花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

ヤン・ファン・エイクの「木製サンダルの泥」。

2021-09-26 21:09:14 | 西洋絵画

前回、「中世末期(欧州)の衣装」動画で紹介した中に登場した「木製サンダル(?)」を見ながら、ヤン・ファン・エイク《アルノフィーニ夫妻の肖像》に描かれたサンダルを想起してしまった。LNGで舐めるように眺めましたもの

※ご参考:「中世末期の衣装」動画

https://www.youtube.com/watch?v=tUsZQobX3Uw

ヤン・ファン・エイク《アルノフィーニ夫妻の肖像》(1434年)ロンドン・ナショナル・ギャラリー

※ご参考:「Closer to Van Eyck」

http://closertovaneyck.kikirpa.be/verona/#viewer/rep1=2&id1=6cb22ad3c438b92c720d16b4d91d98ca

で、私的に凄く納得したのが、この描かれた木製サンダルに付いた「泥」なのだ!! カラヴァッジョを彷彿させるではありませんかぁ~!!

ヤン・ファン・エイクの恐るべきスーパー・リアリズム!が写し取ったサンダルの泥には、当時の道が雨や水で即ぬかるんでしまう現実が如実に表現されている。動画に出てくる当時の革靴ではすぐダメになってしまうのが了解され、革靴にこの木製サンダルを履くという発明(?)が、至極現実的な対処法だったのだろうなぁと凄く納得できたのだ。

ちなみに、絵画に描かれた木靴やサンダルは結婚の宗教的儀式を意味しているらしい。

 

さて、超有名な《アルノフィーニ夫妻の肖像》であるが、実は最近、某講座でお勉強させていただいたのだった。超サクッとまとめると...(誤解・誤記があったらスミマセンです

 ・従来、ジョヴァンニ・アリーゴ・アルノフィーニとその妻ジョヴァンナ・チェナーミを描いたものと言われているが、モデルは誰で、どのような関係なのか、正確にはわかっていない。

※ご参考:「アルノルフィーニ夫妻が結婚したのは1447年であり、それは絵画に記されている日付1434年の13年後のことで、さらにファン・エイクが死去した1441年よりも後であることが1997年に判明した。…(現在では)従兄弟のジョヴァンニ・ディ・ニコラ・アルノルフィーニ夫妻で、女性は内縁の二番目の妻、あるいは近年の研究によれば1433年2月に死去した最初の妻コスタンツァのどちらかである」(Wikipedia)

・後世から見れば何も不思議はない構図だが、二人の構図は「受胎告知」を想起させ(ダブル肖像画)、当時では殆ど類例がない。当時、多翼祭壇画を展開した夫婦別々の肖像画は多いが、一枚の絵の中で、宗教画の構図を借り、風俗画(肖像画)に転用したことは、まさにヤン・ファン・エイクのオリジナリティのひとつと言える。

・絵の中で、男性は左手で女性の右手を取っている(従来、男性は右手で女性の左手を取るのが一般的)。婚礼の場面を描いたとすると、男性の左手はこの結婚が身分違いの女性を妻とした貴賤婚(?)との説がある。

・奥に描かれた凸面鏡は、二次元では描き切れない新しい空間を創出している。その鏡には作者であるヤン・ファン・エイクが描き込まれている。

等々、ということで、《アルノフーニ夫妻の肖像》が15世紀の時代の変わり目に相応しい異色作品であることを了解したのだった

それにしても、超有名作品過ぎて、木製サンダルに付いた「泥」の感想ぐらいしか書けない自分が情けない。なんだか、この付着泥みたいな自分だなぁとも思ってしまったのだった


中世末期(欧州)の衣装。

2021-09-24 22:51:44 | 西洋絵画

中世末期(欧州)の衣装の着方がわかる楽しい動画をYoutubeで見つけた。絵画では見慣れた衣装だけど、実際の衣装をどうやって着ていたのか、興味深くも面白かった

【女性の衣装】

https://www.youtube.com/watch?v=tUsZQobX3Uw

※ご参考:ロヒール・ファン・ウェイデン《女性の肖像》(1460年頃)ワシントン・ナショナル・ギャラリー

ヴェールで見えにくいかもしれないが、エナン帽の下の黒いヘアバンドの中央に丸い輪が見える。

ポルティナーリの奥さんの肖像にも見えるよね。(ボケ写真なので下にMETリンクしました)

ハンス・メムリンク《マリア・ポルティナーリ(Maria Maddalena Baroncelli)の肖像》(1470年頃)メトロポリタン美術館

https://www.metmuseum.org/art/collection/search/437056

 

【男性の衣装】

https://www.youtube.com/watch?v=IYYWjbA1fnIn

なるほどぉ~!男性は絹の上着の下に大きな肩パッド付胴衣を着ていたのね

※ご参考:ロヒール・ファン・デル・ウェイデン《エノー年代記》挿絵(1447年)ベルギー王立図書館

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Jacques_de_Guise,_Chroniques_de_Hainaut,_frontispiece,_KBR_9242.jpg

ちなみに、中央の黒い帽子と衣装の御方はブルゴーニュ公国のフィリップ・ル・ボン。その隣の少年はシャルル・ル・テメレール。フィリップ様の後ろに控える青い衣装の男が宰相ロラン。大きなポシェットが私的に気にかかるのだわ(笑)。ご臨場の皆さんが金羊毛騎士団員のペンダントを下げているのがわかる


ゴッホの秋の味覚(シカゴ美術館)(^^;

2021-09-21 00:48:40 | 西洋絵画

《ひまわり》もだが、ゴッホの静物画が好きだ。やはりオランダ静物画の伝統を背負った画家なのだなぁと思う時がある。

で、葡萄繋がりの「秋の味覚」と言うことで...

