花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

CARAVAGGIO:The Final Years 展 (5)

2005-05-03 01:12:37 | 展覧会
さて、第3室はマルタ島時代の作品だ。

左に「マルタ騎士の肖像」、右に「眠るアモル」が並ぶ。

「マルタ騎士の肖像」は現在の定説では騎士アントニオ・マルテッリの肖像と言われている。黒の騎士服の中央に縫い取りしてある白絹のマルタ十字を近寄って注意深く見ると、白乳色に灰色・灰褐色と複雑な色味で、意外に素早いラフな筆致で描かれていることがわかる。離れて観ると、それが白絹の光沢ある質感と微妙な陰影になっており、若い頃からの写実描写の腕が認められる。
イタリア人騎士らしい体躯と風貌なのだが、黒の騎士服で堂々たる威厳を感じる。細部を見ると意外に手を抜いているところが見え、速描きCARAVAGGIOのご愛嬌なのかも…とも思った。

「眠るアモル」は黄昏の陽光の注ぐなかで眠る。子供らしいくびれの皺が可愛らしさと言うより何か生々しさを感じさせるのは何故だろう。背景の闇の中にアモルの翼が弧をえがき浮かび上がるのだが、その弧だけで大きな翼の存在を暗示する。CARAVAGGIOの計算のようなものを感じる。
どうも私にはこの眠るアモルを取り巻く背景の闇が得体の知れぬもののように感じられ、何故だかこの眠りも安らかなものとは思えないのだ。