い~すと の 愚痴

ある鉄道会社で車掌をしている"い~すと"が語る愚痴

碓氷峠鉄道文化むら

2015年06月27日 21時32分47秒 | 旅行記
今日は、群馬県横川にある碓氷峠鉄道文化むらに行ってきました。



群馬県と長野県の境ある横川・軽井沢間の碓氷峠は長年鉄道の難所でした。
通称横軽と呼ばれ、この区間専用のEF63形電気機関車が峠越えを支えて、多くの鉄道ファンに親しまれてきましたが、平成9年長野新幹線開業に伴い、横軽間は廃止されました。
EF63の車両基地であった横川運転区の跡地を整備したのが「碓氷峠鉄道文化むら」です。
横軽にゆかりのある189系、EF63、EF62をはじめ多くの鉄道車両が保存・展示されてます。

当初、雨の予報で心配していましたが、なんとか一日曇りでした。
自然に囲まれてた中、多くの貴重な鉄道車両に触れて、名物の峠の釜飯を食べればもう満足です。

都心からも日帰りで出掛けるにはちょうどいい距離ですからみなさまも一度訪れてみてはいかがでしょうか?

乗務員の熱中症報道

2015年06月20日 22時50分42秒 | 鉄道員の愚痴
1ヶ月近く前のことですが、JR東海で東海道線の運転士が熱中症による体調不良のため病院に搬送されたことがニュースになりました。
ネット上で、JR東海では停車中の水分補給が認められているものの指令への報告と報告書の提出が義務づけられているため、水分補給を控えがちだったのでは?さらに制服規則が厳格で、当時は冬服期間で上着を脱衣できなかったことも一因ではという声が上がっていました。
その後、夏服への切り替えを急きょ繰り上げるとともに水分補給時の報告も不要としたことが報じられておりました。

私の勤める会社では乗務中の水分補給に制限はなく、運転士は停車中、車掌は駅間なら自由にできますし、報告も不要です。
上着の脱衣についても私は上着を脱いで白いYシャツ姿では仕事をしないと書いてますが、会社として規制はなく各自の判断で自由に脱ぐことができます。単に私は体調不良になる程度ではないのでダサい白Yシャツ姿にならないだけです。
会社は脱衣を禁止していないので他の社員は暑く感じると上着を脱いでいますし、私も熱中症になるほどであれば無理をせず脱ぎます。体調を崩してまで上着を着る必要はありません。

規則に厳格なところはJR東海らしいと思いますが、水分補給で指令への連絡と報告書の提出が必要なのは行き過ぎであったと思いますが、そのようなルールが出来た背景にはお客さまからのご指摘があるのではないでしょうか。
乗務員室のガラスには「乗務員が業務用携帯電話を使用することがあります。」というステッカーが貼ってあります。乗務員には業務用携帯電話が貸与されており、運行情報の把握や業務連絡などで使用します。
これは過去に携帯電話を使っている姿をみて「仕事中に(私物の)携帯電話を使っている」というご指摘があったからです。

JR東海では水分補給でもお客さまから指摘があったときのために会社が把握しておく必要があると考えたのでしょう。
私個人としては、そのような指摘があった場合は「乗務員が水分補給をすることがある」と回答すればよく、問題にすることではないと考えます。
(仮に、運転士が走行中に席を離れて水分を補給したのであれば、安全上問題がありますのからしっかり調査する必要があります。)

昨今、たとえ小さなことや問題ないことでもお客さまの声として挙がることは多いですし、Twitterなどのようにインターネット上で簡単に拡散します。
お客さまの指摘に対し会社が事実を把握し速やかに対応する必要はありますが、何でも社員に報告を求めるのではなく、会社が認めており安全上問題ないものはその通り回答すれば済むことです。

安全は輸送の生命です。鉄道員が安全を疎かにすることがあってはなりませんが、かといって何でも「これは問題ではないか?」と指摘するいまの風潮も良くありません。
安全に対するお客さまの関心が高く、ある程度は仕方ないのかもしれません。我が社も社員に報告を求めるのではなく、「安全上問題なく、会社として認めている」としっかり回答してほしいですね。

体調管理も仕事のうち。これから暑さは増してきます。しっかり水分を補給して夏を乗り切りましょう。

線路に降りることの危険性

2015年06月15日 23時32分13秒 | 鉄道員の愚痴
なぜ非常用ドアコックを使って車外に出ることが危険なのか、もう少し詳しくお話したいと思います。

お客さまが線路上に降りて大惨事となったものに「三河島事故」があります。昭和37年、常磐線三河島駅で発生した二重衝突事故です。
下りの貨物列車が赤信号を冒進し脱線したところに下り快速電車が衝突し上り線を支障しました。下り快速電車のお客さまが線路に降りて避難しているところに何も知らない上り快速電車が進入し、衝突するとともに線路上に居た乗客をはねてしまいました。
この事故による被害は、死者160人、負傷者296人にのぼりました。

