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眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

小さいおじさんの寝息

2020-08-06 23:01:00 | 幻日記
 おかしな時間に目が覚めて海苔を食べた。
 1枚、2枚、食べると喉が渇いた。冷蔵庫を開けると小さいおじさんがチーズを食べていた。
「あまり食べるなよ」
「わかっとるわ!」
 逆に釘を刺されたような思いだった。改めて言うほどでもないことは、あまり言わない方がよいのだ。
 お茶を取ってそっと扉を閉めた。

 喉を潤すと少し気持ちが落ち着いた。
 さっきまで大事な夢をみていたような気がするが、設定がよく思い出せない。
 お茶を戻すと小さいおじさんはもう豆腐の上で寝ていた。

 すぐ寝れる人はいいね。

星の住民

2020-08-06 21:43:00 | 忘れものがかり
チキンを食べている時の僕の気持ちと
猫の気持ちはどれくらい同じなの

道を走っている時の僕の気分と
猫の気分はどれくらい違うの

うとうとしている時の僕の心地と
君の心地はどれくらい近いの

僕らは食べてかけて夢みて
失っていく似た者同士

pomeraを開いて打ち込んでいる
僕のことをどう思っているの

君も色々と 考えるの?

【短歌】次の一手

2020-08-06 21:15:00 | 将棋の時間
落ち込んでいる暇はない夜が明けて箱が開けば次の一手だ

難しい選択だけを突きつける棋神の連続次の一手

難問は絶望からは遠いから次の一手は残されている

「負けました」下げた頭が上がったら振り駒がもう始まっている

やむを得ぬ次の一手がぶつかって千日後にも二人は笑顔

次の日も次の日もまた次の日も次の一手を待ってくれない

詰んだってまた初形から指し直す人生は己とのVS


pomeraプレイヤー

2020-08-06 20:23:00 | 【創作note】
リズムに乗って
pomeraをたたけ

ランランラン
ピュンピュンピュン
パンパンパン

いいぞ! その調子!

勢いに乗って
pomeraドリブルだ

ジュンジュンジュン
ピョンピョンピョン
バンバンバン

そうそう! その調子!

涙を拭いて
pomeraを開け

フーフーフー
ピュアピュアピュア
ダンダンダン

それだ! その調子!

不満を乗せて
pomeraをたたけ

ブーブーブー
ジュクジュクジュク
プンプンプン

やんや! その調子!

世間を置いて
pomeraをたたけ

ポッポッポッポ
ドクドクドク
ジョアンジョアンジョアン

いかす! その調子!

不安を積んで
pomeraを飛ばせ

ブンブンブン
プルルルルル
ファンファンファン

イエーイ! その調子!

プリズムに酔って
pomeraをたたけ

ジュトンジュトンジュトン
メラメラメラメラ
ロットロットロット

まだまだ! その調子!

睡魔に向けて
pomeraをたたけ

ノシノシノシノシ
ジュージュージュー
ウッホッホッホッホ

なんと! その調子!

路上の龍

2020-08-06 02:36:05 | 夢追い

「何時まで?」

「年内ですか?」

「えっ、違うよ。今日は何時まで」

「今日はもう終わってます。閉店後に入って来たのがあなたですが」

「なんだって、だったらなんでこんなもの飲んでるんだ。帰るよ」

「ありがとうございます。250円いただきます」

「安いな。水割りいっぱい飲んだけど、そんなんでいいのかね」

「勿論です。ほとんどが水でほとんどが氷ですから、気持ちほどいただきます」

「いい人だね。また来るよ」

 

 店を出るとまだ昼間だった。この辺りは人間将棋が盛んなようで、身近な交差点を利用して雇われた駒たちがブレーンの指示に従って、囲いを構築したり手裏剣を放ったり、破壊活動に汗を流したりしていた。

「おまえ入ってくるな!」

 形勢を悲観した小駒たちの一部が、隣の交差点から流れてきて、別の戦場に加わろうとするのを、司令塔格の馬が中央から罵声を浴びせ牽制している。騒ぎを聞いた警備員が旗を大きく振りながら駆けつけてくると、駒台の上を一旦封鎖して歩の数を数え始めた。傍からみる限り、ルールはあってもやはり人間のすること、それに加えて人通りの絶えない路上の遊戯とあっては、混乱もやむなしといったところだろう。

