花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

エル・エスコリアル

2010-02-23 00:10:19 | 美術館
昨日、デスカルサス・レアレス修道院について書きながら、スペイン旅行で訪れたもうひとつの修道院を思い出した。実は草稿を書いたものの、UPする機会を失い保留にしていたもので、過去の記事一覧を遡り草稿を拾い出して読む。2008年7月に書いたものだった。今回、そのままUPしようと思う。要するに、手抜きだね(^^;;;

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今頃読むなんて遅過ぎの感もあるが、フェルナン・ブローデルの「地中海―フェリペ二世下の地中海と地中海世界」(藤原書店)を読み始めた。まだ1巻目を読み終えたところだが、地中海世界を俯瞰して眺める斬新な視点に感動さえ覚えてしまった。地中海は海だけではない。山地も台地も平野もある。それぞれの地域性から人々の気質や暮らし、経済のありようが歴史の中でどのように変化していったか、また変らなかったか。豊富な資料(ブローデルの博覧強記?!)から生き生きと語られる。自分の視野がちょっとだけでも広がったような気さえする。全巻をぜひ通して読みたいと思っている。(できるだろうか?(^^;;;)

で、フェリペ2世で思い出し、2004年春に訪れたエル・エスコリアルで撮ったデジカメ画像を整理してみた。でも、ピンボケは多いし、せっかく撮った絵画の作者や題が特定できないものがあったり…情けなや(~_~;)。カメラが悪いのかカメラマンの腕が悪いのか(モチロン腕/涙)。もし不明作品に関してご存知の方がいらっしゃったらご教授くださいませ。

 
サン・ロレンソ修道院・王宮 入口   外壁から望む

エル・エスコリアルはフェリペ2世が聖キンティーンの戦い(1557年)の勝利を感謝して聖ロレンソ(聖ラウレンティス)に捧げた修道院を附属させた王家の墳墓であり王宮である。1563年から着工し1584年に完成した。

聖ラウレンティスが格子型の網で焼かれて殉教したことから、建物は格子型で構成された堅固な造りになっている。見学コースには建築工法などのコーナー(実物通路)などもあった。

エル・エスコリアル駅まで列車で行ったのだが、マドリードのアトーチャ駅から1時間ぐらいの距離にある。駅からタクシーで向かうと、荒野の中に突然ドでかい要塞のような城が建っているように見えた。修道院部分が附属していると言ってもイタリアの修道院とかなり雰囲気が違う。

王宮部分には絵画館もあり、フェリペ2世の部屋もあり(寝室にヒエロニムス・ボス《快楽の園》を置いていたらしい)、素晴らしい図書館もある。王家の霊廟には荘厳な棺が重なり、カルロス1世(カール5世)もフェリペ2世もここ眠っているのねぇと感慨深かった。

王宮部分や修道院部分をあれこれ歩くうちに、何気に入った礼拝堂にティツィアーノ《聖ラウレンティスの殉教》が祭壇画として飾られているのに遭遇!驚いたぁ~。正直言うと燃え盛る炎の上で網焼きにされる姿は残酷で恐かったけどね。
ヴェネツィアで、島の端にあるジェズ教会をわざわざ訪ねたのも同主題作品をチェックするためだったのだが、照明効果が良かったのか私的にはエスコリアル作品の方が断然素晴らしいと思う(^^;


さて、エル・エスコリアルに所蔵されている作品を紹介しよう。

    
ティツィアーノ《聖ラウレンティスの殉教》   ロヒール・ファン・デル・ウェイデン《磔刑》」

     
エル・グレコ《聖マウリティウスの殉教》  ボス《快楽の園》のタペストリー

    
ティツィアーノ《聖ヒエロニムス》     ベラスケス《服を剥ぎ取られるヨゼフ》


ヒエロニムス・ボス《荊冠のキリスト》

さて、写真を撮ったものの、作者や題名がよくわからないものがある。
左上作品は短縮法で描かれた天使がカラヴァッジョを想起させたもの。右上と下の2作品は明らかにヴェネツィア派だと思う。ティツィアーノっぽいし、ヴェロネーゼっぽいとも思う。でも、自信が無い(^^;;;

 
(1)                    (2)

 
(3)

上に紹介した(1)(2)(3)の作品についてご存知の方は、ぜひご教授くださいませ(^^;;;

