眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

国道レース

2021-06-24 08:19:00 | 短い話、短い歌
 思うままに野原を駆け回っていた頃は、怖いものなんてなかった。いつでも自然を友とし、風を味方につけていたのだ。結ばれる手はあっても、自分に牙を剥くようなものは存在しなかった。恵まれた環境に気づくこともなく、時がすぎた。初めて都会に出てわかったことは、友を見つけることの難しさだった。気づいた時には、激しい競争の渦に巻き込まれていた。

「お兄さん後ろ」
 馬上の僕を見上げながら店の人が言った。
「えっ?」

「矢が刺さってますよ」

 またか。さっきから何者かに追われているような気がしたのだ。しかし、分厚いリュックが我が身を守ってくれた。

「ありがとうございます」

 番号を伝えてたこ焼きを受け取った。熱い内に届けることが、現在の僕の仕事だ。危険が多くても今は前に進む以外にない。僕らは人馬一体となって国道に躍り出た。




突き刺さる背中の痛み保証なき馬主となって我が道を行く


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 捨てる男 ~ミスタッチ・ブ... | トップ | noteを離れてよかったこと ... »

コメントを投稿