花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

ローマ「CARAVAGGIO(カラヴァッジョ)展」(2)

2010-04-18 19:21:46 | 展覧会
前回の(1)の照明について、ひとつ付け加えたいことがある。

展示場内が薄暗く、スポットライト照明だったことは(1)でも触れたが、実はカラヴァッジョ作品上も光と影が錯綜し、作品に描かれた光源は差し込む先の底辺にほの暗い光と影となって落ちる。作品に向かいながら底辺部分を見つめると、地面だったり椅子であったり、作品に描かれたほの暗い光と会場内の薄暗い明かりとが溶け合い、一体化し、作品の中にまるで飲み込まれるような心地がしたのだ。地面に生える下草の緑など、会場のスポットライトに照らされ、地続きに生えているかのように見えた。

カラヴァッジョの描く劇的場面はすぐ目の前で起こっているかのようなリアルさで迫ってくる。カラヴァッジョは作品の場面と観る者との垣根を取り払おうとした。画家は光と影、遠近法やら短縮法やら、あらゆる手段を使って二次元空間から3D画像のように飛び出そうと画策する。そのうえ、今回の展覧会ではその照明効果により、場面の空気が、光が、画面から流れ出し、会場と融合し、私自身がいやおう無く巻き込まれ、まんまと画家の(展覧会演出者の)企み通り、目撃者となったのだった。してやられた?(笑)


さて、簡単な会場内の展示構成図を作成してみた。

展示階は2階に別れていたので、取りあえず下の階を1階、上の階を2階と呼ぶことにする(事際はその間にカフェのある階があったりする)。
また、時期により作品の展示替えがある予定だ。


<1階の展示構成>

     


<2階の展示構成>



ローマ「CARAVAGGIO(カラヴァッジョ)展」(1)

2010-04-15 00:26:40 | 展覧会
ローマのスクデリエ・デル・クイリナーレ(Scuderie del Quirinale)で開催されている「CARAVAGGIO(カラヴァッジョ)展」を観てきた。


会場に向かう階段(CARAVAGGIOの文字が今回の照明を象徴しているかのようだ)

スクデリエの会場では、作品は2つの階に分かれて展示されている。ゲストのdesiderioさんのレポートにもあったように、展示会場は薄暗いものの、作品の光と影を浮き出させるためのスポットライト照明が効果的である。朝日新聞の記事にはもっと明るい方が良かったという感想が出ていた。多分、照明はそれぞれの好みによるのではないかとも思うが、私的には照明効果によってカラヴァッジョの意図するものが強調されたように見えた。スポットライトにより作品の陰影が際立ち、その彫の深さにより画面に塗り込められていた精神性が立ち上がってくるかのように思えたのだ。

多分、今までに美術館・教会の定位置で観ているせいもあるのかもしれないが、この意欲的な照明演出をとても面白く観ることができた。特に絵画上のスポットライトが多種に渡ると思われたロンドン《エマオの晩餐》の会場スポットライトが3個、光と影の彫りが割と浅いと思っていたウフィッツィ《イサクの犠牲》は5個と、意外な照明展開に驚くとともに、とても興味深かった。

一方、今回の照明にも一長一短があるかもしれないと思う場面もあった。例えばアンブロジアーナ《果物籠》であるが、ミラノでは明るい照明の展示室で、ガラスも無く、至近距離で観ることができた。故に葉や果物の水滴(何とリアルで細かいことか!)や、背景の絵具のひび割れもくっきりと確認された。


カラヴァッジョ《果物籠》(アンブロジアーナ絵画館)

だが、今回の展示会場では作品と観客の間に、約50cm程の立ち入り禁止ゾーン線が引かれ(接近するとピーピー警告音が流れる)、薄暗い中でスポットライトに浮かぶ作品と対峙することになる。すると、背景の薄黄色のひび割れた光の拡散が均一な塗りの平面となり、その中間色効果で果物籠が画面から突出するように浮かび上がった!ボルゲーゼ《果物籠を持つ少年》と同じような艶やかさがそこに出現したのだ。
だが、あまりに作品との距離があり、薄暗さのせいもあり、あのカラヴァッジョの静物画を描く繊細な技量を満喫することができないのだ。あの思わず唸ってしまうような水滴が見えない! 今回の展覧会では作品展示の難しさもつくづく感じてしまったのだった。

次回は各作品を観ながら再発見したことなどを中心に書きたいと思う。

ローマに行ってきました。

2010-04-14 02:51:57 | 展覧会
ローマでのカラヴァッジョ没400年「カラヴァッジョ(CARAVAGGIO)展」に行ってきた。


スクデリエ・デル・クイリナーレ(Scuderie del Quirinale)

今回はゲストのdesiderioさん、あきこさん、他の皆さまからの貴重な情報に後押しされ、更にボローニャのFさんのご助力を得、カラヴァッジョ三昧のローマを満喫することができた。皆様、本当にありがとうございました!!

今回ローマで廻ったのは

・スクデリエ・デル・クイリナーレ「カラヴァッジョ展」
・カジノ・ルドヴィーシ
・ボルゲーゼ美術館
・サン・ルイージ・デイ・フランチェージ教会
・サンタゴスティーノ教会
・ドーリア・パンフィーリ美術館
・マダマ館(上院)
・サンタ・マリア・デル・ポポロ教会
・サンタ・マリア・イン・アラチェリ教会
・カピトリーニ美術館(カピトリーナ絵画館)
・バルベリーニ国立古典絵画館

さて、感想・詳細は後にして、これからローマにいらっしゃる方たちのためのお役に立つかもしれない知見情報をまとめてみる。


■「カラヴァッジョ展」(Scuderie del Quirinale)

予約は午前10時の回だったが、desiderioさん情報に従って午前9時半前に入場待ちの列に並ぶ。やはり!desiderioさん情報通りの9時30分に入場が始まった。このブログの紹介した「カラヴァッジョ展」チケット予約済みプリントは、会場内で入場チケットと交換することになる。

ちなみに、私はこの会場内のチケット売り場で「Caravaggio Card」を購入した。desiderioさん情報にもあったが、「Caravaggio Card」は予約無しで入場できるスグレモノだった。入口で提示すると待たずに入れてくれる。図録もしっかり割引価格で購入。イヤホンガイド(伊と英のみ)も割引があったような気がする。


■「カジノ・ルドヴィーシ」天井画

予約電話番号はゲストのあきこさんの情報にある通り
06 39967500 (ローマ)
集合はヴィッラの鉄柵扉前。


カジノ・ルドヴィーシ柵扉門

実は日本から電話が通じなかったため、ボローニャのFさんに急遽予約をお願いした。Fさんのお話では、この電話番号はローマの「CARAVAGGIO400」の総合案内になっているようだ。なかなか通じないが、気長に待った方が良いとのこと。音声ガイド(イタリ語と英語)に従って、オペレータとの直接通話に持ち込むこと。電話受付は午後6時30分まで。
事前予約なのでクレジットカードを手元に置いておいた方が良いかも。(ローマでCaravaggio Cardを購入してから電話するのがベストかな?)

私が「カジノ・ルドヴィーシ見学会」に参加した回は参会者が6名だった。ガイドの方に毎回何名ぐらい参加しているのか尋ねたら、大体5~10名ぐらいとこことで、このツァーは案外知られていないのかもしれない。ちなみに、この回の参加者はイタリア人親子2名組、フランス人1名、オーストリア人カップル、それに日本人の私、合計6名ながら国際色豊で、ガイドさんはイタリア語の解説の後、英語解説もしてくれた。感謝!