花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

「美術の窓」2月号を買った。

2015-01-27 22:55:30 | 展覧会
「美術の窓」2月号を買った。ご存じ「今年の展覧会Best200」が詰まっている。今年も観たい展覧会が色々あるが、特に興味深かったのは….

<巡回展が楽しみ>
・「ジョルジョ・モランディ展」(東京ステーションギャラリー)2016/02/20-04/10
・「レオナルド・ダ・ヴィンチと《アンギアーリの戦い》展」(宮城県美術館)2016/03/19-05/29

<観たくても仙台から遠いなぁ>
・「夜の画家たち-蝋燭の光とテネブリスム」(山梨県美術館)2015/04/18-06/14
・「スペイン黄金世紀の静物画-ボデゴンの神秘」(長崎県美術館)2015/04/23-07/26

<本当に遠過ぎるぞ!>
・「ベラスケス展」(グラン・パレ)2015/03/25-07/13
・「俵屋宗達展」(フリーア美術館)2015/10/24-2016/01/31

「美術の窓」の巡回展情報はお役立ちですね(^^ゞ

横浜美術館「ホイッスラー展」を観た。(2)

2015-01-26 23:08:26 | 展覧会
私がホイッスラーを知ったのは、先にも書いたように、2005年のテート・ブリテン「ターナー・ホイッスラー・モネ(Turner・Whistler・Monet)」展を観てのことだった。そこでは「風景画家」としてのホイッスラーに焦点が絞られていた。その解説によれば、ロンドンに渡ったホイッスラーは(クールベに影響を受けたからだろうか?)産業革命によるロンドンのスモッグや汚染されたテムズ川河畔の風景をリアルに描くようになる。その汚染された大気を描くにあたり、ホイッスラーはターナーの光と大気から影響を受ける。しかし、その後「唯美主義」的に、そこにある「現実」を暗いモノトーンの色調に沈めることにより覆い隠してしまうようになる。

さて、第2章の風景画作品だが…やはりテムズ川湖畔を中心とした近代化を急ぐロンドンの姿が描かれている。しかし、その近代化(工業化)のもたらした現実にあまり言及されていないのも確かだ。あ、別にいいんですよ。今回は「唯美主義」にスポットを当てた展覧会でしょうから。

《オールド・ウェストミンスター・ブリッジの最後》はテムズ川に架かる古い橋の建て替え風景と働く労働者を俯瞰で描く。澱んだ川面に艀が行き交い、対岸に立ち並ぶ工場煙突からの煙が空を覆っていく。画家が「現実」を描いていたころの作品だろう。


《オールド・ウェストミンスター・ブリッジの最後》(1862)ボストン美術館

今回の展覧会ではホイッスラーが陸軍士官学校で地図製作していたことや、ゆえに画業はエッチングから始まったことなど、初めて知ることも多かった。ということで、エッチングの興味深い作品が色々あった。初期のエッチング集「テムズセット」では《ロザーハイツ》が構図的に面白く、バルコニーの背後に開けるテムズ川と船着き場。港の匂いが感じられるような風景だ。《テムズ河畔の倉庫》は重層的な奥行きの構成と、それにともなう空からと奥からの光(テムズ川の川面の光)が印象的である。基本的に版画家は光に対して繊細な感性を持っていないと上手く構成できないと思う。レンブラントなど恐ろしいまでに研ぎ澄まされた感覚と技術を持っていたし...。


《ロザーハイズ》(1860)大英博物館


《テムズ河畔の倉庫》(1859)ヴィクトリア&アルバート博物館

ホイッスラーの曲がり角的作品《肌色と緑色の黄昏:バルパライソ》(油彩)は、現実の行き詰まり全てから逃げ出した画家の、憑き物が落ちたかような清々しさと透明感に溢れた作品だ。黄昏の色の光の諧調に凪ぎの海が淡くきらめき、しっくりと調和した静けさに満ちている。多分画家がふっきれたということなのだろう。


《肌色と緑色の黄昏:バルパライソ》(1866)テート美術館

後期のエッチング集「セカンド・ヴェニスセット」はラスキンとの裁判で破産した後の作品だが、エッチングの線がヴェニスの醸し出す大気と光そのものを描き出そうとしているかのように魅力的だ。運河の水面に揺蕩う光が古い建物に幻想的に映える。《ノクターン:溶鉱炉》は特に建物の奥からの強烈な熱光の表現がみごとだ。一瞬、レンブラントのエッチングを想起した。


《ノクターン:溶鉱炉》(1879/80)大英博物館

やはり私的には、ホイッスラーは風景画家として魅力的なのだと思う。ということで、また続きます(^^;

横浜美術館「ホイッスラー展」を観た。(1)