デスカルサス・レアレス女子修道院

2010-02-22 02:06:28 | 美術館
2004年春のスペイン旅行でデスカルサス・レアレス女子修道院を訪れた。あのカルロス1世(カール5世)の娘で、フェリペ2世の妹ファナ・デ・アウストリア(1535-1573)の設立した修道院である。マドリードの街中に堅固な佇まいを見せていた。

 
デスカルサス・レアレス女子修道院(マドリード)         入口プレート


ファナ・デ・アウストリア(兄のフェリペ2世と似ている=父カール5世ともね)

修道院内を見学するのにはガイドツァーに参加しなければならない。それも、スペイン人ガイドで、もちろんスペイン語である。日本人の観光コースにはなっていないから、日本人客もいない。スペイン語なんてまるっきり、横文字苦手の私は大ピンチ!

ところが、スペインには神様がいた。いや、アメリカの神様だったのかもしれない。ガイドツァーの出発を待っていると、なんと「日本の方ですか?」と日本語で尋ねられてビックリ! 話しかけてきたのはNYから来たという米国人のおじさん。友人とスペイン旅行をしているという。で、このお友達がなんとスペイン語ができた。ということで、スペイン語のガイドをお友達が英語に訳して、その英語をおじさんが日本語に訳してくれるという、いやはや凄いガイドツァーになったのだった(笑)


修道院壁画(国王家族臨席図)


修道院の窓から。ゆがんでいる1枚は昔のままのガラス。

さて、本題に戻ろう。このデスカルサス・レアレス修道院こそ支倉常長がスペイン国王フェリペ3世から「フィリッポ・フランシスコ・ハセクラ・ロクエモン」という洗礼名を授かった「王立洗足会女子修道院附属教会」の修道院だった!という事実を石鍋真澄氏による「ボルゲーゼ美術館展」講演会で知ったのだった(汗)

で、ネットで調べたら…葉城資料展示館(仙台)による「支倉常長の足跡を追う旅」にでてきた。

この記事の中にでてくる「Relics Chapel」は一般公開していないと記述されているが、でも、なんだか見た記憶があるのだ。しかし、附属教会の方は残念ながら記憶に残っていない。一般公開されていないということなのか?それにしても、あの当時知っていたならもっと良く観察できたのに…残念でたまらない。

ちなみに、修道院内にはスペイン・ハプスブルグ王家の家族肖像画が多く見られた。その他にも「えっ、真作?」と目が驚いたスペイン王家好みの画家たちの作品もあったのだが、真作なのか模作なのかはわからない。

 
  ブリューゲル?                          ティツィアーノ?

「ボルゲーゼ美術館」講演会で支倉常長

2010-02-11 14:42:36 | 講演会
本当は「ボルゲーゼ美術館展」と「マッキアイオーリ展」の感想を書きたいのだが、先に石鍋真澄氏の東京都美術館「ボルゲーゼ美術館展」講演会の感想を書こうと思う。理由は、閑散とした「サン・ファン館」の紹介でジモティ魂が目覚めてしまったから(笑)

宮城県民なら学校で支倉常長の慶長遣欧使節について教えられるのだが、多分、全国的にはメジャーじゃないのだろう。今回の「ボルゲーゼ美術館展」に《支倉常長像》が出展され、初めて知る方たちも多かったようだ。ちなみに、あの肖像を描いたのはクロード・デリュエではなく、アルキータ・リッチであるという資料が最近発見されたそうだ。


アルキータ・リッチ《支倉常長像》(1615年)

さて、石鍋氏の講演テーマは「ボルゲーゼ美術館 ラファエロ・カラヴァッジョ・ベルニーニ」ということで、主にボルゲーゼ美術館のコレクション形成過程に関わるお話が中心だった。拙ブログでも扱ったが、そのコレクションはローマ教皇パウルス5世の甥で大の美術愛好家であったシピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿の収集が基になっている。


ボルゲーゼ美術館(ローマ)

彼はピンチアーナ門外に広大な土地を所有し、1612年から1615年にかけて、芸術コレクションを収め展示する館としてヴィッラを建設した。この白亜の館は、教皇庁の迎賓館としても使われ、完成直後の1615年には日本の支倉常長率いる慶長遣欧使節団がここを訪れて歓待されている。今回展示されている支倉の肖像画もシピオーネが描かせたものだ。