「あんたもどうかね?」

 白い煙を吐きながら、老人が言った。

「いやあ」

 それは駒としてという意味だろうか。曖昧な返事をして、混乱の収まらない戦場を後にした。しばらく歩く内に道に王や金銀が深く彫り込まれた場所に出た。詰め将棋ストリートだ。

 

「3手詰めか……」

 シンプルな図面の前に立った。一つ片づけていこう。

 龍が入る。銀が動く。桂馬を打つ。玉が逃げる。

 おかしいな。

 龍が入る。のめり込んで、自ら龍になって入った。

 銀が動く。

「うわっ、誰だ?」

 いつの間にか銀も人になっている。誰かが玉方となって、相手をしてくれているのだった。

 桂馬を放つ。玉が逃げる。

「待て! 逃がすか!」

 一路、龍を動かして、玉を追いかけた。

 ひらり。玉が、龍の視線をかわす。

 もう一路、龍はずれて、追撃する。

 ひらり。玉は、涼しげに、追っ手をかわす。

「待て!」

 一路、龍は身を寄せる。

 ひらり。玉は、堂々と返事をする。

 追っても追っても、なかなか追いつけない。こんなはずではないのだが、龍は自分の力を持て余しているのだ。本来はもっと動けるのだったが、相手のペースにはまりすぎているのだ。王者の風格が龍の威勢を吸収してしまうのかもしれない。

「待て! 合い駒を使う気はないのか」

「待て! 3手はとっくに通り過ぎたぞ」

「ふふ、ここは路上じゃないか」

 もう一度、龍が入る。

 銀が動く。

 ふわり。どこからともなく桂馬が宙を舞う。

 玉が逃げる。

 後をすぐに龍が追う。

 ひらり。玉は余裕の顔を変えない。

 

「おまえ入ってくるな!」

 追いかけすぎた結果、いくつも交差点を越えて人間将棋の領域に踏み込んでいたのだった。

「そっちこそ、道で何やってるんだ」

「いいんだよ。ここはこういう町なんだから」

「はい、はい、そこの龍! そこまで!」

 警備員が駆けてきて、顔のすぐ正面で旗を振った。

「すみません。少し、追いかけすぎました」

 手順を逆再生しながら、玉方と路上を戻った。激しい戦場をくぐり抜けて。詰め将棋ストリート。たどり着いた場所は、路上に面した対局室の前になっていて、新聞記者らしき人の姿が見えた。

 

「対局は何時まで?」

「ずっと続くみたいですよ」

「へーっ」

 男は興味深そうに、対局室の襖を開けた。熟考の厳かな気配が、路上に漏れ出した。

「開けたら入らないと」

「そりゃそうだ」

 龍と玉とがここに至って意見を一致させた。男は、常識知らずのようだった。開かれた襖にカブトムシのように付着して様子をうかがっている。

「志村じゃないか」

 コントの中の。

 もたれかかっていた襖が、外れた。

 ほら、言わんこっちゃない。

 関わるのは、ごめんだな……。3手詰めサークルを解いて、僕らは別々の道に進んだ。激しい駒音が、背中を追って駆けてきた。

 

「待ち合わせたでしょう」

 別れたというのに、彼女が控えた桂馬のように待っていた。

 待った分だけ先を急げと角を曲がり、細い通路へと入っていった。

「うーちゃんのお菓子を買うのよ」

「誰だって?」

 聞こえない。彼女の声はいつも聞こえないのだ。

「うーちゃんよ。うーちゃんのお菓子」

 足を止めず、振り返ることなく答える。

 聞こえたとしても、わからない。

「えー、誰って」

 やっぱり、また別れたくなる。(もう、別れたんだしな)わからない話を考え続けるのは、もうたくさんだ。

 チョコレートコーナーを曲がった勢いで炎を吐いた僕は再び路上へ飛び出していった。