2015-01-22 23:59:21 | 展覧会
前回空振りした横浜美術館で、やっと「ホイッスラー展」を観ることができた。

ジェームズ・アボット・マクニール・ホイッスラー(James Abbott McNeill Whistler, 1834 -1903)は米国出身で、主にフランスや英国で活躍した。
展覧会構成は… 第1章 人物画 → 第2章 風景画 → 第3章 ジャポニズム → 参考展示映像:ピーコックルーム…と続いた。

さて、展示は初期の人物画から始まり、ホイッスラーの画風の変遷がよくわかる展覧会だった。特にホイッスラーがクールベから影響を受けたというのが意外で、クールベから唯美主義へというのは振幅が大き過ぎるのではないかと思った。が、その間に色々と試行錯誤を重ねたようで、エッチング作品で身を立てたり、バルパライソに逃避したり、作品が売れ名声を得るまでの苦労(あがき)が作品からそこはかとなく偲ばれた。まぁ、有名になってからもラスキンとの裁判があったり、ピーコックルーム事件があったりと、画面に見える美々しい色調のハーモニーと画家の個性(アク)の強さとのギャップがなかなかに興味深くはある。うむ、もしかして一房の白髪、或いは《ノクターン》の金色の花火こそ、ホイッスラーなのかもしれない。

で、私的にモヤモヤだった風景画の「唯美主義」についても、作品や解説からようやく了解できた。特に公式サイトからダウンロードできる「ジュニアガイド」がわかりやすく、「こども」だけでなく「美術ド素人年齢だけオトナ」も楽しくお勉強できた。これから観る方は印刷(プリント)して持参しませう。

■□ホイッスラーは「どんな色で描くか」、「どうやって色と色をひびきあわせるか」を大事にした画家です。さまざまな楽器の音色が合わさってひとつの音楽となるように、色や形が調和した絵を目指したので、シンフォニーやハーモニーといった音楽で使われる用語を題名につけました。□■

さて作品の方だが、初期の《煙草を吸う老人》の厚塗りの目鼻立ち部分はクールベというよりレンブラントっぽく見えたのは気のせいだろうか?《灰色のアレンジメント:自画像》は画家自身のスカした感じが微笑ましく、自意識の強さが透けて見える。いかにもダンディらしいが、ロベール・ド・モンテスキューと同時代人だったのね。って、今調べたら二人はお友達だった(・・;)


《灰色のアレンジメント:自画像》(1872)デトロイト美術館

灰色と黒のアレンジメントはベラスケスからの影響のようで(マネもそうだけど)、黒の諧調は実にシック。《トーマス・カーライルの肖像》の構図の面白さ(画家の母の構図と一緒)、《スペイン王フェリペ2世に扮したサー・ヘンリー・アービング》のコスプレの面白さ(ティツィアーノ作品想起)、《ライム・リジスの小さなバラ》はモデルが可愛らしく、すごく得していると思う。まっすぐな眼をした少女に赤の諧調がとても似合っているのだ。


《灰色と黒のアレンジメントNO.2:トーマス・カーライルの肖像》(1872-73)グラスゴー美術館

《灰色と黒のアレンジメントNO.1:画家の母の肖像》(1871)オルセー美術館


《ライム・リジスの小さなバラ》(1895)ボストン美術館

ということで、次回に続く。

MEMLING展-幻の《最後の審判》

2015-01-21 01:44:02 | 展覧会
ローマのスクデリエ・デル・クイリナーレ「MEMLING」展も終了してしまった。感想文を書こうかどうか迷ってネットを彷徨っていたら、ニューヨークタイムズのWeb版で、驚きの事実を知ってしまった。なんと《最後の審判》がグダニスク(ダンツィヒ)から借出される予定だった!しかも、開催3週間前に政治的事情でドタキャンされたとのこと…!!


メムリンク《最後の審判》グダニスク国立美術館(1467-71)

1473年、あのシャルル・テメレール(豪胆王=むこうみず)の時代、トンマーゾ・ポルティナーリがブリュッヘからロンドンへ向かわせたガレー船が、ハンザ同盟に与したパウル・ベネッケの私掠船に捕獲されてしまった。船にはフィレンツェ(フィエーゾレ)に送るべく、ハンス・メムリンクの手による(寄進者アンジェロ・ターニとカタリーナ・タナーリ夫婦)トリプティクが積載されていた。ポルティナーリもむこうみずもシクトゥス4世も、ダンツィヒのベネッケから取り戻すべく奔走した。しかし、むこうみずはナンシーの戦いで不慮の死を迎え、シクトゥス4世はパッツィ家の陰謀事件により手を引く。
(参考書:アビ・ヴァールブルク著作集3『フィレンツェ文化とフランドル文化の交流』、堀越孝一著『ブルゴーニュ家 』)

歴史ってなんて皮肉なのだろう!ダンツィヒの人々はフィレンツェ人からの私掠品であることを忘れ、ダンツィヒの宝石としてしまった。そして…今回も《最後の審判》は帰ってこなかったのだ。(まさかイタリアに貸したら戻ってこないと考えたりして???)

