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IMジェイエスピー社員が綴る日替わりブログ

すまじきものは…

2025-04-18 09:00:00 | 日記
 新年度になって3週間が経とうとしている。この春、新生活や新たな環境に身を置く方、特にサラリーマンの新入社員の皆さんに向けたメッセージを。さらに春から始まる雑感を通して、雑多に作品紹介をしてみたい。

 「春はあけぼの」と清少納言が書いた時代、昨年のNHK大河ドラマ「光る君へ」(※1)の主役である紫式部は、「源氏物語」(※2)において「宮仕え」の苦労を書いている。歌舞伎「菅原伝授手習鑑」(※3)においても「せまじきものは、宮仕えじゃなぁ」と出てくる。当時の宮である朝廷や大名家などを会社や官庁に置き換えれば現代にも通用する話だ。「上司」がいたり、「先輩」がいたり、「同僚」がいたりと、現代の「宮仕え」を始めた新入社員の皆さんにとって、学生時代と違う気の遣い方をする場面が多いのではないだろうか。まだスタートしたばかり。気を休めつつ、心地よいストレスを感じるように、慣れていってほしい。

 まだ春が遠く感じられた1月、世間を騒がせた記者会見の席に、「沈黙」(※4)などで高名な遠藤周作のご子息・龍之介氏がいた。今から30年前、私が御父上の著作を読み漁っていた時期に、彼がプロデュースしたドラマ「御家人斬九郎」(※5)を欠かさず見ており、当時より注目していた。時の流れは恐ろしいものである。遠藤周作の死後25年経って発見された未発表原稿が「影に対して―母をめぐる物語」(※6)として出版されたのも令和になってから。その作品の一場面にまつわるエピソードが面白い。龍之介氏が就職したときに、周作氏はこういう内容の声をかけたそうだ。
「私は足を取られて歩きづらいが、砂浜を歩いてきた。お前はサラリーマンになって、いろいろな人に守ってもらえる、いわば舗装道路を行くことになったから歩きやすいだろう。しかし十年後、二十年後にその足跡は見えない。砂浜を歩けばこそ、足跡は残る。」
この話には後日談があり、「どうだ舗装道路の歩き心地は?」と聞かれた龍之介氏が、「非常に快適な道を歩いておりますが、お父様の吸ったことのないような排気ガスを吸っております」とやり返し、父君もニヤッと笑ったというものだ。

 小説家の自分を砂浜の道に、サラリーマンを舗装道路にたとえるところが狐狸庵先生(※7)らしいが、小説家にはない実社会の厳しさをそれとなくやり返す龍之介氏も父親譲りである。職人の息子に生まれてサラリーマンをやっている私だからかもしれないが、このやり取りはシンパシーを感じる。その上でこうも思う。
「舗装道路に足跡は残せなくても、標識や看板を打ち立てて歩くサラリーマンがいたっていいし、誰にも止められないスピードで走るサラリーマンもいたってじゃないか」
と。あなたはどんなサラリーマンになるのか、私はいま、そこに一番興味がそそられる。そして、あなたのゴールデンウィークの過ごし方に想いをはせる。今年は読書にしますか?レンタル視聴にしますか?

(※1)NHK大河ドラマ「光る君へ」:2024年。紫式部役を吉高由里子が主演。個人的には安倍晴明役をユースケ・サンタマリア、清少納言役をファーストサマーウイカというキャスティングが秀逸。
(※2)「源氏物語」:いわずと知れた日本史上に残る小説だが、大物小説家の現代語訳でぜひチャレンジを。与謝野源氏、谷崎源氏、寂聴源氏などもあるが、今を時めく直木賞作家・角田光代の現代語訳がおすすめ。
(※3)「菅原伝授手習鑑」:「すがわらでんじゅてならいかがみ」と読む。菅原道真(菅丞相)に失脚事件を下敷きにしている。四段目「寺子屋」の段が有名で、本文で紹介した武部源蔵のセリフもこの段で語られ、大きな見せ場。2025年9月に通し狂言として歌舞伎座で上演予定。
(※4)「沈黙」:江戸初期のキリシタン弾圧と殉教・棄教といったテーマを、宣教のため来日した神父の視点で描く遠藤周作の代表作の一つ。2016年にはマーティン・スコセッシ監督で「沈黙 -サイレンス-」として映画化され、こちらも出色の出来。
(※5)「御家人斬九郎」:原作は時代小説の大家・柴田錬三郎の連載もの短編小説。ドラマは1995年~2002年までシリーズ化。渡辺謙が主演し、コミカルなシーンや後味の悪い話など、時代劇の型にはまらないエピソードを演劇界出身の俳優がしっかりと演じる。
(※6)「影に対して―母をめぐる物語」:遠藤周作の未発表原稿をまとめた自伝的小説。重苦しい話である頃もあり、遠藤周作の背景を理解した上で挑むべき、ファン向けと考えてよい作品。
(※7)狐狸庵先生:遠藤周作の雅号「雲谷斎狐狸庵山人」より。北杜夫における「どくとるマンボウ先生」と同じように、小説家よりもエッセイスト・ユーモアリストの側面が強調された呼び方。この二人の対談集も面白いが、入門はこちらがおススメ。

(啓)

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