年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

文月

2015-07-03 | 俳句&和歌

◇◇◇  文月

 旧暦の和風月名で7月は文月(ふみづき)である。7月7日の七夕行事に「織女:おりひめ」と「牽牛:ひこぼし」の2星に詩歌を献じたり、書物を夜気にさらす風習から文月になったという高尚な一説がある。
 しかし、暦と米作り文化の深い関係から稲の穂含月(ほふくみずき)とする説の方が納得がいく。若葉萌える頃の早苗が初夏の日射しに力強く成長し稲穂を茎の中に膨らます「含月(ふくみずき)」。草木は緑を濃くし枝を伸ばし緑陰を作る。
 根は地中深く張り巡らすが、一部は地表に沿って走るように伸びている。「走り根(はしりね)」と言われる。敷石の下に走り込んだ根は30年50年、石を持ち上げコンクリを砕き樹木の生命力の強力を見せつける。
 古刹の参道には走り根がとぐろを巻いて圧倒的な時空を醸している。

 えだ豆派そら豆派かと居酒屋は老人達の蘊蓄賑わう

 敷石を持ち上げ砕く走り根を金剛力士の眼光が射る

 

   朝顔は花を咲かせず出窓まで

  切り株に瞠目深く猫涼む

  走り根を踏みとどめるか仁王様

 

※古刹(こさつ)=古寺。漢語的表現
※蘊蓄(うんちく)=自分の持っている溜め込んだ知識