眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

しょうゆラーメン

2020-08-17 16:52:00 | 夢追い
「昼行くか」
「ラーメンか」
 一斉に昼の空気が満ちた。誘われるかもしれず、僕は少しどきどきしていた。
「混ぜてくれ」
 その時、チーフが鍋を混ぜるように言ったので、僕はその場を離れることになった。大きな鍋に入った具の多いカレーだった。混ぜるといっても簡単ではなく、強い抵抗があった。こ、これは……。
「パンツが入ってます!」
 他にも布製の物が色々と入っている。Tシャツ、タオル、見覚えのある物が。僕のじゃないかな。冬用のパジャマじゃないかな。
 前田さんが、ははーんと言った。思い当たる節があるようだった。しばらく前に大家さんが頭を痛めていたのは、2階の兄が引っ越しの時に色々と置いて行ったことだとか。

 ラーメン屋は3部屋構造になっていた。僕のいるセカンド・ルームは薄暗く、他に客はいなかった。第3の部屋はもっと暗く、閉鎖している様子だった。食券を買うために券売機に接近したが、どうも電源が切れているようだ。仕方なくファースト・ルームの券売機を使うことにした。
「ききにきてやー」
 チーフの声がした。どうやら注文の仕方がわかっていないようだ。
 千円札を投入するが、すぐに戻ってきた。裏返してみたがやはり戻ってくる。もたもたしている内に、他の人が買いに来た。前田さんだ。
「お先にどうぞ」
 しかし、前田さんが握りしめているのは万札で、それはここには入らない。
ウィーン、ウィーン、ウィーン……
 頑なに拒まれる千円札のかなしみ。
 店のメニューはたった1つ。しょうゆラーメンだ。

コメント
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