何かの罰だったか実験だったかよく思い出せない宇宙に一人。他に行くところもないはずなのに、自分一人にしては部屋は広すぎると思った。外は闇。届かない電波。習性のように引出を開けてラジオを探した。いつかの友の顔が浮かんでくる。僕は昼ご飯を食べていた。すぐに食べ終えて物足りなさを感じた。何か忘れていたことを思い出して席を立った。友達の机の上に素麺を見つけた。それは僕が用意した僕が食べるはずだった素麺だ。「そういうわけだから……」納得はしていても、友達は少し寂しげな顔をしていた。「食べる?」友達はうれしそうに素麺を啜り始めた。素麺が好きだと友達が言った。そんなことがあったな……。
学園祭が始まるのをアスファルトの上で待っていた。荷台にミサイルを積んだバイクが降下してくる。金網の向こうで危険を察知した小雀が飛び立って適当な距離を置いた。ミサイルは人間の頭よりも太く4Bの鉛筆よりも強力そうだった。離陸したと思えばまたすぐに別のバイクが飛んでくる。とうとう他国の庭にまで演習に来るようになったか。計画は間近に迫っていた。「今日ミサイル撃つの?」あえてストレートに声にして言った。その方がよほど安全だ。「撃たないよ」友達は笑いながら否定したが、最後まで確かめることはできなかった。突然、鼻血が出てその場を離れることになったからだ。
ふらつきながら建物の中に入る。スリッパがスローモーションになり足下に浮いている。「大丈夫ですか?」見知らぬ人の声が微かに耳に届く。ハンカチを鼻に突っ込みながら、僕は新しくできた美容院の中にいた。かけるべき椅子はない。この上ないアウェー感。今必要なのはカットでもシャンプーでもない。次に僕がいたのは整骨院だった。たくさんのベッドの上で骨と向き合う人々の姿があった。ここも僕のいるべき場所ではない。エレベーターに乗るとあっという間に6階にまで上ってしまう。行き過ぎた。確か病院は3階だったか。乗り込んできた女の早押しに負けたのか、3階のランプはつかなかった。1階に着くと厄介な奴が乗り込んできた。僕はバランスを崩しその場に転倒した。「体調が悪くてね」奴はふふふと馬鹿にしたように笑った。「ほんとかね」信用がない。元々頭から疑ってかかる奴なのだ。順を追って説明するのも馬鹿馬鹿しい。「まあ見ての通りさ」病院に行くとこだと言うと南館だろうと奴は言った。3階に着いて記憶の場所で見つけたのは動物病院だ。
1階に下り外に出た。奴に教わった方向に歩き出したが、どうも怪しい。逆かもしれない。不信には不信。情報が誤っていることを念頭に置いて急がず歩いた。高速道路がクロスしている交差点。あまり記憶になかった。あるいはどこにでもあるような景色だ。歩くほどに何もなくなっていく。廃れていく感じ。南館はこちらではないのだ。もう少し行って、引き返そう。何かの新製品を歌いながら、軽トラックが狭い車道に入っていく。遙か後方で爆発音がしたような気がした。やっぱりな。