フィンセント・ファン・ゴッホ《葡萄、檸檬、梨、林檎》(1887年)シカゴ美術館

https://www.artic.edu/artworks/64957/grapes-lemons-pears-and-apples

葡萄を中心とした磁場がもの凄い(笑)。ゴッホらしい線描筆致なのだが、ブルームを纏った葡萄が実に美味しそうで、ああ上手いなぁ!と思う。オランダ静物画の伝統が低音としてしっかりと効いているような気がした。

林檎はセザンヌ風なのがご愛嬌だけど、檸檬の黄色と葡萄の紫、林檎の赤と西洋梨の緑、補色が効果的だ。ちょっとゴーギャンを想起させるものがあるが、檸檬の黄色なんてまさしくゴッホの黄色なのだ。ゴッホ独特の色彩感覚って本当に素晴らしいよね

ちなみに、シカゴ美術館はゴッホの《自画像》も所蔵している。《葡萄、檸檬、梨、林檎》と同年に描かれており、背景の細かな点描が印象的である。

フィンセント・ファン・ゴッホ《自画像》(1887年)シカゴ美術館

https://nocache.www.artic.edu/artworks/80607/self-portrait

「ゴッホのスタイルの特徴となったその密集した筆使いは、ジョルジュ・スーラ《グランドジャット島の日曜の午後》の革命的な点描的なテクニックに対するアーティストの反応を反映しています。」(シカゴ美術館サイト)

※ご参考:この自画像は、2022年開催予定のコートールド美術館「Van Gogh Self-Portraits」展(会期:2022年2月3日〜5月8日)にも出展予定だ。

https://bijutsutecho.com/magazine/news/exhibition/24372

 

さて、ということで、シカゴ美術館にはそのスーラ《グランドジャット島の日曜の午後》もあるのだった(笑)。

ジョルジュ・スーラ《グランドジャット島の日曜の午後》(1884/86年)シカゴ美術館

https://www.artic.edu/artworks/27992/a-sunday-on-la-grande-jatte-1884

画面がぼやけているが(汗)、《グランドジャット島の日曜の午後》に接近して撮影した写真の一部だ。細かな色彩の点描を興味深く見ることができる。

 

ちなみに、現在、東京都美術館でクレーラー=ミューラー美術館所蔵を中心とした「ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」が開催されている。

・期間:2021年9月18日(土)~12月12日(日)

・場所:東京都美術館

・公式サイト: https://gogh-2021.jp/index.html

公式サイトにサクッと目を通してみると、《麦わら帽子のある静物》にもオランダの静物画らしさが滲み出ているような気がした。

フィンセント・ファン・ゴッホ《麦わら帽子のある静物》(1881年)クレラー=ミュラー美術館

やはりゴッホはオランダの画家なのだよなぁ、とつくづく思うのだった。


秋の味覚。

2021-09-17 23:45:08 | 食べもの

季節は秋。Siamo in autunno. 

今年も庄内の葡萄(シャインマスカット)をお取り寄せした

どっしりと粒も大きく、マスカットの香りと甘みが口に広がる。美味しさのあまり、一房を2日で食べてしまった。果糖は皮下脂肪に直結するのはわかっていても、秋にダイエットは絶対無理

 

先日、スーパーで食用菊を見つけ、黄色がきれいだったので衝動買い(?)した。今まで食用菊を料理したことがないのにね。コロナで(仕方なく)毎日料理するようになり、初めての食材にも挑戦するまでになった。自分でもエライ進歩だと思う(笑)。

で、今日の昼、偶然にNHKの料理番組で食用菊を使った和え物をやっていた。メモも取らず、うろ覚えながら自分でも作ってみた。

食用菊、しめじ、三つ葉をゆでて、白だしと醤油で適当に和えただけ。お酒も入れた方が良かったのかな??