三河島事故で問題になったのが、下り貨物列車と下り快速電車が衝突後、上り快速電車が衝突するまで6分間あったにもかかわらず、上り快速電車を停止させる処置が取られなかったことです。
三河島事故の教訓から、事故が発生した場合、支障している線路の列車を速やかに止めること(列車防護)を最優先にしなければならないと繰り返し指導されています。
たとえ目の前のお客さまが怪我をしていても更なる事故を防止するため、まず列車防護を行い付近の列車を止めることが鉄道員の職務なんです。

列車防護の手段として信号炎管や防護無線などがありますが、現在は指令員が列車無線で停止を確認して列車防護が完了します。付近を走るすべての列車の停止が確認できるまでは乗務員であっても基本的に線路に降りられません。
我々は、隣接線の停止手配が取られず、安全が確保できない状態でお客さまが無秩序に線路に降りてしまうことを危惧しております。避難のために線路に降りたことで他の列車に轢かれては元も子もありません。

報道などから推測するに今回の京浜東北線のケースでは、走行中にドアコックが使われてたことで運転士がドア開扉を確認し、列車を緊急停止させるとともに防護無線により列車防護を行ったと思います。
列車防護が完了しないうちに当該列車が止まった段階でお客さまが線路に降りたため、第一報は線路内人立ち入りとなったが、その後刃物を所持する人がいたことが判明したという感じでしょうか。
命の危機が迫っている中で車内に留まれというのは無理があり、ドアコックを使ったことは責めることはできないと思います。ただ、一歩間違えば三河島事故のように線路に降りたお客さまが隣接線の列車に轢かれていた可能性があったわけです。

事故などで駅間で長時間停止した場合、すぐにその場で降りたくなっても乗務員の指示に従い車内でお待ちください。
今回のように生命に関わる場合、ドアコックを使っても周囲の列車はすぐには止まりません。隣接線に広がらず、乗っていた列車の前後に避難するようにお願いします。

お客さまが線路に降りた場合、線路内に誰も居ないことを確認するまで運転は再開できません。運転再開まで時間を要してしまいますが、このような事情をご存知いただければと思います。

京浜東北線での刃物事件

2015年06月14日 22時32分06秒 | 鉄道員の愚痴
6月9日(火)、京浜東北線の車内で刃物を持った人が居たため乗客が線路上に避難する事件がありました。
幸いにも乗客にケガなどはなく、刃物を所持した人物はその場で警察に確保に確保されましたが、もし私が担当している列車で起きていたらと思うと背筋が凍る思いです。

優先席でタブレットを使用していたことからトラブルになり、片方の男性が刃物を手にしたのを目撃した乗客が他の車両に移るとともに非常用ドアコックを使い線路上に降りたようです。
ドアコックを使って降車したことについてネット上では賛否があるようです。

JR東日本はドアコックに
「中のハンドルを手前に引けば、ドアは手で開けられます。あぶないですから、非常の場合以外は外に出ないでください。乗務員の指示があった場合にはそれに従ってください。」
と書いてあります。

乗務員は普段、駅以外で停車したときは車外に出ないように放送しますが、このような事態は生命に関わり非常事態ですからドアコックを使って車外に出てしまっても致し方ないと思います。
現場の鶴見~新子安間は京浜東北線のほか、東海道線と横須賀線、東海道貨物線が並走しています。ネット上でも指摘されますが、鉄道員からすると隣接線が通常通り運行している状態で車外に出ることは危険と言わざるをえません。
乗務員はドアコックが使われた時点で直ちに付近の列車に異常を知らせ停止させる処置を取りますが、停止を確実に確認するまで鉄道会社として安全とは言えません。今回は、鉄道会社が停止確認を取る前にお客さまが降車した恐れがあります。
生命の危機が迫っている事態ですから、車外に出るなと言っても無理がありますが、かといって安全が確保されない中、乗務員が積極的に降車を促すこともできないと思います。

みなさまにも線路に降りることは危険なことを知っていただければと思います。
事故などで駅以外のところで長時間停車することもあると思いますが、安易にドアコックを使って降りないようお願いいたします。

車内でこのような事件が発生した際のマニュアルは残念ながら整備されておりません。マニュアルがなくても乗務員としてどう対応するか、常に考えイメージトレーニングすることが重要だと思います。
・もし、この列車に私が乗務していたらどう対応したか?
・もし、ラッシュ時でもっと多くのお客さまがいたらどうするか?
乗務員として、社員として、お客さまを置いて真っ先に逃げることがあってはなりません。お客さまのために行動できるように日々修練いたします。

地震発生時の対応

2015年06月09日 22時37分16秒 | 鉄道員の愚痴

今日は地震が発生したときの鉄道会社の対応についてお知らせします。

鉄道会社では緊急地震速報を受信したり大きな揺れを観測すると直ちに走行中の列車を停止させます。地震による脱線などを防止するためには少しでも速度を落とすことが大事ですので、規制値を超えていなくともまずは列車を停止させます。
揺れが収まったら各社が設置した地震計の観測に基づき、通常の速度で運転するか、速度規制を行うか、運転を中止し設備等を点検するか、判断します。