と言うことは、支倉が館内に飾られたカラヴァッジョ作品を目にした可能性は極めて高く、石鍋氏のお話にも出たが、以前から私もカラヴァッジョ作品を観た最初の日本人は支倉常長ではないかと思っている(^^;;;

また、石鍋氏は今回の展覧会でパネル展示されている仙台市博物館所蔵の《支倉常長像》の「一条ロザリオ」についても研究をされていて、通常「環状のロザリオ」が多いが、当時の絵画から「一条ロザリオ」も使用されていたことを画像で説明してくれた。

ところが、だ。ネットで調べていたら、興味深い話が出てきた。

「仙台市博物館が所蔵する国宝の肖像画「支倉常長像」をめぐり、真贋(しんがん)論争が起きている。青森中央学院大(青森市)の大泉光一教授(日欧交渉史)が「博物館の現存画は模写」と偽物説を打ち出し、博物館の浜田直嗣前館長が「現存画が本物なのは史実的に明らか」と反論。学界を巻き込んだ議論に発展している。」とのこと(・.・;)


捏造された慶長遣欧使節記―間違いだらけの「支倉常長」論考」(大泉光一・著/雄山閣・発行/2008年)

どうやら論争は、古写真と現在展示作品が異なっている点が多いことから来ているようだ。その争点の一つに挙げられているのが「一条のロザリオ」である。古写真は「環状のロザリオ」なのだ。

この論争についてネットで調べた大泉氏側に同調する意見。その1その2
その中で論拠として紹介されている信憑性が高いという古写真。伊勢斎助・大内大円編『支倉六右衛門常長斎帰品宝物写真』帳(昭和三年発行)から。

実は、何故か私も「伊達政宗 欧南遣使考全書」(伊勢斎助・輯/東京書肆裳華房・発行/昭和3年)という本を持っている(^^;;。確かに仙台市博物館で展示されている「支倉常長像」と、そこに掲載されている《支倉常長油絵の肖像》の写真とは異なっている。「宝物写真」を若干修整している写真のようで、私的にはやや荒っぽい絵と感じられる(汗)。そして、写真のロザリオは環状である。

 
「支倉常長油絵の肖像」(仏国名画師・モンスー・クラウヂョ筆?)  (仙台市博物館所蔵)

更に、同書に掲載されている「パウルス5世の肖像」写真は現在博物館に展示されている絵と同じに見える。だとしたら、何故支倉像だけが違うのか??

 
「パウルス5世の肖像」(仏国名画師・モンスー・クラウヂョ筆?)     (仙台市博物館所蔵)

多分、石鍋先生のお話は大泉氏の指摘する「一条のロザリオ」に関しての反証をされたのだと思う。私は大泉氏の本も、それに対する仙台市博物館側の反論も読んでいないので、何とも言えないが、肖像画自体に関しての謎は依然として残るような気もするのだ。仙台に帰省することがあったらもっと調べてみたいと思う。

今回の感想文は講演会感想と言うより、なんだか美術ド素人の興味本位な感想文になってしまったようでお許しあれ(^^;;;

「カポディモンテ美術館展」に《アンテア》

2010-02-01 23:23:18 | 展覧会
日経おとなのOFF」2月号を読んで、いやはや、驚いた!ナポリの「カポディモンテ美術館展」が日本で開催されるなんて!!

カポディモンテ美術館ガイド本の表紙を飾るパルミジャニーノ《アンテア》も来日予定だとかヽ(^o^)丿


パルミジャニーノ《アンテア》(1530-1535)カポディモンテ美術館

やはり、カラヴァッジョ《キリストの笞打ち》は無理だったようだが、ナポリのカラヴァッジェスキ作品やファルネーゼ家やスペインブルボン家コレクションからのバロック絵画来日が期待される。もちろん、ティツィアーノも来ますって(笑)

<東京>
■期間:2010年6月26日~9月26日
■会場:国立西洋美術館

<京都>
□期間:2010年10月9日~12月5日
□会場:京都文化博物館

ちなみに、「ボルゲーゼ美術館」所蔵のドメニキーノ《ディアーナの狩猟》の正面のニンフってパルミジャニーノ風の顔立ちだと思うのだが…いかが?(^^;


ドメニキーノ《ディアーナの狩猟》(1616-1617)ボルゲーゼ美術館


ドメニキーノ《ディアーナの狩猟》部分

ということで、「ボルゲーゼ美術館展」の感想も書かなくては...(^^ゞ