い~すと の 愚痴

ある鉄道会社で車掌をしている"い~すと"が語る愚痴

見習い車掌育成記vol.4

2016年11月16日 01時41分50秒 | 鉄道員の愚痴
見習い初日は人身事故でダイヤが乱れたものの実際にドアの開閉を行ったことは前回の日記で書いた通りです。
今日は見習い2日目のことをご紹介します。

初日に行ったドアの開閉は車掌の業務のなかのごく一部でしかありません。乗務する区間を覚えること、すなわち車窓の景色を覚えることも車掌に必要なスキルです。
見習い中に全線を完璧に頭に入れることは求めていませんし、毎日乗務していれば自然と覚えるものです。最低限として車内放送をするポイントを教えます。
最近は自動放送が普及してきていますが、故障などで自動放送が使用できない場所は自分で放送しなくてはいけませんし、なによりいまどの辺を走行しているか、駅までどのくらいかを把握出来なければ心に余裕がなくなってしまいます。

各駅ごとに、目標物を伝えて、実際に目で見て、放送マニュアルに記入させていきます。
放送ポイントは人によって微妙に異なりますが、大きく変わることはありません。私の放送ポイントで教えていくわけですが、こうした点も師匠の色がそのまま見習いに伝授されるわけです。

見習いは余裕なく、必死になってポイントを記入しながら目標物を探しています。
みんな毎日みている車窓ですから自然と頭に焼き付き、休憩中に「新しいマンションの建設が始まった」とか「あそこに新しい飲み屋ができたね」といった会話がされることもあります。

一通り放送ポイントを教えたら、実際にポイントを意識し探しながらドア開閉を行うようにしました。
目標物が見つからず、ということもしばしばありましたが見習い序盤にはよくあることですから怒ったりはしません。見習いを信じて広い心を持つことも教える側には必要不可欠です。

見習い車掌育成記vol.3

2016年11月08日 21時05分39秒 | 鉄道員の愚痴
初日から人身事故によるダイヤ乱れの洗礼を浴びた見習いですが、いつまでも私の後ろから見ているだけでは意味がありません。

やり方を教えて
手本をみせて
本人にやらせてみせて
振り返ってみて
はじめて自分のものになります。

様々ある車掌の仕事の中でもドアの開閉ができなければはじまりません。どのタイミングから見習いに担当させるかは指導者が判断しますが、私は初日の最後の列車で見習いに任せてみました。
駅に到着すると正しく停止位置に止まっていることを確認しドアを開けます。発車の際は列車の一番後ろから最前部まで見渡し、お客さまの乗り降りが終わったことを確認しドアを閉めるわけですが、駆け込み乗車を多いですからそのタイミングは難しいんです。

ちょうど夕方の帰宅ラッシュが始まる頃で利用者も増えてくる時間帯です。
「焦らず、落ち着いて、迷ったら閉めないで待つこと」と言ってドア開閉を見習いにバトンタッチしました。

1駅目は緊張しながらもスムーズに閉扉できました。
2駅目は複数の駆け込み乗車があり数回開け閉めを繰り返してしまいました。
3駅目以降は特段の問題はなく自分で判断してドアを開閉していきました。

ドア開閉ひとつにしてもその一瞬を自分で判断しなくてはなりません。高度な判断が求められる仕事です。
でもこればかりは習うより慣れろで数をこなして、タイミングや各駅ごとの流動を身体で覚えていくのが一番かもしれません。

私も初めてドアを閉めたときは緊張でいっぱいでしたね。朝のラッシュ時なんてどのタイミングで閉めればいいの?なんて思ってましたけど、いざやってみると“ここだ!”という瞬間があることがわかってきました。
自分の初めてを思い出しながら指導をしている自分がいます。8年も前のことですが鮮明に頭に浮かびます。きっと私の師匠も同じような気持ちだったに違いありません。

以上、見習いの初めてのドア開閉でした。

見習い車掌育成記vol.2

2016年11月04日 01時09分04秒 | 鉄道員の愚痴
11月になりました。近年のハロウィンブームで渋谷などでは仮装する人で賑わいますし、繁華街以外でも各地でイベントが開催されるようになりました。
私は特段の興味はありませんが、みなさんは仮装をされましたか?

さて、私と見習い車掌の「マンツーマン」による乗務が始まりました。
見習い車掌育成記vol.2をお届けします。

見習い車掌は、研修施設で机上教育を受けてきておりますが、頭に知識として入っていても実務経験がなく十分に理解・修得しているわけではありません。
乗務実習において車両や信号など、実物を見て、実際に作業をやることで乗務区間を把握し取り扱いを身につけていきます。

見習い初日はいつもより早めに出勤し顔合わせをします。
私が担当する見習いは、私と同じく高校を卒業して我が社に入った21歳です。鉄道が好きなようですので趣味の話は合いそうです。

初日は、まず乗務の準備や点呼などを30分程度かけて教えます。
車掌や運転士は列車に乗務することが仕事ですから職場から離れて一人で業務をこなすわけです。点呼は、管理者から工事情報や変更、注意点を伝達する重要なものです。
私たちが何気なくこなしている作業ですが、見習いにとっては初めてでメモを取りながらですから30分なんてあっという間です。
メモをとって覚えようとしている姿は初々しいですね。私にもそんな時期があったんですね〜
さすがにいきなり初日から見習いが点呼をやるのは難しいのですから私が実際にやって手本をみせました。

点呼が終わると乗務です。ここまで担当してきた車掌と交代します。引き継ぎも最初は私が行い、見習いはすぐ横で様子を見ています。
最初の列車では、点呼や引き継ぎと同様に車内放送やドアの開け閉めといった一連の作業を私が説明しながら行いました。駅に着くごとに乗務員室からの視点を見せ、注意点を教えていきます。
「この駅は、階段付近にお客さまが滞留する」「この駅では必ず駅員から合図をもらってドアを閉めること」など注意点はたくさんあります。

ひと駅ずつ教えていた最中、なんと人身事故が発生しました。
当該ではなく他の列車で現場はいま走行しているところから離れており、すぐに運転を見合わせることはなさそうですが、まさか見習い最初の列車からダイヤが乱れるとは…
なんとか終点までは行けて折り返しで運転見合わせとなりました。見合わせ中も最初のうちは私が車内放送をしていましたが、途中から見習いにバトンタッチしてみると、そつなくこなしてくれました。駅でもホームの立ち番をやっていたので放送は得意のようです。

運転再開後も担当列車の運休や行き先の変更など、色々ありました。イベント尽くめで洗礼を受けた初日になりました。見習いはかなり疲れたことと思います。
退勤はなんとか遅れずに済みました。乗務終了時の点呼も私が実際にやってみせて初日は終了しました。