年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

かたつむり

2015-07-16 | 俳句&和歌

◇◇◇  かたつむり

 小糠雨の日比谷公園でアジサイの葉に揺れているカタツムリに出会った。
 久しぶり、何十年振りかのカタツムリにしばし足を止めて眺めた。太鼓のような殻の模様が鮮やかに濡れている。角だか目玉だかを精一杯に伸ばして辺りを窺うように身体を伸縮させて動いている。
 子どもの頃の思い出。横浜の片田舎ではデンデンムシとよんでコンクリートの塀に這わせて競争させて遊んだものである。♪♪でんでん虫々 かたつむり、お前のあたまは どこにある。角(つの)だせ槍(やり)だせ あたまだせ♪♪ 大声で歌いながら!
 軟体部を密着さて角を振りながら進む姿は滑稽というより憐憫を感じさせ余り気持ちの良いものではない。フランス人はデンデンムシを食料とすると聞いて衝撃を受けしげしげと眺めたものである。雌雄同体で雌雄の二つの生殖器を持ち自ら交尾を行うとある。
  フランス料理、エスカルゴを食べることもなく生涯を終えそうだ。
 蝸牛が、かたつむりの漢語的表現であることを知ったのはそれからずっと後の事である。

 

  かたつむり退化も進化も未だせず猿滑の幹にまったりと

  「シニアです」「確認するモノ御提示を」チケット嬢の眼鋭し

 

     七十路の蝸牛の歩み振り向かず

  かたつむり建屋背負いて茎渡る

 

※猿滑(さるすべり)=サルスベリ、百日紅のこと
※蝸牛(かぎゅう=)かたつむり、出ん出ん虫、マイマイツムロのこと