花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

ボルゲーゼ美術館「Caravaggio・Bacon」展(2)

2009-11-30 01:29:19 | 展覧会
今日(昨日?)NHK「日曜美術館」(バロック特集)を見ていて困ってしまった。ブログ用に書いていたものと何だか重なる部分があって…これは全くの偶然なので悪しからず。

■□■□■□

前回の(1)ではカラヴァッジョとベーコンに共通するリアリズムについて触れたが、付け加えると、そのプレゼンテーション手法がまったく違うのも面白かった。

カラヴァッジョは画面に観る者を引きずり込もうと画策する。設置される場所を想定し、描きだす劇的シーンの臨場感を高めようとする。スポットライトで浮かび上がる場面はまさに観者の目の前で起こっていることのようだ。短縮法の多様による画面からの突出感、呼び込む視線、観者を招く空椅子など…あの手この手で画面と観る者との垣根を取り払おうとする。

しかし、ベーコンは何と描かれた対象をフレームに閉じ込め、更には絵を覆うガラスで観者から遠ざけようとしているかのように見える。もしかして対象の客体化を狙っているのかもしれない。鏡としての肖像画を解体したのはピカソだと思うが、ピカソは計算しながら解体再構築したのに、ベーコンは解体剥き出しにしたまま画面に放置しているように見える。ガラスの奥のフレームの中で、もしかして見世物化しているんじゃないのか?

いずれにしても、二人とも描いている対象の存在を濃厚に描ききっているのに、それをどのように見せるかという段になるとベクトルの向きが正反対なのだ。それをバロックと現代の違いと言ったら、まぁそれまでなのだけどね。

と、言うことで、美術ド素人(更に現代美術苦手)がまた見当ハズレなことを言っていたらごめんなさい。なにしろフランシス・ベーコンについては殆ど知識が無いので、作品を観ての勝手な感想なのだから(^^;;;

ローマ「CARAVAGGIO」展 情報

2009-11-22 04:25:21 | 展覧会
カラヴァッジョ没後400年記念「CARAVAGGIO」展がローマで開催される。
ボローニャのFさんから頂いていた情報を、遅ればせながら紹介する。(Fさんに感謝!)

■日時:2010年2月16日~2010年6月13日

■会場:スクデリエ・デル・クィリナーレ(ローマ)

会場は「ベッリーニ展」と同じスクデリエ・デル・クイリナーレ(Scuderie del Quirinale)だ。



今、カラヴァッジョ作品が来年い向けて修復作業に入っている。メッシーナ「羊飼いの礼拝」や、ナンシー「受胎告知」など、修復した作品を展覧会に出展するようだ。

ボルゲーゼ美術館「Caravaggio・Bacon展」(1)

2009-11-22 03:50:25 | 展覧会
ローマでボルゲーゼ美術館「カラヴァッジョ・ベーコン展」を観てきた。

 

何故カラヴァッジョとベーコンなのか?

ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ(1571-1610)は言わずもがな、イタリア・バロックの革命的画家であり、フランシス・べーコン(1909-1992)はダブリン生まれの英国画家である。

ボルゲーゼとしてはカラヴァッジョ没後400年(本当は来年)、ベーコン生誕100年。共通点は「呪われた」極端な性格と絵画における天才的独創性、と言うのが企画の趣旨のようだが、私的には企画者がベーコン偏愛だったからのような気もする(^^;;;

ということで、今回の企画展の成否はカラヴァッジョ作品と対比させるベーコン作品の選択にかかっていたと思う。そして、観た感想を言えば、意外に面白かったのだ!



実際に観てみると、展示作品のテーマや構図の相似から見えてくる連想ゲーム的な面白さに思わずニヤリとさせられることが多く、二人の共通性が炙り出されてくるかのようだった。そして、カラヴァッジョの肉感的表現とベーコンの肉塊的表現が出会うとき、二人の作品が生身の人間というものを画面の中描き出そうと格闘した痕跡であることが了解される。カラヴァッジョの人物たちの口内の暗紅色の喘ぎ、ベーコンの人物たちの捻れ剥き出された容貌...。それをリアリズムと呼んでも良いと思う。

例えばテーマと構図の関連性が特に面白く感じられたのは2階展示室(第14室)だった。(カラヴァッジョ作品が集中していたっていうこともあるんだけれど(^^ゞ)

【展示作品】
「ロレートの聖母」(カラヴァッジョ:以降C)、「書き物をする聖ヒエロニムス」(C)、「ホルフェルネスの首を斬るユディット」(C)、「シピオーネ・ボルゲーゼの胸像」(ベルニーニ)、「イノケンティウス10世習作」(ベーコン:以降B)、「聖ペテロの否認」(C)、「イザベル・ローソンの肖像」(B)、「ゴリアテノ首を持つダヴィデ」(C)、「聖ウルスラの殉教」(C)、「蛇の聖母」(C)、「ルシアン・フロイトの肖像3つの習作(トリプティック?)」(B)

シピオーネ枢機卿とイノケンティウス10世という僧服肖像が並ぶと、その宗教的権威とは裏腹にある人間臭さが暴露されてくるようで実に楽しい(^^;;。また、聖ペテロを告発する女とローソンの鋭い一瞥のインパクトも面白かった!並べて見ると、視線の連鎖により、ローソンの視線にも顕わな不信感が込められているように見えてくる。人間洞察力の鋭さというか、描かれた人物の存在感が立ち上がってくる。更に、ローソンの鋭い眼差しはゴリアテの見開かれた目へと繋がる。ゴリアテはカラヴァッジョ自身である。フォロフェルネスの断末魔の見開かれた目、聖ペテロを告発する女の目、ローソンの目、そしてゴリアテの半眼の目、二人の画家の描く目には恐ろしい力が秘められているようにさえ思える。


カラヴァッジョとベーコンという時代を超えた組み合わせの妙と、カラヴァッジョ偏愛の立場から言えば、カラヴァッジョの現代美術と対抗できる色褪せない現代性を再認識できた興味深い展覧会だったとも言える(^^;;

が、唯一不満だったのは、展示会場が分散されていたことだ。名品の多いボルゲーゼでは展覧会自体を集中して楽しむことが難しい。まぁ、ボルゲーゼ美術館の核はベルニーニ彫刻群であったり、展示会場作りのために名品絵画移動が困難なことはわかるのだけどね。過剰な(?)作品は日本の「ボルゲーゼ美術館展」に貸し出して、空いたスペースを会場としてやりくりしたのだろう。日本は「カラヴァッジョ・ベーコン展」に大いに感謝しなくちゃね(^^;

ということで、次回はカラヴァッジョ作品を中心とした感想と、その他ローマで観たものなど書けたら良いなぁと思っている。本当に続きはあるのか?と、つっこまないでね(^^;;;

なんとか復帰しました。

2009-11-22 03:10:35 | Weblog
すっかりブログ後無沙汰してしまいましたが、なんとか復帰しました。
コメントやメールへのご返事が大変遅くなり、本当に申し分けありませんでした!!<m(__)m>
頭痛・目の痛みから始まり、色々なことが重なって、PCからずっと離れていました。なんだか浦島太郎のような気分です(汗)。