当ては、若冲《動植綵絵》だけでなく、狩野永徳 《唐獅子図屏風》!!やはり安土桃山の威風が感じられる逸品だった

 

・「茶の湯の美学-利休・織部・遠州の茶道具」(三井記念美術館)

https://www.mitsui-museum.jp/press/release/release_240418.pdf

茶道具から利休・織部・遠州の美意識の違いがよくわかる展覧会だった。やはり利休の美意識はピカイチだと思う

 

・「写本-いとも優雅なる中世の小宇宙」(国立西洋美術館)

https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2024manuscript.html

内藤コレクション形成の歴史とともに、装飾写本の種類や時代にともなう変化も勉強でき、とても面白かった!!あとで、ピックアップ感想を書きたい。

 

・「ブランクーシ-本質を象る」(アーティゾン美術館)

https://www.artizon.museum/exhibition_sp/brancusi/

ロダンの工房をすぐやめた理由が了解できた。ブランクーシは「彫る」彫刻家であり、彫り進んで抽象化された「鳥」は、ド素人眼にもすぐに「鳥」だとわかるところが凄い


「大阪・関西万博」にカラヴァッジョ《キリストの埋葬》が!!

2024-07-01 20:16:58 | 展覧会

ゲストのむろさんさん情報によると、来年(2025年4月13日~10月13日)開催予定「大阪・関西万博」のヴァチカン出展パビリオンに、なんと!カラヴァッジョ《キリストの埋葬》が展示されるようだ!!(むろさんさん情報に感謝!!)

https://www.cbcj.catholic.jp/2024/05/10/29636/

カラヴァッジョ《キリストの埋葬》(1602-04年)ヴァチカン絵画館

「バチカン政府代表、フィジケッラ福音宣教省長官補(大司教)は、大阪・関西万博のバチカン・パビリオンに、バチカン美術館所蔵、カラヴァッジョによる「キリストの埋葬」を展示することを発表されました。バチカン・パビリオンは、「美は希望をもたらす」をテーマに、イタリア・パビリオン内にて展示を行います。」

https://www.facebook.com/AmbasciataGiapponeSantaSede/posts/449219187463642?ref=embed_post

コロナ禍のため、2021年に開催予定だった「カラヴァッジョ《キリストの埋葬》展」が中止になり、悔しい思いをした。その埋め合わせなのかもしれないが、とにかく無事展示開催されることを祈りたい。


福岡市美術館「永遠のローマ展」サクッと感想(3)

2024-03-20 19:59:36 | 展覧会

絵画コレクションでは、他に興味深い作品に目を止めてしまった。なにしろ「パルマで活動したフランドルの画家(16世紀後半)とある。

パルマで活動したフランドルの画家(16世紀後半)《洗礼者聖ヨハネ》(16世紀末)

特に眼を惹くのは聖ヨハネが紅緞子(?)を敷いていることで、その描写も含めて、ああ...フランドルだなぁと頷いてしまう。聖ヨハネの造形やポーズについてはパルミジャーニーノの影響は納得だが、やはりクリクリ巻き毛や斜め対角線構図などに、私的にパルマと言えばコレッジョからの影響も想起してしまうのであった

ちなみに、パルマ公オッターヴィオの妃マルゲリータ(1522-86年)はハプスブルグ家カール5世(カルロス1世)の庶子(フランドル育ち)であり、スペイン領ネーデルラント総督(1559-1567年)も務めた。後に息子のパルマ公アレッサンドロもネーデルラント総督を務めた(1578年 - 1586年)ので、パルマ公国領でフランドル画家が活動するのはとても了解できるのだ。

で、教皇ウルバヌス8世の肖像である。

ピエトロ・ダ・コルトーナ《教皇ウルバヌス8世の肖像》(1624-27年頃)

パラッツォ・バルベリーニにはコルトーナの描いた有名な天井画がある。なので、コルトーナがマッフェオ・バルベリーニの肖像を描いたのは当然だろう。左手に手紙(書類?)を持つところなんてカラヴァッジョ作品を想起させるけど、きっと教皇はこのポーズがお気に入りだったのかも

この作品でやはり目を惹かれるのはゴージャスなレースの描写で、もしかしてウルバヌス8世はレース好き(お洒落?)だったのかも?と思ってしまったのだ。

というのも、同じカピトリーノ美術館にある《教皇ウルバヌス8世の彫像》を想起したからである。

ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ《教皇ウルバヌス8世の彫像》(1635-40年)カピトリーノ美術館

