年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

家 苞

2012-11-17 | フォトエッセイ&短歌

 俳句を楽しんでいる友人がいる。まだ、始めて日が浅く、と言っても、私の短歌歴とそう変わらないから、5年位になるのだろうか。最近の彼の悩みは新聞の句欄に投稿しても採用されずに掲載される事が少なくなった事である。と言うのも、俳句を始めて直ぐに句欄に投稿したところ面白いように掲載されたのだ。
 「よし、本格的にやって見よう」と取り組んだところ、バッタリと採用が減ったという。彼の初期の作品で読売俳壇に掲載された作品『ちゃん付けで呼び合う友や夏料理』いきいきと雰囲気がイメージ出来る。
 彼の所属する会は定例の吟行を行うらしいが、そこでも余り芳しくはないようだ。で、彼は次回の吟行の下見をして、その一句を送って来た。吟行地としては定番の隅田川河岸の「佃島」である。
 『新海苔の佃煮買ふて家苞に』
 江戸佃煮の発祥の地で現在でも当時の伝統を守って佃煮の製造販売をしている「天安」で佃煮を買った時の一句であろう。家苞の読みも意味も解らないだろうと<*家苞(いえづと)=持ち帰り土産>と注を付けてくれたのが有難かった。何しろ初見は「万葉集 : 包みていもが家苞にせむ」とあるから、マア現代語としては使われる事もなく読みも意味も解らなくてもしょうがない。
 そこで、彼は家苞の語感を生かすために「買ふて」という旧仮名遣いを使っている。句作の苦労と面白さが分かる。が、しかし『ちゃん付け…』の方が、優れていると思うし、句欄の常連になるのには、ひと山は苦労して超える必要があると思う。私も茶々を入れて『新海苔の江戸を包みて家苞に』と返信して楽しませてもらった。本戦の吟行で沢山の票が入る秀句が出来る事を祈念している。

以前、私も訪れたことのある佃島の天安。愚作を並べます。

  下町の江戸風情残る佃煮屋 紺の暖簾の屋号も粋に

  佃煮屋江戸の香りを漂わせ紺の暖簾に天安を染める

  甘辛の秘伝の味の佃煮を誇らしげに女将は口にす

  賑わいし隅田の渡しの昔日を語ることなく碑が佇みて

  暮れなずみ屋形船にも灯が入り佃小橋に活気が急ぐ

  船溜まり舫だ綱の屋形船天ぷらの香を漂わせ待つ

  佃島下町風情の路地細く出桁の窓に風鈴が鳴る

 

 

 

 


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