い~すと の 愚痴

ある鉄道会社で車掌をしている"い~すと"が語る愚痴

速い人、遅い人

2017年09月20日 14時13分11秒 | 鉄道員の愚痴
台風18号は文字通り日本を縦断し、九州、四国、本州、北海道のすべに上陸した初めての台風となりました。
すでに温帯低気圧に変わりましたが、北海道を抜けても台風であり続けることが稀ですからいかに勢力を保ったまま北上したかがわかります。
大分県では津久見市で街が冠水している映像や北海道で農作物への被害が報じされています。被害に遭われたみなさまにお見舞い申し上げます。

今年は9月に入ってからも過ごしやすい日が続いています。例年、酷い残暑で汗だくになるものですが、嘘のようです。
台風18号が通り過ぎたことで一段と秋の空気が入ってきてまた一歩季節が進みそうです。


さて今日は、小田急の沿線火災がなければ書く予定だった「速い人、遅い人」というお話です。

日本の鉄道は、ローカル線などでワンマン列車はありますが都市部ではまだまだ珍しく、運転士と車掌が乗務しているツーマンが一般的です。
運転士と車掌は協力して一つの列車を運行するいわば夫婦のような存在です。

といっても勤務形態は会社によってさまざまで、そのコンビは大きく分けて3パターンあります。

・1日の勤務が同じで、ローテーションも一緒。基本的に同じコンビのままの会社。
・1日の勤務は同じでもローテーションが異なり、勤務の度に違うコンビになる会社。
・1日の勤務もローテーションもバラバラで乗務列車によってコンビが変わる会社。

どの鉄道会社のいずれかのパターンに当てはまるかと思います。

運転士も車掌も人間ですから仕事には機械的ではなく人間らしいさというものが表れるものです。
それが今日のタイトルである「速い人、遅い人」です。

一番わかりやすい仕事内容といえば、運転士は列車の運転操縦、車掌はドア開閉や車内放送です。
そこはその人の人間性がよく出るところでもあります。

列車の運行ダイヤは、秒単位で決められいます。

A駅からB駅まで走行時分は1分15秒
B駅での停車時分は25秒
よってB駅の発車時刻はA駅発車の1分40秒後
といった具合です。

これを列車ごとにやっていって1日の運行ダイヤが決まるわけです。
(標準発車時刻というものがありますがここでは割愛します)

運転士ならば走行時分、車掌は停車時分が一番影響する部分なのですが、定められた走行時分や停車時分に対してどんな運転やドア開閉をするかということです。

常にガッツリ飛ばす人や逆にマイペースな人、定められた時分ピッタリの人、本当に人によって様々で十人十色です。
車掌も同じで、乗降客の多い駅で攻める人、常にのんびりの人とその人の性格が表れます。

人が行うことですから全員が画一的にとなるわけがなく、その人の色がでるのは当たり前ではありますが、安全を損なうことがあってはいけません。車掌でいえばあまりに急ぐあまり駆け込み乗車でもなく普通に乗ろうとしているお客さまを挟むことがあってはいけません。
ただ、あまりに遅い人だとなかなか定められた列車ダイヤ通り定刻に運行できず数十秒から1〜2分の遅れになってしまうことがあります。
運転士も車掌もマイペースで遅い人だと最悪で、何かトラブルがあったわけでもないのに原因不明の遅れが発生します。

誰は飛ばさない、○○さんはマイペースというのはたいてい職場でも知れ渡ってます。
朝のラッシュ時間帯は物理的限界に近いほど短い間隔で運行してますから30秒遅れれば後続列車も定刻で走れなくなります。ですから一本前が○○さんであれば、こちらも無理せずいつもより気持ちのんびりいこうとなるわけです。

私は周りからはガツガツいく速い人だと言われます。決してそんなことないと思っているのですが…
相方となる運転士は、しっかりダイヤに乗る(定刻で走れる)人であってほしいと思います。

以上、速い人と遅い人についてでした。

ミサイルと台風18号

2017年09月17日 10時23分24秒 | 日記
先日はミサイルが発射され日本の上空を通過しました。今日から明日にかけて台風18号が日本を縦断する予報です。

15日のミサイル発射は、朝のラッシュが始まる頃でした。東北地方方面に発射され、関東でも北関東三県(群馬、栃木、茨城)にJアラートが発表されました。
私の乗務路線には影響がありませんでしたが、今回も上空を通過しただけで被害がなくホッとしています。
ただ、今回も通過で終わったからと安心してはいけないのではないでしょうか。Jアラートが発表されたら空振りを恐れずに避難行動を取らなければなりません。それが出来なければ平和ボケしている証です。

さて、台風18号が鹿児島の近くにいます。
JR九州は今朝の初電から新幹線の一部区間を除いて新幹線と在来線の全線で運転を見合わせています。
JR西日本でも中国地方では午前中から終日運転取りやめを発表しています。近畿圏では夕方以降、本数を通常の半分程度に減らすと発表しています。
今後の天候によって運転状況が変わることもありますから必ず最新の情報をご確認ください。

台風からまだ遠い地域でも雨風が強まることもあります。不要な外出を避けて早めの対策や避難で安全にお過ごしください。
台風も大きな影響のないことを祈ります。

小田急線の沿線火災

2017年09月12日 00時46分27秒 | 鉄道員の愚痴

最近は、携帯からの投稿ばかりで、文字色や絵文字がなく殺風景な日記ばかりで申し訳ありません。
スマホによりパソコンがなくてもパソコンど同様の情報が手軽に入るように手に入るようになった分、パソコンの重要性が下がっていることは間違いありません。ゆえにパソコンを触る頻度・時間は短くなり、ブログの投稿ももっぱら携帯からになってしまっています。
「携帯からメールで投稿」という機能ばかり使っているのですが…

