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眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

脳天気会談

2020-08-25 11:19:00 | ナノノベル
 大統領が専用機から降りてくるのを首相が笑顔で出迎えました。両国の首脳が直接会って会談するのは久々でした。
「お久しぶりです。お元気そうで何よりです」
「あなたも大変お元気そうです」
 まずは互いの健康を気遣う挨拶から始まりました。
 その後は桜並木を歩きながら夜遅くまで活発な意見交換がなされました。

「顔色がよいですね」
「あなたも姿勢がいいですね」
「いえいえ。背が高いですね」
「いい色のネクタイですね」
 国境を越えた親密振りが見て取れる内容となりました。

「お宅の国の政治は一流ですね」
「お宅の国はマンガが一流ですね」
「いえいえ。政治も一流ですが軍事力も一流ですね」
「あなたのとこは暮らしも福祉も充実してますね」
「いえいえまだまだ発展の途中でして」
「わっはっはっはっ」
「はっはっはっはっ」
 互いに腹を割った活発な意見交換がなされた模様です。

「経済も一流ですが映画の方も一流ですね」
「お宅の国はお笑いは多様性がありますね」
「あなたの国は銃産業が多彩ですね」
「あなたの国は芸能が活発ですね」
「いえいえ。そちらもなかなか」
「今夜は月がきれいですね。わっはっはっはっ」
「はっはっはっはっ」
 会談は深夜まで及び、かなり踏み込んだ内容に及びました。

「野球がお強いですね」
「いえいえ。卓球がお強い」
「宇宙開発が進んでらっしゃる」
「治安が大変安定していらっしゃる」
「いえいえ。お宅の国は銃産業が安定してらっしゃる」
「わっはっはっはっ。不倫が大変話題だとか」
「はっはっはっはっ。陸上が大変なスピードで」
「いえいえ。そちらのマラソンもなかなか」
「スポーツ人口の底上げに努めておりますが」
「厚底シューズが問題になっているようだが」
「厳しく受け止めねばなりません」
 テーマは多岐に及び、首脳は共にコートを羽織りました。

「桜がきれいですね」
 と大統領が言えば、
「ああそうですか」
 と首相が答え、それに対し大統領は、
「また来ます」
 と応じ互いにきつく握手を交わしました。
 二人は終始穏やかな笑顔を浮かべながら、久しぶりの会談は好感触の内にお開きとなりました。



【短歌】気まぐれ睡魔

2020-08-25 07:48:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
訪れてほしくないのに訪れる今夜睡魔は雨の気まぐれ

集中と意欲を削ぎに押し寄せる睡魔よ何故に今頃来るか

願望を裏切るように訪れる訪れぬああ気まぐれ睡魔

あるとこに偏っている平等と自由を欠いたアンフェア睡魔

そこいらに疎ましいほどあったのに睡魔よどこへ逃げて行ったの

朝が来るまでには来ると信じたい呼んで来ぬならただ願うのみ

訪れてほしい時には訪れぬ今夜睡魔は猫の気まぐれ

モチーフを集めよう

2020-08-25 07:37:00 | フェイク・コラム
「身近にあるモチーフ」

 モチーフはどこにでも落ちている。ちょっとしたこと、些細な出来事に気をとめて、モチーフを拾ってくる。時には少し嫌なことにも目を光らせて、それもモチーフに取り込んでみる。モチーフを集めることを癖にすると、日常の風景への関心が増す。アンテナを張っておくことで、モチーフは集まってくる。「モチーフ好循環」だ。日々モチーフを集めて、メモリーにキープしよう。


「モチーフにはかなわない」

 モチーフは日々降り積もっていく。かつて拾ったモチーフは時の中で色褪せて、難解な化石のように謎を深めていく。そこにあったモチーフを消化しようとする間にも、そこここに湧いて出るモチーフを拾わずにはいられない。どれほど集めたところで、モチーフは手に負えない。
 モチーフが集まることはうれしくて、かなしい。
 モチーフは人間の限界と無力さも教えてくれる。


「モチーフを発酵させよう」

 取るに足りないと捨ててしまっては、モチーフはゴミになってしまう。時には自分の感性を疑ってみることも必要だ。今は何も広げることはできないけれど、それは後から何かに化けるよいモチーフかもしれない。少し気になるなら、モチーフにして取っておいた方がいい。
 例えば、嫌なことを言われた時、その場で感情的になって反論しない方がいい。一瞬の爽快感と引き替えにモチーフを手放している可能性がある。モチーフのことを第一に考えるなら、その場ではぐっと堪えて「モチーフ・キープ」である。
 その時がきたら、モチーフは熟成されて、ストーリーに化ける。(「モチーフ・ブレーク」)しかも、1つとは限らない。よいモチーフは、1つから2つにも3つにも化けることもあるのだ。「モチーフ分裂」である。
 今が駄目でも先のことはわからない。モチーフは未来である。


「モチーフとは何か」

 私のpomeraの中には10万を超えるモチーフ群が眠っている。もしも他人に見せたなら、人はそれを指してこう言うだろう。
「なんじゃこりゃあ……」
 モチーフの本質を見事に突いた真っ直ぐな言葉である。
 モチーフ、それは見方によっては、ガラクタ、意味不明、子守歌のようなもの。

 本当のモチーフは心の中に存在する。心のあり様によってモチーフは時に光り、曇り、揺らぎ、浮かび、移ろい、見失われてしまう。
 心の中の見えないものだからこそ、危うくもあり、心強くもある。
 劇的な暮らしに触れて飛んでいくモチーフもあれば、不動の心でつなぎとめておけるモチーフもある。
 どこにいても、どれほど縛られていたとしても、自分の内側で密かに守られる。(「モチーフ・ガード」)
 先輩のくだらないお説教を聞いて退屈の最中に置かれながらでも、モチーフは育てることができるのだ。