うーん、もしかして観られたかもしれなかったと思うと残念でたまらない。気を取り直して展覧会について書けるかなぁ??(^^;;

カラヴァッジョ《いかさま師》のレプリカ??!

2015-01-20 01:38:06 | NEWS
Sotheby's Caravaggio case: Former owner of 'The Cardsharps' loses legal bid after Sotheby's claimed work – later valued at £10m - was fake

http://www.independent.co.uk/arts-entertainment/art/news/sothebys-caravaggio-case-former-owner-of-the-cardsharps-loses-legal-bid-after-sothebys-claimed-work--later-valued-at-10m--was-fake-9983980.html

(ボローニャのFさん情報に感謝!)

東京へ行ってきた。

2015-01-17 23:42:58 | 国内旅行
今週、人間ドック受診のため東京に行ってきた。もちろん展覧会も抱き合わせだが、憂鬱なことに期末試験が控えていたため、心から楽しめる状況ではなかった。先生が突然「来週、試験します。」って言っても、検診の予約変更は間に合わないのだ(涙)。

で、観た展覧会は…
・横浜美術館「ホイッスラー展」
・東京ステーションギャラリー「東京駅100年の記憶」
・松屋「没後400年 古田織部展」
(okiさんチケットに感謝!)

もちろん試験は切り貼りだらけのダメダメ内容で提出しちまいましたっ(>_<)

スコルツェッタ(SCORZETTA)

2015-01-08 22:06:31 | 食べもの
帰省から戻ったイタリア語の先生が彼のボスへお土産を買ってきた。ラッキーにも、居合わせた私たち生徒もお裾分けを頂いてしまった(^^)v。郷里の隣州ベルナルダ(Bernalda)名物のお菓子「スコルツェッタ(Scorzetta)」だそうで、アーモンド粉で作られた湾曲した薄いクッキーにチョコレートが塗られている。


スコルツェッタ(La SCORZETTA di Bernalda)

大きなスコルツェッタの中に小さなスコルツェッタが包まれているのも楽しい♪


パスティッチェリーア・デル・コルソ(Pasticceria del Corso)のスコルツェッタ

アーモンドベースの香ばしくサクッと素朴な味わいとチョコレートの甘さがミックスしてほのぼのと美味しい。その形状も独特で、先生のおばあちゃんも昔作ってくれたらしく、クッキー種を薄く丸く伸ばし、アルミホイルで包んで形成し、ホイルの端をクリップで止めて焼くそうだ。ちなみに、先生はドルチェ(特にチョコレート)苦手で、「僕は食べない!」そうだ(笑)

パノフスキー『ルネサンスの春』を読む。

2015-01-05 23:52:26 | 読書
お正月は本をまとめ読みするのに最適なので、積読(つんどく)状態で溜まっていた本を片付けることにした。中でも読み難かったアーウィン・パノフスキー著『ルネサンスの春』(原題:Renaissance and Renascences in Western Art)をようやく読み終えた。読んだからと言って、ちゃんと理解できたわけではないし、大体わかったという程度なのがド素人的に哀しい(^^;;;



『ルネサンスの春』を読み始めたのは、授業で薦められたこともあるが、一昨年のゲッティ美術館「Florence at the Dawn of the Renaissance」展を観て以来、ルネサンスとは何なのだ?というモヤモヤが頭に渦巻いていたからだ。(参照:一昨年のブログ

もちろんモヤモヤ解消のため、ルネサンス関係の本を幾つか読んでみたりはしたのだが、残念ながらどうも私のモヤモヤのツボからズレていて解決しなかった。そして、ようやく巡り合ったのがこの『ルネサンスの春』だった。

嬉しくも、読んでスッキリしたことが2点ある。ひとつは、古典古代の文化がルネサンスまで全く途絶えていたわけではなく、波のように、カロリング・ルネサンスや12世紀の早期ルネサンスがあったこと。もうひとつは、ジョット後の14世紀後半になると、フィレンツェとシエナでは根本的な「様式と嗜好の変化」があり、古典古代の様式からも離れて行ったということ。私的に14世紀後半はジョッテスキよりも国際ゴシックが受けたということなんじゃないかと勝手に理解し手打ちしたのだ。

パノフスキーは言う。「そこで、14世紀末には、イタリア美術は北方美術とほとんど同じくらい根本的に、古代から隔絶していた。そして、真のルネサンスは、いわば零から誕生したのである。」

まぁ、なんて明快に言ってくれるのだろう(笑)。パノフスキーの時代から随分経つから、現代の通説では違う解釈になっている可能性がある。でも、ジョット以後のジョッテスキ作品にがっかりした私は、これでかなりスッキリしたのだった。お粗末(^^;;;