4/4朝日新聞青森版が伝えておりました。
-ナマコの「海底マンション」建設ブーム-
陸奥湾の海底で、ナマコの子を育む「集合住宅」の建設がブームだ。建材となるのは、養殖ホタテで貝柱を出荷した残りの貝殻だ。中華料理の高級食材としても使われるナマコは、中国の経済成長に伴い需要が急増している。湾内の各漁協は資源保護を目的に、マンション造りを急いでいる。
ホタテの貝殻を、海底に50センチほど積み重ねると、貝殻のすき間がナマコの絶好の住み家になる。処分に困っていた養殖ホタテの貝殻を有効利用する一石二鳥の技術は県が開発した。
県によると、県内のナマコ漁獲は年間1500トン前後で、北海道に次ぎ全国2位。水揚げ額も30億円を超え、養殖ホタテの3分の1という優良資源だ。大半が陸奥湾でとれる。
元々、陸奥湾では全国市場で評価が高いアカナマコはとれず、アオナマコとクロナマコを地元消費用にとる程度だった。一方で、乾燥ナマコを使う中華料理の世界では、青森のアオとクロは北海道産と一二を争う最高級食材だ。中国の成長とともに十数年前から需要が増え、1キロ300円程度だった価格は1キロ3千円程度に跳ね上がり、漁獲量も数倍に急増していた。
そんな中、ナマコ資源保護を目的に、県水産総合研究所が開発したのが、ホタテを使った魚礁だ。
着想の原点は、漁師の知恵。ホタテ養殖で棚の下に落ちた貝殻の下にナマコの子が多いことは知られていた。貝殻のすき間は、硬い上に藻類も多く付き、稚ナマコが生まれて最初に定着する岩場としても、エサ場としてもいいらしい。
本来、産業廃棄物の貝殻を海に沈めることは違法だが、有効利用として海上保安庁の許可を取り、2008年に実用化した。各漁協が造成を始めている。
効果も折り紙付きだ。昨年の研究所の調査では、1平方メートルあたり最大28匹の稚ナマコが確認され、平均でも18匹が確認された。天然の岩場では平均7匹なので、2倍以上だ。
魚礁は50メートル四方で、ホタテ貝殻を50~60センチほど積み重ねる。県によると、現在では陸奥湾全域に29カ所設置されており、総面積は、青森市営球場グラウンドの5倍になった。
ナマコ資源は今、ハマの漁師の悩みの種だ。漁が盛んなむつ市漁協統括の木村悟さんは「中国で好まれる大型ナマコが減ってきた。昔は400グラムぐらいのはたくさんいたが、今は250グラムくらい」と言う。むつ市漁協は08年から魚礁を3カ所造成し、年ごとに禁漁区も設けている。
全国的にも、育てた稚ナマコの放流や、漁業者数を制限する動きは出ている。中央水産研究所(横浜市)の牧野光琢さんは「中国需要の下、管理をしないと国内ナマコ資源に悪影響が出る可能性は高い」と話す。
手間がかかる養殖のホタテと違い、ナマコはただとるだけ。経費を考えると「陸奥湾のナマコ漁業が上げる利益は、ホタテと同程度かもしれない」と話す関係者もいる。
県水産総合研究所のナマコ担当、野呂英樹さんは「高齢化でホタテ漁業を続けられる人も減っている。手間のかからないナマコ漁が続くよう、よい管理手法を追求したい」と話した。
(長野剛)
-引用終わり-
-ナマコの「海底マンション」建設ブーム-
陸奥湾の海底で、ナマコの子を育む「集合住宅」の建設がブームだ。建材となるのは、養殖ホタテで貝柱を出荷した残りの貝殻だ。中華料理の高級食材としても使われるナマコは、中国の経済成長に伴い需要が急増している。湾内の各漁協は資源保護を目的に、マンション造りを急いでいる。
ホタテの貝殻を、海底に50センチほど積み重ねると、貝殻のすき間がナマコの絶好の住み家になる。処分に困っていた養殖ホタテの貝殻を有効利用する一石二鳥の技術は県が開発した。
県によると、県内のナマコ漁獲は年間1500トン前後で、北海道に次ぎ全国2位。水揚げ額も30億円を超え、養殖ホタテの3分の1という優良資源だ。大半が陸奥湾でとれる。
元々、陸奥湾では全国市場で評価が高いアカナマコはとれず、アオナマコとクロナマコを地元消費用にとる程度だった。一方で、乾燥ナマコを使う中華料理の世界では、青森のアオとクロは北海道産と一二を争う最高級食材だ。中国の成長とともに十数年前から需要が増え、1キロ300円程度だった価格は1キロ3千円程度に跳ね上がり、漁獲量も数倍に急増していた。
そんな中、ナマコ資源保護を目的に、県水産総合研究所が開発したのが、ホタテを使った魚礁だ。
着想の原点は、漁師の知恵。ホタテ養殖で棚の下に落ちた貝殻の下にナマコの子が多いことは知られていた。貝殻のすき間は、硬い上に藻類も多く付き、稚ナマコが生まれて最初に定着する岩場としても、エサ場としてもいいらしい。
本来、産業廃棄物の貝殻を海に沈めることは違法だが、有効利用として海上保安庁の許可を取り、2008年に実用化した。各漁協が造成を始めている。
効果も折り紙付きだ。昨年の研究所の調査では、1平方メートルあたり最大28匹の稚ナマコが確認され、平均でも18匹が確認された。天然の岩場では平均7匹なので、2倍以上だ。
魚礁は50メートル四方で、ホタテ貝殻を50~60センチほど積み重ねる。県によると、現在では陸奥湾全域に29カ所設置されており、総面積は、青森市営球場グラウンドの5倍になった。
ナマコ資源は今、ハマの漁師の悩みの種だ。漁が盛んなむつ市漁協統括の木村悟さんは「中国で好まれる大型ナマコが減ってきた。昔は400グラムぐらいのはたくさんいたが、今は250グラムくらい」と言う。むつ市漁協は08年から魚礁を3カ所造成し、年ごとに禁漁区も設けている。
全国的にも、育てた稚ナマコの放流や、漁業者数を制限する動きは出ている。中央水産研究所(横浜市)の牧野光琢さんは「中国需要の下、管理をしないと国内ナマコ資源に悪影響が出る可能性は高い」と話す。
手間がかかる養殖のホタテと違い、ナマコはただとるだけ。経費を考えると「陸奥湾のナマコ漁業が上げる利益は、ホタテと同程度かもしれない」と話す関係者もいる。
県水産総合研究所のナマコ担当、野呂英樹さんは「高齢化でホタテ漁業を続けられる人も減っている。手間のかからないナマコ漁が続くよう、よい管理手法を追求したい」と話した。
(長野剛)
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