それでも、なんとか「それらしく」なったような(笑)。味はまずまずで、ちょっと秋の香りが楽しめた気がした


ステファノ・ブランキーニの靴。

2021-09-09 21:12:42 | 着るもの

ボローニャのサント・ステーファノ聖堂の前には広くて気持ちのよい「Piazza Santo Stefano(聖ステーファノ広場)」が広がる。

(ポルティコの下にクラスメートたちとお茶したBarも見える

で、この写真を撮っている私の背後、すなわち広場に面した反対側に「コルテ・イゾラーニ(Corte Isolani)」という古い館を改装した商業施設がある。建物内に聖ステーファノ広場からマッジョーレ通りに抜ける通路があり、通路添いにはレストランやギャラリーやショップも並ぶ。

そのコルテ・イゾラーニのマッジョーレ通りへの出口(=マッジョーレ通り側入口)にお洒落な靴屋さんがあるのだ。日本でも知る人ぞ知る、シューズ・デザイナーのステファノ・ブランキーニ(Stefano Branchini)の店だ。

(店の前にある大きな石と柱は古いポルティコを支えるもので、並びに有名な「Casa Isolani」のポルティコがある)

「ステファノ・ブランキーニ」はノルベジェーゼ製法の紳士靴で有名で、個性的なデザインや大胆な色使いが特徴だ。私は何度もお店のショーウインドーを覗いては思案していた。なにしろ紳士靴中心だから女性用は少なく、女性用と思われる靴もシュッとしていて、日本人偏平足の私に合うのだろうか??と不安だったからだ。取りあえずお店に入らなくてはと決心し、心細いのでFさんにご一緒してもらった。

店員さんが女性用の靴を見せてくれる中で、一目で気に入った靴があった。カジュアルだけど、すっごくお洒落でカッコいい。でも、果たして私の足に合うだろうか??

恐る恐る履いてみたら、紐靴だからなんとか履けるじゃありませんかぁ。即、お買い上げが決まった(笑)。そこにFさんがすかさず、インソールも併せて、と助言してくれた。革インソールを靴にいれると一層フィット感が出た。感謝!!>Fさん。

買った靴はもちろんビスポークではなく、ノルベジェーゼでもなく、工場生産のカジュアルラインである。ナポリの工場で製造されたものだそうだ。しかし、靴底を見て欲しいのだが、なんと美しいことか!!

ナポリ仕立てのスーツは有名だけど、この端正な縫製の靴裏を見ても、ナポリの職人さんたちの仕事に敬意を表したくなる。もちろん、ステファノ・ブランキーニさんのデザインに込めた美意識があるからこそで、見える表だけでなく見えない裏にも凝る!、みたいな心意気を感じるのだ。

イタリア人の美意識と職人技は「Gli Artigiani」の時代から脈々と受け継がれているのだろうなぁ。

ちなみに、履いているうちに革底のサインロゴは無情にも擦り減って行くのでしたぁ...


サント・ステーファノ聖堂(ボローニャ)。

2021-09-07 22:05:16 | 建築

NHK「まいにちイタリア語」テキスト9月号の入門編は「エミリア=ロマーニャ州に注目!教会や建築の見どころもいっぱい」。ということで、懐かしのボローニャ周辺が特集されていた。

なかでも私的に嬉しかったのは「サント・ステーファノ聖堂(La Basilica di Santo Stefano)」が扱われていたこと。思わずボローニャで撮った写真をチェックしてしまった

ボローニャのサント・ステーファノ聖堂は、「教会から教会へと、壁一枚で繋がっているように建てられている『七つの教会群』。起源はとても古く、一説によると5世紀までに遡る。外観は素朴なレンガ色だが、よく見ると模様をなしているところも...。内部にはさまざまな時代の様式が混在しており、迷路のような『パワースポット』のような、独特な雰囲気の空間が広がっている。」(NHKテキストより)

※ご参考:「Santo Stefano Bologna」公式サイト

https://www.santostefanobologna.it/

※ご参考:「平面図」(各教会が壁に接して建てられているのがわかる)

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:S._Stefano_(Bologna)_-_planimetria.svg

 

Chiesa del Crocifisso(十字架の教会)

Chiesa del Santo Stefano(聖墳墓教会)の中にある古い説教壇

Cortile di Pilato(ピラトの中庭)。中央に見える建物は聖墳墓教会の建物外観。

 

Il Chiostro(中世の回廊。中央に井戸)

ロマネスクとゴシックが混在しているような...??

床面の色石模様。

ボローニャと言えば「サン・ペトロニオ聖堂」が有名だが、私的にはこの古い歴史を纏った「サント・ステーファノ聖堂」の方が好もしい。初めてFさんに連れて来てもらった時は、暗くて迷路のような内部に驚いたものだったが、Fさんお推めの奥の売店の品揃えも楽しかった。ボローニャの語学学校に通っていた時は学校が近くだったので、ふらりと何度か訪ねたし、私的にもボローニャのお薦めスポットである


9/5付日本経済新聞「美の粋」に矢代幸雄。

2021-09-05 23:01:52 | 西洋絵画

今日の日本経済新聞(9/5付朝刊)見開き「美の粋」を開くと、ボッティチェッリの《ラ・プリマヴェーラ》が賑々しく眼を喜ばせてくれた。今回の特集は「矢代幸雄の遺産(上)」ということで、なるほど

恥ずかしながら(汗)矢代幸雄の大著『サンドロ・ボッティチェルリ』は未読であるが、その著書の中で、ボッティチェッリを日本の浮世絵師喜多川歌麿と対比して論じているらしい。確かに両者における髪の毛の描写と存在感は際立っているしね。

ということで、次週の(下)も楽しみだ