ベルニーニもレースを描写しているのだよね。まぁ、ベルニーニとしては硬い表現だけど、こちらもレースの波うち具合とか頑張っているなぁと思ったのだ

ということで、サクッと感想はここまでで...。


福岡市美術館「永遠のローマ展」サクッと感想(2)

2024-03-04 22:24:53 | 展覧会

さて、まさかのカラヴァッジョ《洗礼者聖ヨハネ》来日である。福岡だけの展示というのは狙ったものなのだろうか? まぁ、カラヴァッジョ好きは遠路遥々でも観に行くしね。ということで、《洗礼者聖ヨハネ》久々の再会を果たしたのだった。眼福

で、嬉しいことに、展覧会場は一部を除き写真撮影が可であり、《洗礼者聖ヨハネ》のクリアな写真も撮ることができた

カラヴァッジョ《洗礼者聖ヨハネ》(1602-03年)カピトリーノ美術館

チリアコ・マッティのために描かれた作品にはカラヴァッジョの瑞々しい勢いを感じる。子羊(?)を抱く聖ヨハネは屈託のなさそうなポーズをとり、観者に向かって微笑んでいるように見える。

ミケランジェロのシスティーナ天井画《イニューディ》からのポーズ引用が指摘されている。ベルリンの《勝ち誇るアモル》もだが、ポーズ引用だけではなく両者がチェッコ・デル・カラヴァッジョがモデルとされている点でも共通しているのが興味深い。

ちなみに、2006年のデュッセルドルフ「CARAVAGGIO ―Auf den Spuren eines Genies 」展では、この《洗礼者聖ヨハネ》とベルリンの《勝ち誇るアモル》が向かい合うように展示されていた

※ご参考:https://blog.goo.ne.jp/kal1123/e/81aae4cc18103fa9b365a27d750b80ac

さて、この《洗礼者聖ヨハネ》には《笑うイサク》説がある。通常描かれる洗礼者聖ヨハネの持物の欠如とともに、抱き寄せているのが子羊ではなく角のある雄羊であることもその一因で、更に大元の根拠として、左下部に描かれているのが赤い炎でありアブラハムの燔祭(イサクの犠牲)の残り火であるとの説である。故に、寸でのところで命拾いをしたイサクが喜んで笑っていると...

今回の会場照明はしっかり観察できる明るさがあったので、接近して写真も撮った。遠目には赤布がはみ出したのか?とも見えるのだが、じっくり見るとそうではなく、石か薪を描いた上から赤が塗られているのだ。それが「炎」だと言われれば確かにそう見えるのが不思議である。

美術ド素人の私的見解を言えば(「The Burlington Magazine」掲載論考を読んで以来だが)、案外《笑うイサク》説も妥当なように思えるのだ。カラヴァッジョの人を煙に巻くscherzoのような気がするしね

で、下↓写真はカラヴァッジョによるレプリカ《洗礼者聖ヨハネ》(ドーリア・パンフィーリ美術館・所蔵)である。

カラヴァッジョ《洗礼者聖ヨハネ》(1602-03年)ドーリア・パンフィーリ美術館

興味深いことに、ドーリア・パンフィーリ作品の左下部分には赤い炎が見えない。でもね、このレプリカ作品も本当に眼を喜ばせてくれる良い作品なのだよ

ということで、続く...。


カラヴァッジョ《キリストの笞打ち》ドンナレジーナ(ナポリ)で特別展示。

2024-03-01 14:40:32 | 展覧会

ボローニャのFさんから展覧会情報を頂いた(Grazie!!>Fさん)

ルーヴル美術館に貸与されていたカラヴァッジョ《キリストの笞打ち》がナポリに戻ってきた。しかし、今回展示されるのはカポディモンテ美術館ではなく、ドンナレジーナ教区博物館(ドンナレジーナ・ヴェッキア)なので、ナポリに観に行く方は要注意だ。(ピオ・モンテ・ミゼリコルディアの近くでもある)

https://www.youtube.com/watch?v=kJbSBDY8rcQ

・会期:2024 年 2 月 28 日(水)~ 年5 月 31 日(金)

・会場:ドンナレジーナ教区博物館(Complesso Monumentale Donnaregina - Museo Diocesano Napoli)

カラヴァッジョ《キリストの笞打ち》(1607-08年)カポディモンテ美術館

《キリストの笞打ち》は元々サン・ドメニコ・マッジョーレ教会のフランキス礼拝堂のために描かれた祭壇画であり、1980年以降はカポディモンテ美術館に所蔵されるようになった。

カポディモンテ美術館では暗い特別室に照明効果を加えた展示をしているが、今回のドンナレジーナでの展示は(動画を見る限り)細部まで観察するのに適しているように思える。