さて、本来今日は別な話題について書くつもりでおりましたが、急きょ変更してお伝えします。
(久々にパソコンからの投稿ですので、誤字脱字などがあればご容赦ください)

今日は、9月10日に小田急線で発生した沿線火災についてです。
大きく報道されておりますからすでにご存じのことと思います。

小田急線の代々木八幡~参宮橋間で沿線にあるボクシングジムから出火し、通りかかった上り列車が火災現場の目の前で停車し、列車の屋根に延焼したものです。
どうして火災現場の目の前に停車したのか?という点に注目が集まっています。
報道によると、火災現場の目の前という危険な箇所に停車したのは小田急線を止めるために踏切の非常ボタンが押されたためのようです。

BuzzFeed NEWS「なぜ小田急線は火災の前で停止したのか?」という記事に詳しい時系列が載っていましたので引用いたします。
当該記事はこちらです。

  • 午後4時09分:火災を認めた警察官が踏切の非常停止ボタンを押す
  • 午後4時11分:列車が自動停止、運転士が踏切の安全確認に向かう
  • 午後4時19分:列車を移動させようとしたが、屋根への類焼を認め、消防の指示でただちに停止
  • 午後4時22分:避難誘導を開始する
  • 午後4時42分:避難が完了する

このよう具合だったようです。
消防から要請があったのか、現場を確認した警察官の判断なのか、どのような経緯で警察官が非常ボタンを押したのかということころまでははっきりしませんが、警察官が非常ボタンを押したことであの位置で停車したことは間違いありません。

小田急線の場合、踏切の非常ボタン保安装置(D-ATS-P)が連動しており、自動的にブレーキが掛かりるシステムのようです。非常ボタンと保安装置が連動しているかどうかは路線や会社によりますので一概に言えませんが、連動しているのは少数派です。
連動しているかどうかにかかわらず、運転士としては踏切の非常ボタンですから踏切に何らかの異常があると疑うでしょうし、踏切の手前のあの位置で停車していたことと思います。

この時点で運転士はまだ沿線火災を確認していないようで踏切の確認に向かいます。繰り返しになりますが、踏切の非常ボタンが押されているので鉄道のルールとしては一般的な対応です。
踏切の確認の際に運転士は沿線火災を認め、司令所とのやり取りをして速やかに列車を移動させようとしますが、すでに車両の屋根に延焼しており消防から指示を受け120m動いて停止しています。
非常ボタンが押された場合、運転再開にあたり運行を管理する司令所とやり取りをすることも一般的であり、決して小田急が特異な手順ということではありません。

そして3分後にはお客さまを線路上に避難誘導を開始しています。
お客さまを線路上に誘導する場合、対向列車を停止させ現場の安全を確保する「列車防護」を行う必要があります。三河島事故に代表されるように併発事故を防ぐことがなにより重要だからです。
列車防護が行えているか確認し、運転士と車掌との打ち合わせをしてから誘導を行うことを鑑みれば3分で避難誘導を開始していることはスムーズに対応されていると感じます。
先頭と最後部の乗務員室とドアから線路に誘導したようですが、約300人のお客さまの避難完了まで20分ということも決して遅いとは思いません。

この列車に乗っていたお客さまによると「十分な誘導案内がなかった」そうです。
列車にいる鉄道会社の社員は運転士と車掌の二人だけです。線路上に避難誘導を行う場合、本来ならば駅社員など応援の社員が駆け付けたうえで行うべきものですが、このように速やかに避難をしなければならない場合は、応援の到着を待たずに行わなければなりません。
運転士と車掌の二人だけでは車内に入り一人ひとりのお客さまに十分な案内を行うことは不可能です。車内放送で「状況を説明し、お客さまに落ち着かせるとももに、どの車両から避難するかを案内する」ことが精いっぱいです。
あとは運転士と車掌が各車両でひたすら線路に降りるお客さまの対応をするだけです。列車の床面から線路上はみなさまが思っているよりも高いものです。ニュースをみているとそのまま降りている方が多いようですが、できればドアのところで足を外に出し、一旦床に座ってから降りるとケガの防止につながります。

今回のケースでは、非常ボタンが押された以上、現場横での停車は避けようがありませんでした。列車を止めるために非常ボタンを押すということは鉄道会社も周知していることですので、そのこと自体を非難することがあってはいけないと思います。
運転士は規定通り踏切の確認を行いましたが、沿線火災と延焼の発見が後手になっていたことは否めませんが、落ち度はなかったのではないでしょうか。その後。避難誘導までの対応も同様です。

ここで沿線火災と列車火災時の一般的な鉄道会社の対応ルールをご紹介します。
(細かいところは会社によって異なりますし、小田急のルールとも一致しない部分があります)

沿線火災の場合、
列車の運行に支障が出たり、消防活動上止める必要がある場合は、現場の手前または通過させたうえで運転を見合わせます。現場横での停車は避けるべきことです。

列車火災
の場合、
トンネルや鉄橋を避けて速やかに停車します。地下鉄などの場合は、最寄り駅まで走行します。停車後初期消火を行いますが、初期消火ができない場合は速やかに車外へ避難誘導します。

ただ、今回のようにやむを得ず沿線火災の現場脇で停車した場合というのはマニュアルに明記している会社はないのではないでしょうか。
今回、現場の横に停車してことは結果論であり、警察、消防、小田急社員はそれぞれの立場でしっかり対応されておりますし、だれかの責任にすることがあってはなりません。
必要なのは、マニュアルにない事態に遭遇したときには安全を考えて行動するかです。予想外を予想外にしないために関係機関との連携の強化やマニュアルや社員教育の見直しが必要になってくると思います。

久々にかなりの長文となりましたが、最後までご覧くださりありがとうございました。