会社により判断に使用するものが異なり、震度のほか、最大加速度(単位:ガル)、構造物の揺れの度合いを示すSI値(単位:カイン)の3種類があります。
震度が広く一般的に知られており分かりやすいのですが、震度が小さくても被害があったり、逆に大きいのにまったく被害がないことがあります。より地震による被害と関連の高い加速度やSI値により判断することで、地震時の安全性の向上と無害な地震での運転規制を減らすために採用されています。

では規制値はいったいどのくらいなのか、鉄道の一般的なものとしてご紹介します。
※具体的な規制値は会社や場所により異なります。

■震度
震度4 速度規制
震度5~6 運転中止

震度で判断している会社の多くが震度4で速度規制としております。
運転中止は会社により差がありますが、震度6では確実に運転中止です。

震度3なら列車の運行に大きな影響はありませんが、震度4以上は影響があると思ってください。

最大加速度やSI値で判断している会社の場合、記録した値を一般的に知る手段はないですし、必ずしも震度と一致しないことも多いのですが、“震度4以上は影響あり”は大まかな目安にしてみてください。

最大加速度やSI値の場合についてもご紹介します。

■最大加速度(ガル)
40ガル以上80ガル未満 速度規制
80ガル以上      運転中止

1949年制定、気象庁旧震度階の参考表によると
震度3は 8~ 25ガル
震度4は 25~ 80ガル
震度5は 80~250ガル
震度6は250~400ガル
だそうです。

震度の場合の“震度4で速度規制、震度5で運転中止”と一致していますね。

■SI値(カイン)
6カイン以上12カイン未満 速度規制
12カイン以上       運転中止

震度4は 4~10カイン
震度5は11~40カイン
がだそうです。

こちらも“震度4で速度規制、震度5で運転中止”が当てはまります。

震度、最大加速度、SI値はそれぞれまったく別なものですから対応する数値を厳密に出せませんので、これも目安としてください。


このように鉄道会社は地震による規制を設定しています。鉄道会社の地震計によりよりますので、気象庁の発表する震度とかならずも一致しないことがあります。加速度やSI値による場合はよりその傾向が強くなります。
A社は動いているのにB社が運転を見合わせて点検を行っていると「なんでB社は動かないのか」という声があがりますが、このような事情があります。
(実際に5月30日は、JRは一部の路線で運転中止・徒歩点検を行いました。)

大きな地震が発生したら『震度4で速度規制、震度5で運転中止』を少し頭の片隅に置きつつ、各社の最新情報をご確認ください。
運転規制が入るとご迷惑をお掛けしますが、どの会社も安全のために速度規制や徒歩で設備・施設などに異常がないか確認しますのでご確認いただければ幸いです。


5.30地震

2015年06月06日 15時38分50秒 | 鉄道員の愚痴
みなさま、こんにちは。
気づいたらカレンダーが6月になっておりました。少し間が空いてしまい申し訳ありません。

5月30日(土)の夜、小笠原諸島を震源とする地震がありましたが、大丈夫だったでしょうか
目立っ被害はなかったもののエレベーターの閉じ込めに関する報道が目についた印象です。

東日本大震災は休みだった私ですが、今回は逃れられず乗務中でした。
指令から「地震発生、止まれ」という無線が流れてちょうど最寄り駅に止まりました。
その後、地震情報と運転規制を確認し、徐行で運転を再開しましたが終電までダイヤが乱れました。

列車に乗るのが乗務員の仕事です。
列車が遅れればその分就寝時刻が遅くなります。かといって翌日はその分起床時刻が遅くなる訳でもなく、定められた時刻に起きなくてはなりません。遅れた分だけ睡眠時間が短くなってしまいます。
この日はみんな睡眠時間を削って頑張りましたが、わたしは貧乏クジを引いてしまったようで半分以下になってしまいました。まったく寝られないよりはマシですが、まったく寝た気がしないまま起床しました。
睡眠不足は理由にならないのでミスは許されません。睡魔と闘いながら気合いと根性()で明けを乗り切りました。
この辛さは誰もが一度は経験あるかと思いますが、本当に良くないですよね。命を預かる仕事ですから普段通りにやらなきゃいけないのがまた大変です。

職場に戻った際に上司が「長時間お疲れさま。ありがとう。」と笑顔で迎えてくれたのは嬉しかったですね。
上司も乗務員のやりくりを休みなくやっていて疲れているはずなのに、それをまったく見せず迎えてくれました。異常時にこうした対応ができる人こそ真の上司なんだと感じました。

地震や火山活動など、不安になる自然現象が続きますが、我々は安全を最優先に行動してきます。
運転見合わせや遅れが発生する場合も安全のためということをご理解いただけますようお願いします。